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1 全てはここからはじまる

「あ、あれ……ここは」


 俺は気づけば知らない場所にいた。

 地面は雲。

 天からは柔らかな光が差している。

 まるで空の世界にでもいるみたいだ。


「こんなところ来た覚えないんだけども……」


「わっしょおおおおおおい!!」


「どわぁ!」


 真横でいきなり誰かが叫んできた。

 思わず飛び上がってしまう。

 見れ見れば、そこにはしわくちゃの爺さんがいた。


「な、なんなんですか!?」


「ふむ、普通の登場じゃつまらんと思うての、粋な計らいというやつじゃ。そんなことよりちょいと話をしよう、そこに直ると良い」


 気づけばすぐそばに簡素なちゃぶ台が出現していた。

 座布団やら湯呑やらもある。

 なんだかよく分からなかったが、言われるがままに席についた。


「さて、それではまずはお主も何が何やらわからんじゃろうからな。質問を受け付けようではないか。儂は寛容じゃからな、なんでも答えてやる。遠慮なくぶつけてくるがよい」


 お爺さんはなんとも偉そうだった。

 顔や皮膚はしわくちゃだが、着ている服装はそれなりに立派な感じだ。神聖な感じがする。


「分かりました。ではもうさっそく尋ねちゃいますが、ここはどこなんですか?」


 質問していいと言われ、瞬時に思いついた質問トップ2のうち第一位を投げかけた。因みに第二位はあなたは誰なんですかだ。


「うむ、それはそうじゃろうな。よし答えてやろう。ここは天界と呼ばれる場所じゃ。お主は地球で死亡したため、この場にこざるを得なくなった」


「え、僕が死んだ……? 何を間の抜けたことを。僕はこうして生きているではありませんか」


 脳で考え、喋れているのに死んでいるなんて、明らかに矛盾している。誰が考えたって分かることだ。


「今意思疎通ができておるのは儂がお主の魂を元に生前の肉体を擬似的に再現しておるからじゃ。つまるところ儂は神で、絶対的存在なのじゃ。お主が何を言おうと儂の言うことが全てで絶対なのじゃ」


「凄いこと言い出したよこの人……」


「まぁ別に信じんでもいいが、いつまで経っても話は進まんじゃろうな」


「ずるい言い方だなぁ。分かりました、じゃあ証拠を見せてください。それを目にすれば信じることにします」


「そう言われてものう。お主ごとき人間の言葉に乗せられるのも癪ではあるが、まぁそれならそれでちょうどよいかもしれん」


 お爺さんは湯呑を口にしながら、ふぅ、と一息付いていた。

 次の瞬間、いつのまにやら俺達の周囲にど迫力の紫色の稲妻が駆け巡った。


「ぐわあ!?」


「焦るでない、ただの映像じゃ」


 言われて見れば、ちゃぶ台や座布団は消えていない。

 俺とお爺さんの位置関係も維持されていた。

 風や匂いも感じないので、これは360度全体に迫力ある映像が流れているだけなのだ。


「いちいち驚かせるのが好きな人だなぁ……」


「ここは地球ではないとある世界の三日前の様子じゃ。暗黒界と呼ばれる魔族の総本山があるのじゃが、そこの様子じゃな」


 流れている映像は確かに暗黒に満ちていた。

 雷もそうだが、乾いた砂嵐が巻き起こっていたり、よく分からない骨なんかも無数に転がっている。


「魔族ってファンタジーの世界なんですか?」


「そうじゃの」


「それにしては姿が見えませんよ?」


「まぁ見ておれ」


 しばらく見ていると、画面がとある地点にズームし始める。

 そこにいたのは、四人組の武装した人間たちだった。


「え? こんなところに人間?」


「儂が転生させた地球人じゃ」


 そう言われ見れみれば、確かに戦闘をゆく銀色のカッコいい鎧に身を包んだ人物は日本人ぽい雰囲気が出ている気がした。二十代の男に見える。


 でもそれが分かったところで、やはり何故こんな場所に人間がいるのかというところが分からないままだ。


 しかし、直後、どこからか一瞬で何かが突っ込んできて、人間たちのところで大爆発が起きた。

 紫色の光の円柱が立ち上がり、それが消えた頃には、バカでかいクレーターが残るだけだった。


「え?」


「ま、瞬殺じゃな。映っておった者の一人を儂がこの世界に送り込んだ。魔王討伐の名目でな。確か半年くらい前じゃったかの。まぁともかく転生した男は順調に力を付け、仲間を得て、意気揚々と魔王討伐に挑んだ。そして死んだ。魔王の姿を見ることもなくな」


 話が少しずつ見えてきた。

 今の映像はその瞬殺されたという瞬間が映し出されたものだったのだ。


「ということじゃ。もう儂が神かどうかなどというチンケな疑念で立ち止まっている場合ではないということに気付いたか?」


「あ、えーと、質問の続きなのですが、なぜこの映像をわざわざ僕に見せたんでしょう?」


「お主にこの魔王を討伐してもらおうと思うての」


「できるわけあるか!!」


 全力でツッコんだ。

 よく分からないが、反射的なものだった。


「瞬殺だったけど!? 物凄い瞬殺だったよ!? 俺もこうなるってことでしょ!?」


「早とちりするでない。こいつとお主では違う。こいつはやり方を間違えたのじゃ。素質はぴかいちだった。しかし性格がゴミだったのじゃ。そこを修正し抜選したのがお主じゃ」


 どういうことなのかまるで分からなかった。


「喜ぶと良い。お主は儂の計画する……『魔王討伐しちゃおう計画』の勇者、第八号機に選ばれた」

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