第十五・五話 女性神官の疑問
「はい。」
返事をして女性神官が受付をしている場所まで歩いて行く。神官までは、10mほどの距離が空いている。
「それじゃあ、ここに自分の名前を書いてね。」
女性神官は、一枚の紙とペンをアミルの前に差し出す。
「分かりました。」
A4ほどの大きさの紙には、上部に名前を書く欄があり、その下には何も書く欄がない。100人ほどが参加すると言われている、神定式で全員が同じ物を書いていると思うと、とても、紙の無駄遣いに思える。
「書きました。」
「はい。お名前は・・・アミル・ヘイズ様で間違いありませんか?」
「間違いないです。」
名前の誤字がないか確認を済ますと、女性神官は、こちらに向けて、もう一度紙を差し出した。
「それでは、この辺りにステータスを書いて欲しいんだけど、自分で記入する方法と血判を押して、紙に写すって方法があるのだけど、どっちでする?」
女性神官は、紙の下部分を指でなぞりながら、優しく説明してくれた。しかし、個人情報であるステータスを赤の他人に教えるのは、少し抵抗があった。
「自分で記入します。」
血判でステータスを写すのは、いかにもファンタジーっぽくてそそられたが、痛いのも嫌だったので自分で記入することにした。
「分かりました。それじゃあ、スキル〈ステータス〉で自分のステータス表示してもらえるかな?」
「表示する必要ってあるんですか?」
自分で記入するのに、わざわざこの女性神官にも見えるようにする意味が分からなかった。
「あ~、ゴメンね。数年前にね、自分のステータス以上の数値を記入して事件に巻き込まれた子がいるんだ。だから、自分で書くって言った子には、ステータスを表示してもらって、こっちでも確認するようにしてるの。」
「そうなんですね!分かりました。」
納得のいく説明ではあった。だが、尚更アミルは、自分のステータスを表示するのは危険だと感じた。
だから・・・
(スキル〈偽装〉。念のため、いじっとくか。)
アミルのステータスは現在、《家系スキル》探索 《Lv》23《HP》142《MP》112《攻撃力》145《防御力》90《知力》80《抵抗力》50《素早さ》110 と、このような数値である。
これは、同年代の子と比べると極めて高い数値である。貴族の子供であれば、この数値に納得する者もいるが、アミルは平民だ。もし、この数値が良くないことを企んでいる者に見つかった場合、何かに利用されるのは、目に見えている。
故に、アミルは〈偽装〉を使うことにした。
(レベルは、歳とレベルが比例するくらいだから・・・10にしよう。HPは、65。MPは、50。攻撃力は、三桁も要らないな、60かな。防御力は、45。知力は、45。抵抗力30。素早さは、55。どうよ!この平均値。完璧でしょ!!後は、スキルをいくつか消して・・・よし、開示っと。)
アミルと女性神官の間にアミルのステータスが表示されている薄い板のような画面が表示される。アミルは、それを間違わない様に紙に書き写した。
《種族》人間 《個体名》アミル・ヘイズ 《神定武器》不明 《家系スキル》探索 《Lv》10《HP》65《MP》50《攻撃力》60《防御力》45《知力》45《抵抗力》30《素早さ》55《スキル》探索、能力特化、感覚特化、解析、マーキング、ストレージ、ステータス、慧眼
「書き終わりました。」
「はい!それでは、その紙を持って中に入って下さいね。この、廊下を真っ直ぐ行ったら、右の方に私と同じ服を着た人がいるから、その人たちに今の用紙を見せてね。」
さっきの地獄のような時間に比べると、女性神官との受付は、天国のような時間だった。
「分かりました。ありがとうございます!」
女性神官に軽く会釈をする。
女性神官は、笑顔アミルを見送る。
(あの子、ステータスの数値は、全部平均値だったけど、スキルの取得量が異常だったわね。特に〈慧眼〉なんて、私たち神官が取得を目指してるスキルの一つなのに、一体どうやって。・・・まぁ、いっか。)
「次の方どうぞ~。」




