なんでこんなイカれたギルドに入ってしまったのだろうか
「銃弾ルーレットだぁ! お前ら! 覚悟は出来てるな!」
「うおおおお」
「うぃー! ひっく!」
「やれやれ!」
周囲にヤジが飛び交う中、顔の濃い男がテーブルに自身の銃を置くと手を捻り回転させる。
「殺せー!」
「しねー!」
周囲はその銃の動向を見守る。銃の回転は段々と減速する。
「「「おぉおおおう」」」
その銃の回転が完全に止まった。銃は回転させた張本人に銃口を向ける。
「ん・・・決まりだな」
その瞬間、タバコを咥えた男が群衆から飛び出して銃を手に持つ。
『バンッ』
銃を回転させた男はタバコを咥えた男に殺された。
「「「「うおおおおおおおお」」」」
周囲は歓声に包まれる。
「運が悪かったな! レルレック! あっはっはっは!」
タバコを咥えた男は銃を置いていたテーブルの上に立つと、その男が先ほど撃った男、レルレックを嘲笑う。
「死ねぇっ」
違うところでは肥満気味の男が馬乗りになって殴っている。
「オラっ!」
「オラっ!」
「俺の晩飯の恨みだ! 死ね!」
肥満気味の男に馬乗りにされている男は意識が朦朧としている。
「こーろーせ! こーろーせ!」
周囲もその喧嘩に野次を飛ばす。相変わらずここの治安は終わってる。
「オラっ! 死ね・・ぶふっ!」
その瞬間、肥満気味の男は吹き飛んだ。馬乗りにされていた男は千鳥足で立ち上がると指を鳴らす。
「まったく・・・すっかり酔いがさせちまったじゃねぇか・・・酒をくれよ・・・」
「ん? 『ブチッ』」
男は野次を入れていた連中の持っていた酒瓶にロックオンするとそれを奪い取る為に殴り倒し、酒を手に入れる。
「酒だ・・・酒♪ 酒♪ ・・・ああ、そう言えばこのデブとぶつかったせいで酒が一本無駄になっちまったんだった・・・」
周辺の床には食材と酒瓶のカケラが散らばっている。
「あー! 考えたらイライラしてきたぁー!」
酒に酔った男は肥満気味の男をギラリと睨みつける。
「調子に取りやがって酒カス!」
『パリンッ!』
その瞬間、酒に酔った男は酒瓶を肥満気味の男に叩きつけた。
「ああ・・・お前のせいでまた酒が無駄になっちまった! もったいねーなー!」
自分で叩き割ったようなものだが、酔っている男にそのようなこと言っても無駄だ。
「ぐわぁ! 痛てぇ!」
「おいおい! 俺の酒を無駄にしておいて、苦しまずに逝けると思ってるのか? 死ねぇ!」
地面に伏せた肥満気味の男の顔を蹴るとさらに蹴りを加える。
「ぐほぉっ!」
「おらっ! 死ね!」
この光景。地獄よりも地獄な光景が広がっていた。そんな地獄の光景を尻目に・・・ある一人のおっさんは部屋の角でチビチビと酒を飲んでいた。おれだ。
「酒が尽きた・・・」
おれは木のジョッキを口を真下に向け・・・最後の一滴を楽しもうとする。だが・・・
『ドカッァ』
男がおれの方に飛んできて、おれもそれに巻き込まれる。
「くそっ! テメェ!」
おれに折り重なった男は謝りもせずに喧嘩相手へと向かっていく。おれは手に持った木のジョッキを再び傾けるがそこに雫は存在しない。
「・・・最後の一滴は楽しめなかったか・・・」
木のジョッキに興味をなくしたおれはジョッキを投げると、立ち上がる。
「やべ・・・あ、あのお方を怒らせちまった・・・
周囲はざわつき始める。
「そのクソみたいな顔面をもっとクソにしてやるよ」
おれに衝突してきた男は騒動に気づいていなそうだった。おれはその男に近づいていく。
「あっ? お前なんてこの・・・」
おれは衝突してきた男の肩を掴んだ。
「何だ? ・・・なっ!」
その男は顔を青ざめる。
「あっ! あいつ、終わったな」
「今夜の肴にちょうどいい」
周囲に人も集まってきた。
「どうして・・・」
衝突してきた男はわけがわからなそうだった。
「どうしても何も・・・お前がおれがちびちび飲んでいたのにぶつかってきたんだろ」
その言葉を聞いた瞬間男は絶望した表情をする。
「申し訳ない! 命、命だけは!」
男は必死に命乞いする。
「見苦しいー」
「さっきまでの威勢はどこに行ったのやら」
周囲もその変貌ぶりには呆れていた。おれはその様子を見て、満足すると横を通り過ぎる。
(はぁ・・・今日は静かに飲むには向いてないな)
そもそも静かに飲める日なんて訪れるのだろうか。おれはそう考えながらその場を後にした。
・・・
「・・・」
おれに衝突してきた男はあれからおれが去った後も土下座を続けていた。
「あいつ。命拾いしたな」
「奇跡だ」
周囲の人間も彼が生きていることにどこか複雑な気持ちだった。
「どうだ? 今回の賭けは死なないだ!」
どうやら周囲の人は賭けをしていたらしく。その結果に一喜一憂している。
「なんでだ! 俺は死ぬに全財産賭けたんだぞ!」
「ふふん! 儲けさせてもらったよ?」
周囲の反応は様々だ。そんな最中、土下座をしている男の方にも変化が訪れる。
「・・・俺は・・・ゆるされ・・・タハっ!」
土下座から顔を上げた瞬間、男の顔面は蹴り飛ばされた。
「喧嘩を勝手に終わらせるなよ」
元々喧嘩をしていた相手にとっては相手が急に土下座し始めても怒りがおさまるはずもなく・・・喧嘩は終わらない。
「死ね!」
その瞬間、テーブルに置いてあったナイフを手に取ると男に突き刺す。
「おい・・・これって・・・」
「死んだ・・・男が死んだぞ!」
周囲はその光景にさらに一喜一憂する。
「おい! 男は死んだ! なら賭けは勝ちだろ!」
「賭けの期間外だよ。諦めな!」
「何だと? 俺の金を返せ!」
そして再び争いは勃発する。
・・・
おれはワイワイ騒いでいる連中を尻目に2階にある自室に腰掛ける。
「はぁ・・・」
おれは今日の出来事を振り返りため息を吐いていた。
「なんでこうも殺したがるのかなぁ」
おれは頭を押さえる。
「はぁ、酒が欲しい」
この現実から逃れるためにも身体は酒を求めていた。
「恐れ知らずの無法ギルド・・・か」
相変わらず酷い悪評だ。間違ってはないけど・・・。この悪評は国と国の間にある空白地帯、その中にある無法都市のとあるギルドを表した言葉だ。
「仲間殺しはいざ知らず、悪のカリスマが集う最強ギルド」
メンバーはものすごいスピードで入れ替わる。最恐の無法地帯ギルド。その名は
『アナーキー・イーヴィル・クラウン』
おれはそのメンバーだった。それも少し、特殊な立ち位置だ。
「はぁ、どうしてこんなことに・・・」
おれもこのギルドに加入してから随分な年月が経過した。このギルドは先ほども見た通り、ギルド内の殺し合いが絶えない。気に入らなければ殺される。舐められれば殺される。ここはそんな場所だった。
(何故おれが生きているのかだって?)
正直言って、運でしかなかった。最初は悪い兄ちゃんに絡まれるように強制的に加入され、のらりくらりと争いごとをかわして過ごしてきた。ただ、ギルドの過ごし方を見れば察せられるだろうが、悪のカリスマは短命が多い。いつのまにかおれの加入した当時のメンバーはすっかりと一層されていて、おれが加入歴最年長になっていた。
「ああ、辞めたい・・・」
同時期に加入したメンバーも死に絶えた。おれもいつ死ぬかわからない。元々こんなギルドにいたくなかったおれはギルドから一刻も早く抜け出したかった。しかし、おれにはギルドをやめられない理由があった。
(ギルドの鉄の掟、鉛玉の宿怨)
ギルドを辞めるときに鉛玉をぶち込んで別れを祝福してやろうという伝統だ。
(つまり、ギルドを辞めると同時に天に召されるってこと)
なんと一度入ったら辞められないのだ。
「はぁ、憂鬱だ・・・」
おれはあと何年いや、何週間、いやいや何日生きられるのだろうか。
「ギルドからどうにかしてバレずに抜け出せられないかな・・・」
これはおれがイカれたギルドから脱獄する物語だ。




