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正規ヒロインアメリア・下

正規ヒロインアメリア・下です。 バトルと彼女に関するエピソードが続きます。


「さて次こそが本番、魔導公女エカテリーナ、貴女が私の本命よ!見せてもらおうかしらヴィクトルを射止めた腕前ーー!?」


『私、もう何も知らないまま捨てられるのは嫌なのよ!』

 

 その叫びは、まるで崩れ落ちる城壁のように、強がる彼女自身をも傷つけているようだった。

(それに、何かが引っかかる……)

(本当に、エカテリーナとヴィクトル様には何の関係もないの?)

 私が知っているヴィクトル様なら、もっと優しい人だったはず。

(なぜ、彼は急に私から離れたの? もし、その答えがエカテリーナにあるなら……?)


『私は……知りたい。ヴィクトル様の本心を。そして……彼の心を奪った存在を』

 

 そんな思いを胸に秘め勝者として、幼なじみとして、立ち塞がるアメリア内心はどうあれその様はシャーロットに勝利した後の勝利者然と言った佇まいを崩さない。


 そんな内心を知るよしもないソフィアは思う。


 アメリアの敵意を回避したいところだけれど、追い出されるのは勘弁なので前に出る。



「レイピア使いの魔導師、珍しいわね。

 まあ、どちらにしても貴女は私に敗れるのだけれど!」



 エカテリーナとして進み出たソフィアは、実践経験はほとんどないためとりあえずレイピアを構える。


「使ったことがない武器なのであれだったけど、けん制ぐらいにはなるだろう?」


「では、さっさと勝負つけさせていただきます。 肩透かしで終わらないことを願うわ

 簡単に勝ててしまってはヴィクトル様の気持ちが分からなくなるからね!」


 アメリアは再び、両手に炎を集中させるーーボルケーノだ。


 対するエカテリーナこと、ソフィアは困っていた。

 刻印の力はなるべく見せたくはないし、闇魔術もどう思われるか?


 だが、アメリアクラスの相手と一騎打ちを行うなら、出し惜しみできる状況ではないことは分かっては居る。


 そんなことを考えているうちに審判役のエレオノーレさんの「始めーー!」


 ーーと言う声が響き渡った。

 ここからは、うじうじしてられない。 確実に勝たなければ私も帰る場所がない!

 

 躊躇なくボルケーノを繰り出し焼き払う、勝負あったと嗤うアメリア、私自身範囲攻撃をどうやって防ごうか考えていたのだが、宝剣が反応した。


「燃え尽きなさい、ボルケーノーー!」


 アメリアの両手に炎が集中し、高熱の奔流が空間を焼き尽くそうとする。

 エカテリーナ(ソフィア)は、反射的に魔剣を構えた。

 レイピアを構えて一回転ーー


「……!(予想外の出来事に対する周囲の驚きなど)」


 すると、魔剣が脈動し、まるで意志を持つかのように竜巻を発生させる。

 ボルケーノの炎が乱流に巻き込まれ、方向を変えながら四散していった。


「なるほど、これは……風の魔剣か」

 国王(レオンハルト卿)が驚きの声を上げた。


 ソフィアはレイピアを構え直し、試しに一歩踏み込む。

 そのままレイピアを構えて刺突を繰り出す。


 風の刃が、発生して、槍を超えるリーチを発生させ刺突が、アメリアを襲う。

 あまりに長いリーチに、アメリアは完全回避することができずローブの一部が、風の刃で切り裂かれた。

 剣の軌跡が風を巻き込み、鋭い真空の刃が発生した。


「少しはやるようね……流石魔導公女。なら、これが防げるかしら?」

 切り裂かれた衣服を整える余裕を見せながら、アメリアの瞳が妖しく光り、今度は天井に張り巡らせていた氷の魔法を発動する。


「アイシクル・レイン!」



 ソフィアは、その瞬間左手に吸収した雷の雷撃を収束させーー同時に中級魔法まで昇華させる。


 天井に向かって中級雷魔法を飛ばす一撃・サンダーエッジを放つ。

 範囲攻撃と言うよりは一点集中型の、雷魔法だ形成された雷の刃が。

 真上に放たれ、高火力の熱で火柱が上がる。


 その瞬間、ウインド・レイピアを掲げ、天井に溜まったエネルギーにぶつける。


 瞬間的に天井で突風が発生して、周囲に鋭い雷撃と氷の雨を放った。


 同時にレイピアで、風の方向を制御して、アメリアにけしかける。


 アメリアは咄嗟に防壁中級魔法・ファイアーウォールを形成、氷のつぶてと炎の反射がファイアーウォールによって無効化される。


 一定の効果を発揮したことで消えるファイアーウォール、だがーー




 アメリアは、もう一度、ボルケーノを詠唱し始める。


 その瞬間を狙って、左手の刻印をに魔力を込める。 ボルケーノがかき消える。


 観客席からは歓声とざわめきが交じる。だが、ソフィアの耳にはアメリアの放つ炎の轟音しか届かなかった。


 アメリアは作り出したはずの火炎が、いきなり霧散したことに驚き同時にそれが、ソフィアの左腕に吸収されたのを見て驚嘆した。


「聞いてないわ!? なんて、無茶苦茶なのよーー!」

 魔法を失ったが、すぐに、ボルケーノを瞬間生成するアメリアーー!


 ボルケーノ! とアメリアが叫ぶと同時に、同じくボルケーノを放つソフィアだが、

 同時にレイピアで風を起こす風によって、分散した広範囲魔法ファイアストームだ。


 ちょっと、そんなの反則よ?

 ーーと、愚痴をこぼすアメリアに、容赦なく強力な火炎の竜巻が襲いかかる。


 それをスピードで回避しながら自分の放ったボルケーノを

 防御に使いうまく最低限のやけどに留めるアメリア。

しかし、ダメージを負ったことでアメリアの動きは大きく勢いを落とす。

「止めよーー!」


 素早く急接近して、ウインド・レイピアで攻撃。


 なんとか回避しようと動くアメリアだったが、接近戦になったことで中級魔法を生成する詠唱時間がなく防戦一方になる。 瞬間生成であろうと、レイピアのしと角前では意味をなさない。


 距離を取ろうと飛び退くアメリアに追撃の右手に再び溜まっていたサンダーエッジをを解放するーー!

 着地点を狙って生成される。 電撃の刃破決定だーー! 刻印の手数押し切っていって多く動けたのが明暗を分ける形になったようだ?


「そこまでーー、エレオノーレの声だけが響き渡る。

勝者エカテリーナ。


 アメリアは地面に膝をつき、握りしめた拳を震わせる。

 悔しさ、屈辱、納得できない感情が胸の内で渦を巻いていた。

 でも、それ以上に……。

「なんてこと……私、結局、ヴィクトル様の本心すら知らなかったのね」


 ぽつりとこぼした言葉には、未練と自嘲が混じっていた。

 私は、何も知らないまま、ただ「お嫁さんになりたかった」と駄々をこねていただけなの?


 そして、ふと顔を上げた。

 視線の先にいるのはエカテリーナーー本当に何も知らないのか、それとも彼女こそが「本命」なのか。だが……


 (私は……まだ負けたわけじゃない)

 涙を拭い、アメリアは立ち上がった。

「負けたからこそ、学べることがあるのね。……泣いてばかりもいられないわ」

 その瞳には、燃え盛る闘志が宿っていた。 同時に隠しきれない本心が漏れる。


「私だって……ただ、ヴィクトルの隣にいたかっただけなのに……」


 涙が床に落ちる音をかき消すように、ただ静寂の中にに立ち上がる。

「私は幼少期からヴィクトル様と共に過ごしてきた。彼が笑うたびに、私の心は救われてきたの……」

 そんな思いを胸にアメリアは涙をかみ殺して立ち上がる。


勝った……

 でも、それは私自身の力じゃなくて、刻印の力とこのレイピアの力。

 アメリアの涙が落ちる音を聞きながら、私はそっと左腕を握りしめる。

 この力がなかったら、私は負けていたんじゃないか?

いや、そもそも「私」じゃなくて「本物のエカテリーナ」なら、どう戦ったんだろう……?

「私は……何者なの?」

 戦いの余韻が残る中、ソフィアはふと、そんな疑問を抱いた。

 公女エカテリーナにすらなれない何者か、ソフィアそれだけが私のアイデンティティだといえた。

 そんなうち向きな思考をよそに回りが騒ぎ立てるように静寂を払った。


 歓声が響く。

 だが、その喧騒の中、ソフィアの胸には奇妙な重さがあった。

「これで、本当に……よかったの?」

 アメリアの涙が床を濡らしていく。

 その一滴一滴が、ソフィアの心に針を突き立てるようだった。

「私なんかが、勝ってよかったの? 私は……本物のエカテリーナじゃないのに……」

 ぐっと剣を握る。

 だが、何も言えなかった。

 シャーロットが裾を引っ張り、小さな声で囁く。

「お姉様……なんだか、私も胸が苦しいわ……」

 この場にいる誰もが、アメリアの敗北に何かを感じていた。

 ソフィアの強さに感化された者が多いだろうが、それだけではないだろう?



 それを見て、ソフィアは、胸が痛くなった。


 勝負が決まり、アメリアの涙が落ちる。戦闘後の感情の高ぶりを感じた瞬間ーー私の視界が歪んだ、これは魔眼? それとも刻印?


 まるで、自分の心に誰かの感情が流れ込んでくるような、不思議な感覚……」

 

 私だって、私だって、ヴィクトルが好きだっただけなのに、こんな……


 私は幼少期からヴィクトル様と共に過ごしてきた。彼が笑うたびに、私の心は救われてきたの! 私が彼の隣に立つべき人間なのよ!


 ーーと言い放ち涙ながらに泣き崩れるアメリアが視える。

 彼女がたどるはずだった一つの道のようにその残響がかき消える。

 


 勝利の実感は、アメリアの涙にかき消された。これでよかったのだろうか。胸の奥に生まれた重苦しい感情が、ソフィアを押しつぶそうとしていた。



 勝利はしたものの、私が偽りのエカテリーナである以上、彼女の涙に応える資格などないのではないか……



「お姉様、勝ったのはすごいけれど、なんだか私も胸が苦しいわ……

 やっぱりアメリアお姉様も悪い人じゃないもの」


 泣き崩れるアメリアをみて、シャルが私の裾を引っ張りながら内心をつぶやく。



 ただ、すがすがしく、だが、痛ましさを感じさせて立ちすくむアメリアを眺めていた。



 昼の決闘を終えて昼食を終える。相変わらず己の定位置を主張するようにシャーロットはついてきているが、別に気にすることでもないと思っているので放置している。



 今晩が勝負だ!

 流石に実の妹の前で兄を暗殺するわけには行かないため、計画決行時にはシャーロットを蒔かなければならない。 今まで私が、彼女を邪剣に扱っていないため、油断したところを狙えば可能だろう?


 シャーロットを撒いて、ヴィクトルを暗殺する。

 それが、今夜の計画。

 なのにーー

 戦いを終えたばかりの私は、まだ心のざわめきを抑えきれずにいた。

 アメリアの涙。

 シャーロットの「胸が苦しい」という言葉。

 こんな状態で、私は本当に任務を遂行できるの?

 ーーいや、やらなければならないんだ。 迷っていて推敲できるわけがない!

 深く息を吸い込み、考えを振り払うようにシャーロットを見やる。

 何も知らない彼女は、いつものように無邪気に笑っていた。

(……ごめんね、シャーロット)

(でも、私はあなたを巻き込むわけにはいかないのよ)



 と、婚約の儀ーー暗殺計画遂行時に思いを巡らせていると。



「まって、待ちなさい。 公女エカテリーナーー!」


 と、後ろから、アメリアが声を掛けてきた。

 その顔をみたシャーロット猫のように威嚇を開始するがそれを気にもとめず、アメリアは話を始める。


 その様子に先ほどまで大泣きしていた少女の影はない。


「まって、エカテリーナ! 貴女に一言謝っておこうと思って、いきなり決闘を申し込んで悪かったわ。

 私ったら、ヴィクトルのことで頭がいっぱいで、でも負けは負けよね?

でも諦める気はないからね、いつか必ず貴女を倒してヴィクトルの隣を取り戻す、それを今日ここに宣言するわーー!」



「あの涙を拭った時、私の中に新たな決意が芽生えた。

 負けたからこそ学べることがあるのだと。


 そう思ったら泣いてばかり居られないと思ったのよ。 いてもたってもいられないから私はここに居るのよ! 笑うなり何なりとすればいいわ、私は折れない乗り越えてみせるーー!」


 と清楚で落ち着いた顔に似合わず図太い不屈の意志を放つアメリア!


「それで、相談なんだけれど、貴女はどうやって、ヴィクトルの心を射止めたの?」


 いきなり謎の質問が来た。


 予想外の方向からの攻撃に、慌てふためくソフィア。

 そのあたり本物のエカテリーナには聞けていない。


 そもそも、ヴィクトル皇太子と、魔導公女エカテリーナはどういう関係だったのだろうか?


 ごまかすのも罪悪感があるため、あえて知っている範囲で正直に応えることにする。

 目の前のアメリアには嘘を教えることはそれなりの罪悪感がともなったからだ。



「私は、ヴィクトル様のことは知らないよ、あったこともないし?

 これは公爵家とルキア王国の取り決めで決まった婚姻ではないの?」


「そんな訳ある物ですか!? ヴィクトル様は……私と同じように過ごしてきたのに……」

 彼女の瞳には、焦燥と未練が混ざっている。

 唇を噛み締めながら、アメリアは続けた。

 同時にともるのはヴィクトルへの揺るぎない信頼……振られたというのにどうして信じられるのか?


「私、彼にとって特別じゃなかったの? どうして……?」

「もう何も知らないまま捨てられるのは嫌なのよ! 教えて頂戴本当のことを!?」

 その叫びは、まるで崩れ落ちる城壁のように、強がる彼女自身をも傷つけているようだった。

「ホントに分からないの、私ヴィクトル様徒はあったことないし、何故今ここに居るのかもわからないの?」

 なんとか、落ち着いて言葉を発してヒートアップするアメリアをなだめる。



「そんな訳ある物ですか?


 私も色々調べたんだけど、すでに二年も前にエカテリーナ公女はルキアの王妃候補として上がっていたのよ。 


 二年前程前ルキアの王妃候補にエカテリーナ公女の名前が浮上したのとほぼ同じ時期に、ヴィクトル様は私から距離を置き始めたのよ……何か関係があるとしか思えないわ!


 それまでは仲の良い兄姉のようだとか散々もてはやされてたもの? 私もその気になっていたのよーー!


 それが、急に私のことを避けるようになったわ。

 その後よ。 オジサマ、いえ、ルキア皇帝・レオンハルト様から、たびたび、エカテリーナの名前が出るようになったのはーー?



 確かな情報よ、ごまかさないで、教えてほしいの真実をーー!」


 と、必死にまくし立ててくるアメリアーーあまりの勢いに目そらすと、シャーロットが間に入った。


「憶測で話すのは止めてよ、ヴィクトルお兄様と、エカテリーナお姉様には一切の接点なんてないわ。

 こんな素敵なお姉様ができるなら、私の方が先に気づいているはずだもの!?」


 ーーと自信満々に告げるシャーロット。

 だんだん話がややこしい方向に流れていくのを感じる。



「嘘よ、家族全員で私を謀ろうというのね? 私、ヴィクトル様のことをずっと見ているから分かるのよ。


 あれは誰かに恋をしているわ。

 仮にエカテリーナ様じゃなくても、

 誰か意中の相手ができたのよ。それで私から離れていったのよーー!?」

 

 女性は色恋沙汰には目がないというがアメリアの気持ちはあまりに率直かつ情熱的で私の入る余地などないように思えるのだが……


「ごめんなさい、分からないわ、アメリア。

 私はヴィクトル様とは会ったこともないし?

 彼のこともよく知らない。 それは多分向こうも同じじゃないかな?」



「そんな曖昧な回答じゃ納得できないわ。

 私はすでにルキア王国の養子としての第一王女の地位が決まったわ。

 貴女の義姉になる王女アメリアよ、姉として命じます!

 真実を知るためには貴女と一緒に居ることが大事よ!

 しばらく私も仲間に入れなさい!」


「仲間として近くにいれば、ヴィクトル様の心の動きを知るチャンスが増えるかもしれないわ!


 近くで見れば、貴女が私の敵なのか味方なのか、分かるはずよ?

 そうでなければ、私のヴィクトル様への気持ちが納得しないのよ!」


 有無を言わせず迫力でそう告げるアメリア、恋は盲目というが、彼女の原動力はまさにそれだった。

 

「義姉になる……? そんな堂々と宣言されても、どう応えればいいのか分からない。

 けれど、その迫力に少し安心している自分がいるのも事実だった」

 なでか分からないけどアメリアは信頼を置けると感じている自分がいた。


 話が落ち着いたところで会話が終わるまで控えていた、エレオノーレが話しかけてくる。

「エカテリーナ様、そろそろ、婚姻の儀の準備をーー婚約衣装をお召し替え願います。


 すでに夕刻、晩餐の準備も進行しなくてはなりません。 失礼ながら、シャーロット様。

エカテリーナ様をお借りいたしますね」


 と微笑むエレオノーレは、言外に『お前は邪魔だからついてくるなと宣言しているようだった?』


「はーい、お姉様。またあとでね! 頬を少し膨らませながら、子犬のように跳ねるシャーロット。 その姿が可愛らしくて、つい苦笑いが漏れた」


 当然それに続くかと思われたアメリアだが、一向に立ち退かないばかりか、当然のように後ろについてくる。


「着替えるので、席を外してほしいのですけど、アメリア様?」


「いいえ、ヴィクトル様の研究と同時に、貴女の研究もしなければならないわ。

 ついていってよろしくって、シスター・エレオノーレ?」


 婚姻の儀に備えて、公女としての貴女の立ち居振る舞いを確認しておく必要があるわ

貴女がどんな人なのか、私自身で見極める必要があるのよ。


「着替えにまでついてくる必要あるの?」

「当然よ、ライバルのスタイルから、プライベートまでなんでも重要な情報よ!」

 ーーと断言したーー! 若干面倒になってきて困る。



 私ではなくエレオノーレに問いかけるアメリア、策士だった、これでは断れない。

「まあ、シャーロット様、じゃなければ……」


 流石に先日まで隣国の王女だったアメリアを無碍にはできないのか、アメリアの同行を許可するエレオノーレ。

 この人も複雑なんだなあと感じる一方ーー


 笑顔の奥に隠された彼女の計算高さを感じた。

 あの柔らかな声も、きっと場を収めるための道具なのだろう?

 ただの修道女ではない、彼女の内面には一度も見せたことのない深い謎がある気がした。



 貴賓室に入ると、ドレスが何着か飾られている。おそらく今宵の候補としていくつかバリエーションとして用意された物だろう?


「さて、エカテリーナ様、どれがお気に召しますか?」


 直球に聞いてくるエレオノーレに対して、ドレスの善し悪しの知識がない私は軽い混乱を覚える。


 逡巡している私の間に、アメリアが割って入る。


「そうね。今のドレスが黒いフォーマルなデザインだから地味すぎるわ。 仮にも今宵は婚姻の儀、もっと映える白いドレスが映えると思うわ、あれなんてどう?


 とアメリアが、指さした物を見る、確かにやや露出度が高めでかつ、上品な真っ白いホワイトカラーのドレスだった。

 背中がほぼ開いていることやレースがふんだんに使われているのが特徴である。


「これがよろしければ、試着なさいますか?」


 エレオノーレさんが悪意のない笑顔で、聞いてくるので普段のシャーロットとのやりとりを見ているせいか彼女の笑顔には、何故か威圧感を感じてしまい、こくりと頷く。


 それを見たアメリアは満足そうに、フフンと笑った。


 10着あるドレスの中でーーすぐには決められない優柔不断さを恥じながら着替え始める。 カーテンで仕切られている試着室を探す物の見当たらない。



「ここは貴賓室です。 三人しかおりませんので恥じる必要はありません。

 ここでお着替えくださいと、笑顔で言われてしまった」


 貴賓室に試着室がないというのは想定外だったけれど、エレオノーレの堂々とした態度に圧倒され抗議の言葉は喉に詰まった。


「ここでお着替えください」と、笑顔で言われた瞬間、私は言葉を失った。

 確かに貴賓室であり、プライバシーが確保されているのは分かる。

 けれど、この広い部屋のど真ん中で着替えるのはさすがに落ち着かない」



 自分の意志で選びたい気持ちはあったけれど、目の前の二人の圧力に気圧されて、結局彼女たちの判断に従うしかなかった。



 よくよく考えれば私自身ドレスの着付けは苦手だった、ので手伝ってもらう形になりありがたいぐらいだった。



 その過程で、服を脱いだ私の身体を見ながら、年上でスタイルもいいはずのアメリアが、ああでもないこうでもないとか思案している。


 あまりに考察を重ねながらチラチラと見てくるので、恥ずかしさの方が増してしまい。

 自然と頬が染まる。 ほぼ全てを彼女達二人に任せる形になった。

 その間は羞恥心をひたすら感じながら耐えるーーまさに針のむしろである。


「はい、仕上がりましたよ、エカテリーナ様、それでは確認のために、そこで一回転してくださいまし」


 ーーと言うわけでくるりと回る。 翻るスカートとふんだんに仕上げられたレースが揺れる。


 それを見ながら熱心に思案していた、アメリアが声を上げた。



「貴女の身体にある両腕と背中の刻印ーー普通の観点からに見てると気づかなかったけど。

 瞳に魔力を込めると視ることができるわ」



「一体それは何なの左腕の刻印には、私の魔力が宿っているのも分かるわ。

 ボルケーノを吸収したのもそれが理由ね? サスが天才魔法使いアメリアである、他とは着眼点が違う!」


「ただの飾りかと思ったけれど、よく見れば魔力の痕跡がはっきりと浮かび上がっている。この刻印普通の魔法陣じゃないわね?」



 ーーかなりと鋭い指摘をしてくるアメリアーーだが、私はこの刻印に関しての知識はほぼない。 自分の事ながら、なんと説明していいものやら?


 言いよどんでいると「まあまあ、アメリアさま、刻印のことはレオンハルト様も承知です。


 エカテリーナ様の家系、秘伝に関わる重大な魔道刻印らしいのでそのぐらいで……」


 窘めるように言ったエレオノーレにアメリアは追求を止める。


 まあ、レオンオジサマがそう言うのなら仕方がないわね? とまだ、思案顔ではあるが、好奇心初音に働いているのがうかがえてなんか怖い……



「さて、次はお化粧をしますね。 ここからは私の判断で行わせていただきます。

 ヴィクトル陛下がどういう好みなのかも、承知しております故ーー


 それは是非教えて欲しい情報ねとアメリアがこぼすが?

 残念ながら極秘事項ですと、にっこり笑って情報漏洩を阻止するエレオノーレだった。

流石である、好みぐらい答えてもいいのではと思わなくもないソフィアだった。



 そうして化粧を追え、落ち着いた顔立ちだった私の顔はやや派手め艶やかめに調整され、それが嫌みにならない工夫が随所に行われているように感じた。

 もちろん化粧の良い悪いに関する知識が全くないので、個人的な感想といえるレベルだが?

「清楚感が抑えられ華やかさが加わったバランスのいいわね、顔立ちに見えるように調整されているわね。 似合っているわよ。 まあ、まだヴィクトルの好みからは遠いと思うけどね? と謎に張り合うアメリア」


「いかがですか? ルキアの伝統的な化粧方法を、近代的に昇華した者です。 見る人が見れば一目で分かるまるで芸術品のようなーー」


 長い講釈などされてもまるでわからないので、適当に合図地を打つとすぐにエレオノーレは、解説を辞めた。 私がまるで興味がないのを察したのだろう?


 私の性格上、貴族の間では控えめなのは分かっては居たけど、はっきりと結論が出てしまうと多少ショックだった。 おしゃれや流行には疎いのである。



「大丈夫よエカテリーナ、貴女の清楚な顔立ちは十分魅力的だわ。

 確かに多少華やかさには、欠けるかもしれないけどそれも一つの魅力ね。

 年齢も若いしまだまだこれからよ 十分まだ守備範囲よ?」


ーーとフォローしてくるアメリアは姿見に移った私の顔を見つめながら、

急にガバッと顔をつかみ、至近距離から顔をーー嫌、瞳のを自分の瞳にあわせるようにして至近距離からを除き込んでくる。


「近いです。 アメリアお姉様……」


 恥ずかしくて目をそらそうとするが、先回りしたように移動される。

 何がそんなに興味を引いたというのだろうか?


「貴女の瞳、眼球に紋章のような物があるわ。

 写鈴眼ーーいえ違うわね?

 見たこともない瞳、紋章? 紋章眼と言うべきかしらね?……なんだか貴女の身体の刻印といい、謎が多いわね」



 瞳の刻印? 指摘されるまで自分でも気づいていなかった。

 確かに魔力を込めて瞳を凝視するーーと眼球に不思議な文様が描かれている。


 そこでレオンハルト国王が私の目を見つめていたのを思い出す。

 なるほど、これが私がヴィクトル殿下の婚約者となった理由かも? と推測がたった。


 そこまで考えた時点で、この婚姻が単純な政略結婚ではなさそうだなと思ったが、それを口には出さない。



「さて、準備ができましたね? それでは、エカテリーナ様に来賓として登場していただくため。


 アメリア様もここまででお下がりください。


さて、まだストックはなんとかなっているので、他の小説も3つ平行してます。 どうかよろしくお願いします。

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