夏はたのしい季節でした
むかしむかし
夏はみんなが楽しみにする季節でした
夏が近づけばみんながワクワクして
出会いを求めて海へ山へ
車に乗ったりバスに乗ったりして
シティーポップを聴きながら自然のオシャレな景色の中へ
まるで自分がドラマの主人公になった気持ちで
笑顔で元気よくカッコをつけて繰り出して行きました
熱中症なんて気にする人はいませんでした
日焼けは大問題でしたが
それは彼氏に日焼け止めを塗ってもらえるチャンスでもあり
彼氏も彼女の素肌に触れることができるチャンスでした
昔は幽霊もよく出たので
とにかく男女の触れ合いのチャンスの季節でした
海水浴も楽しめました
なんとあの汚染されきった海の中に入ることができていたのです
海辺には海の家という休憩所が立ち並び
かき氷ややきそばを食べることもできました
サーフボードをクルマの天井に載せるなんてこともできました
規制されて自動運転の邪魔になるものは現在は載せることができませんが
むかしは許されていたのです
気温も上がってせいぜい37℃程度でした
人の体温も活気で上がっていたので暑さはそれほど感じませんでした
そのくせエアコンの温度は気にせずガンガン効かせていました
若い人のほうが老人よりも多かったので
とにかくみんなが新しいものを求めていました
新しい未来の夢にみんながワクワクして
今みたいにいつでもどこでも指先一本でドラゴンを呼び出すことなんてできませんでしたから
みんな真夏の蜃気楼のむこうに夢をみて
人類が絶滅する1999年までを楽しく生きようと
クルマを海辺に走らせて
砂浜でトランペットを鳴らしたりしながら
楽しい夏の満喫を
妄想の中に楽しんでいました