第十二話 スキルの副作用
「よろしくお願いします。」
エレメーラの下に着き、挨拶をする。
「うん~。よろしくね~~。」
ユルい口調でアミルに返事をする。
この距離になって、分かることがあった。それは、エレメーラから放たれる異常なオーラというか覇気のようなものだ。レイデルトがいつも以上に真剣になっていたのも納得がいく。
「じゃあ、始めようか~。」
「はい!」
アミルは、エレメーラから少し距離をとり、居合の構えをとる。
「本気でやらないと、死んじゃうかもよ。」
レイデルトの時と同様に一瞬で距離を詰めてくる。木剣は、大きく振り下ろされる。
〈能力特化〉防御-40、素早さ+40
アミルは、距離をとり間一髪避けた・・・つもりだったが、距離をとった先で足に痛みが走る。
「いっ!!!」
アミルの足甲には、罅が入っていた。しかし、居合の構えだけは崩していない。
「ふ~ん。」
再びエレメーラは、アミルに向けて距離を詰める。またも一瞬、距離を詰めている瞬間は、全く見えない。
(見えないけど、また同じように直線上に来るなら)
「極東剣術・火閃・火廻!」
鉄剣に火が纏わり付いていく。アミルが腰から鉄剣を抜き大きく横に振ると、鉄剣に纏っていた火が放たれる。放たれた火は、円盤状に形を変え回転しながら、アミルから直線上に飛んでいく。
しかし、円盤状の火はアミルから数メートル離れた所で、真っ二つに両断された。
「へ~、〈青龍〉なんて使っちゃって・・ませてるね~~」
割れた〈火廻〉が火の粉を撒きながら消えていく。その間からエレメーラが姿を現す。エレメーラが顔を上げるとにやけながら、〈青龍〉という名前を出した。
「僕が使ったのは、〈極東剣術〉ですよ。」
自分の使ったスキルを〈青龍〉と言うエレメーラに自分が使ったスキルの名前を伝える。
「聞いてないの?〈帝国剣術・青龍〉それの別名が〈極東剣術〉なんだよ~。一つ賢くなったね~。」
「それは、知りませんでした。教えてくれてありがとうございます。」
再び居合の構えをとりながら、エレメーラに礼を言うと、いえいえといった様子で笑う。
「次は、止められない様にしないとね。」
〈疾風〉〈加速〉
「行くよ。」
「え?」
2つのスキルを発動させて、エレメーラはアミルに向けて走り出す。しかし、先ほどの比にならないほど速い。
反応が遅れながらもアミルは、なんとか防御する。一様、鉄剣で防御はしたがアミルは、レイデルト以上に吹き飛ばされ宙を舞う。
(こっちは、一様子供だぞ!あの人容赦無さ過ぎだろ!・・・・・このまま落ちれば死ぬな。)
〈能力特化〉攻撃-125、素早さ-143、防御+268。合計防御力308。
「これなら、大丈夫だろ。・・・いって!」
アミルは、そのまま地面に打ち付けられた。しかし、特に大きなケガや骨折などもしていない。〈能力特化〉で攻撃と素早さのステータスを全て防御に振ったため、軽い擦り傷で済んだ。
〈能力特化〉リセット
「ほら、次だよ!」
アミルが態勢を立て直している途中にエレメーラは、次の攻撃を仕掛けてくる。
「くっぅぅ!」
アミルは、何とか攻撃を受け止めるが今度の攻撃は、一撃の威力こそ弱いが休む暇もないほどの連撃だ。
「あはっ!!」
(さすが、ワイアットさんの子!あぁぁ!こんな、小さい子がこんなに必死になって、私の剣を受け止めてくれる。可愛い!それにさっきのスキルの使い方も理解している。はぁぁぁ、好きになっちゃいそう・・・)
連撃をさらに激しくしながら、必死なアミルを追い詰めていく。
「はっはっ・・・」
(受けるのに精一杯だな。しんどい・・・この人、どうしてこんな早く振れるんだ?それにどうして顔を抑えてるんだ?実は、〈火廻〉が当たっていた?)
エレメーラは、右手で木剣を振り左手で頬を抑えている。もちろん、〈火廻〉が当たっていたわけではなく、照れ隠しで抑えているだけだ。しかし、そんなことアミルは、知る由もない。
「あら?しんどい?」
(しんどいに決まってるだろ!こんな連撃!!)
エレメーラの問いかけに少し、イラつきながら頷く。
「じゃあ、特別に休ませてあげる。」
優しい笑顔が見えた直後、アミルはまたも宙を舞っていた。
「え?」
(いつ、飛ばされた?いやいや、それどころじゃない!)
〈能力特化〉攻撃-125、素早さ-103、防御+228。合計防御力308。
「ってー!」
さっき落下した時よりは、綺麗に受け身を取ったが、少なからずダメージを受ける。
着地をして、エレメーラの追撃に備えたが攻めてくるどころか木剣を地面に突き立てて、アミルに笑顔を向けている。
「ふふっ。」
静に笑いながら、アミルが態勢を整えるのを待っているように見える。
(どうやったら、この人に攻撃を当てれる?手を抜かれているかもしれないけど、攻撃には、ギリギリ対応できる。でも、あの距離を詰めてくる方法が全く分からん。あの人の距離の詰め方は、速すぎる!瞬間移動でもされてる感じだ。・・・ズリ~~。)
エレメーラの瞬間移動にも思える移動方法について考えながら、再び居合の構えをとる。
「考えは、まとまった?」
地面に突き立てた木剣を抜いて、アミルに優しい声色で声を掛ける。アミルが自分の移動方法について考えているのが分かっているようだ。
「いいえ、全くまとまっていないです。」
首を横に振って、力強く否定する。
「ふ~ん。じゃあ、もう一回だけチャンスあげる。よく見てて・・・」
エレメーラが木剣を両手で持ち、頭の上まで振り上げる。アミルもその様子を目を逸らさずにガン見する。すると・・・
「え?」
エレメーラが一息して足を一歩踏み出した瞬間、エレメーラはアミルの目の前にいた。咄嗟に一歩下がり、鉄剣を引き抜いてエレメーラの攻撃を受ける。
「うっ!!」
(よく見る。)
アミルが足底を引きずりながら、後方に数メートル飛ばされる。アミルは、態勢を立て直してエレメーラの方向を向く。数メートル先にいたエレメーラは、また一歩踏み出す。
「次。」
(よく見る!)
またも一瞬でアミルの目の前まで移動してくる。今回の攻撃は、右方向への横斬り。アミルは、ギリギリで守り、数メートル飛ばされる。
「つぎ。」
(よく見る!!)
一瞬で距離を詰められ、左方向への横斬り。ギリギリで守る。そして、数メートル飛ばされる。目を限界まで見開いて、次の攻撃に備える。
「ツギ。」
(よく見る!!!)
右方向への回転切り。瞬きすらもせずに次の攻撃に備える。
「tugi。」
(よく見る!!!!)
左方向への回転切り。
「TUGI。」
(よく見る!!!!!)
切り上げ。その瞬間アミルの目には、エレメーラの動きが今までよりもゆっくりに見えた。そのおかげでこれまでよりも余裕を持ってエレメーラの攻撃を守ることができた。しかし、力の差もあり上空に吹き飛ばされる。
「あ~なんか、懐かしい感覚だな。」
宙を舞いながら、久々の感覚に包まれる。体がざわついてフワつく感じ。今までに何度か感じたことのあるスキルが発現する時の感覚だ。
慣れたように〈能力特化〉で着地すると、頭の中にスキルの名前が流れ込む。
・
・
・
スキル発現〈慧眼〉
(あの移動方法はやっぱり、瞬間移動にしか思えない!そういった類の移動スキルだろう。仕組みや内容は、全く分かんないけど。今、発現したスキルを使えばもっと早く対応できるかもしれない。)
アミルは、静かに深呼吸をして居合の構えをとる。
「見えた?」
数メートル先でエレメーラが再び、問いかけてくる。
「正直、全く見えなかったです。何かのスキルを使っていること以外、分かりませんでした。」
「そっか・・・」
エレメーラの問いにアミルは、正直に答えたがエレメーラが期待していた答えとは違ったらしく、少し残念そうだった。
「でも、もう完璧に対応できますよ。」
新しいスキルを身に付けたアミルは、自身満々に居合の構えをとる。
「ふ~ん。じゃあ、試してみようか。」
一歩、エレメーラが足を踏み出そうとする。
(来る!)
〈慧眼〉
スキルを発動させて間もなく、切っ先をこちらに向けているエレメーラが目の前に現れる。
突きだ。
[ゾーン]と呼ばれる現象がある。集中力が極限まで極まり、感覚が研ぎ澄まされるという、人間の特殊な意識状態のことだ。この体験をしているのは、主にスポーツ選手らしいがその多くの人が「相手の動きがゆっくりに感じた。」と話している。
〈慧眼〉は、その現象を強制的に引き起こす。そのおかげで、通常よりエレメーラの動きがゆっくりに見える。
エレメーラの突きを居合の構えを維持したまま、右に回避する。
(あぁ、避けた。いい、凄くいい。あぁ、アミルくん。)
訓練の中で成長をするアミルに対してエレメーラは、にやけるのが我慢できなかった。
「極東剣術・火閃」
アミルの鉄剣に火が纏わりついていく。
「火断!!」
突きを放った態勢で、固まっているエレメーラの横腹に目掛けてアミルは、思いっきり鉄剣を振り抜く。
「うそ!?」
アミルの〈火断〉は、完璧に決まったように思えたが、突きの態勢にあったエレメーラの木剣は、アミルの鉄剣を防いでいた。
「!!」
渾身の攻撃を防がれ、急いで距離を取ろうとしたが、いつの間にかエレメーラに手を掴まれていた。
「くっ!」
エレメーラに掴まれた腕を振り払おうとしたが、細い腕からは想像できないほど力が強く、振り払うことができない。
「・・・好き。」
振り払おうと何度も腕を振っていると、突然エレメーラの手に力が加わり、引き寄せられた。そして、気づいた時には、エレメーラに抱きしめられ、耳元でそう囁かれた。
「え!?」
(今、告白された!?)
あまりに突然のことで、握っていた鉄剣を思わず、落としてしまう。
「聞こえなかった?君のことが好きになっちゃったの。」
聞き間違いではなかった。確かにエレメーラは、自分に対して「好き」と言ってきた。まぁ、子供に対しての好きだろう。Likeの方であってLoveの方ではないはずだ。
・
・
・
「あっ、ありがとうございます」
「ふふっ。じゃあ、成人したら結婚しようね。」
違った。Loveの方だった。もう、こちらを見つめてくる瞳が心なしかハート型にも見えてきてしまっている。
確かにエレメーラは、可愛い。片目は、髪で隠れていて見えないが、俺の居た元の世界だったら間違いなく超人気のアイドルまたは、女優になっていただろう。
元の世界では、彼女の「か」の字も無かった俺にとって、異世界生活7年目で結婚の話がくるのは、間違いなく喜ばしいことのはずなのに、なぜか心の中には、モヤッとした感覚がある。
「あ、あの~・・・!!!」
このモヤモヤした感覚が分からない以上は、結婚するなんて決断をしない方がいいと思い、否定しようとした時。両目に激痛が走る。
「あ゛あ゛――――!!!」
あまりの激痛にエレメーラの腕を振り払って地面に蹲る。この痛みを例えるならフォークで目を刺され、抉られているような痛みだ。
「ア、アミル!?」
さっきまで大人しかったアミルの急な暴れようにエレメーラも焦る。
「大丈夫!?アミル!ねぇ!!」
アミルの背中に手を添えて、心配をするがアミルは、返事もできずに息をさらに荒げ、悶える。
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!
耳元でエレメーラの声が聞こえる気がする。しかし、何を言っているのか聞き取れない。今は、この目の痛みにしか集中できない。
「あ゛っあ゛―。・・・あれ、治った?」
30秒ほど激痛が走った後、痛みは一瞬で消え去った。余韻も無く、呆気なく消えた痛みに少し同様してしまう。
「大丈夫か?アミル!」
「アミル!大丈夫?」
「アウゥ~~」
痛みから解放され、安心する。仰向けになると右側には、遠くに居たはずのワイアットとソニア、マカミがいた。
「アミル!大丈夫?」
「アミル君!大丈夫か?」
「アミル君!大丈夫?」
左を向けばレイデルトにガルト、エミリーさんも心配をしている。
「アミル!何があった。エレメーラに何かされたのか?」
ワイアットがアミルの上体を起こすと、真っ先にエレメーラを疑った。
「違うよ。父さん。」
何かされなかったといえば嘘になるが、直接攻撃を受けた訳でも精神攻撃を受けた訳でもない。
「本当だな。」
威圧的な声色でエレメーラをワイアットは、問い詰める。
「そんな、将来の旦那様にそんなことする訳ないじゃないですか~。」
エレメーラが俺の背後に立って、抱きしめてくる。
「アミル君。私の最後の攻撃、避ける前にスキル使ったよね?」
戦闘の際には、言葉に出さずにスキルを使うのが常識だ。さっきだって、言葉に出して〈慧眼〉を使ってはいない。
「はい。エレメーラさんと訓練している時に、〈慧眼〉ってスキルが発現したのでそれを使いました。」
そのスキル名を聞いて、エレメーラとワイアット、ガルトが目を合わせ合い、何か納得したように頷く。
「アミル。そのスキルは、命の危機がある時以外、絶対に使わないでね。」
肩を掴まれ、訓練の時以上に真剣な眼差しでエレメーラは、俺に力強く忠告してくる。
「なぜですか?」
〈慧眼〉は、相手の動きを遅く見せてくれるスキルだ。だからこそ、さっきのエレメーラの攻撃にも対処できた。なぜそんな便利なスキルを命の危険がある時以外で使っちゃいけないんだ?
「それは、〈慧眼〉は、眼から取り入れた情報を脳に伝える速度を無理やり、何倍にも引き上げるスキルだからだよ。このスキルを使い過ぎると失明や脳に異常を起こしてしまう。私は、そんな冒険者を何人も見てきた。」
知らなかった。ただ、相手の動きを遅く見せてくれる。ただそれだけの効果だと思っていたのに、ここまで危険なスキルだと思っていなかった。
さっきの眼の激痛も〈慧眼〉を使った代償という訳だ。
「そんな、危険なスキルだったんですね。」
「危険だ。」
「エレメーラの言う通りだよ。アミル君。」
ワイアット、ガルトもエレメーラの説明に納得している。
「分かりました。エレメーラさんの言う通りにします。」
失明はしたくないし、脳がイカレるのも御免だ。便利なスキルではあるが使用する時は、本当に追い込まれた時だけにしよう。
「約束だよ。アミル。」
「はい。」
安心したエレメーラは、凄い勢いで頭を撫で回してくる。それは、もう禿げる勢いで。
「それはそうと、エレメーラ。さっき言ってた将来の旦那様というのは誰のことだ?」
アミルの頭を撫でているエレメーラの手を掴んで、ワイアットが笑顔で問いかけている。笑顔ではあるのだが、その声色は決して祝福をしているようには思えないものだった。
「やだな~。アミル君のことですよ。お義父さん。」
どこぞのマダムみたいに手をヒラヒラさせて、ワイアットをお義父さんと呼ぶ。
「や゛~~~め~~~ろ゛~~~。お義父さん呼ばわりするなーーー!!!」
上体を限界までエビぞりさせ、昨夜と同等いやそれ以上にワイアットは、悶える。
「あら、エレちゃんがアミルのお嫁さんになるの?」
今にも腰がへし折れそうなワイアットを横目にソニアは、意外と乗り気だ。
「はい。お義母さん。さっき、アミル君とも約束しましたから。」
否定をするのが申し訳ないほど、屈託のない笑顔を向けられる。しかも、この笑顔が可愛いから余計に断り辛い。
体のいい、言い訳は無いものか考える。このまま、直で断るのはあまりにも申し訳ない。何より傷つけたくない。しかし、前の世界では、彼女なんていなかった俺にそんな気の利いたセリフが思いつくわけもない。
「私もね、エレちゃんみたいな可愛い人がアミルのお嫁さんになってくれたら嬉しいと思っているわ。」
彼女いない歴20年+7年の頭をフル回転させ、傷つけない結婚の断り方について悩んでいると、ソニアが間に入って来てくれた。しかし、助け船というよりかは、結婚に賛成しているような話し方だ。
(そうじゃないんです~。母さん。俺は、この結婚断りたいんです~。分かる、分かりますよ。エレメーラさんは、本当に可愛いと思います。思うんですけど、歳が離れ過ぎてると思うんです~。恐らくエレメーラさん、20歳くらいじゃないですか~。僕が20歳になった頃には、33歳ですよ。結婚するなら同い年くらいがいい。まずい、このままじゃ異世界生活7年目にして結婚相手が決まってしまう。まず、母さんを説得しなければ!!)
そんな、願望なんかを心の中で唱えながら、この結婚に賛成しようとしているソニアをどうやって説得しようか考える。
「じゃあ、」
「でもね。アミルは、まだ7歳。これから、学園にも通わなくちゃいけない。何より、世界の事をもっと、自分の眼で見て欲しいと思ってるの。だから、学園が終わる20歳。アミルが20歳になった時にまだ、アミルのことを好きでいてくれたらその時は、アミルのことをお願いしてもいいかしら。」
話し始めようとしたエレメーラの話を遮り、ソニアが続けて話した。それは、アミルが欲しがっていたエレメーラを説得する言葉たちだった。
「・・・・・まだ好きでいてくれたら、なんてことはありません。私は、アミル君に本気で恋してます。キュンキュンです。メロメロです。だから・・・待ちます。アミル君が迎えに来てくれるまで、いつまでも。」
まともだ。今のエレメーラは、実にまともな大人の女性に見える。ただし、7歳の子供に結婚をせがまなければの話だが。
「分かってもらえて、嬉しいわ。エレちゃんならきっと、アミルの事を幸せにしてくれると思うわ。」
二人の会話を聞きながら、ふと思うことがあった。「あれ?これ、婚約してね?」と。
「ア~ミ~ル~。」
足元から呪われたような声で呼ぶ声があり、足元を見ると。そこには、1~2m地面を這って来たであろうワイアットが自分の腰元を掴んでいた。
「と、父さん!?」
「あいつと、エレメーラと本当に結婚するのか~?」
思わぬところから助け船が来た。少々不安な泥船だが、この期を逃すことはできない。
「いい・・・・・・いい話だと僕は思います。」
断ろうとした。断ろうとしたんだ。しかし、「いいえ」と言おうとした時にエレメーラさんのあの何とも言えない悲しそうな表情を見てしまったことで、断ることができなかった。
「そうか。お前がいいなら俺は、もう反対しない。」
そうですか~~。アミル・ヘイズ7歳。婚・約・成・立!
「アミル、エレメーラさんと結婚するの?」
横からレイデルトが話し掛けてくる。結婚の話を聞いていたようだ。
「う、うん。20歳になったらね。」
未だに受け入れられない自分がいるため、返事もたどたどしくなってしまう。
「そうなんだ!おめでとう!アミル!」
あぁ~なんて、屈託のない笑顔を向けてくるんだろう。
「おぉ~、アミル君は、もう伴侶を見つけたのか。めでたいことだ。」
「あらあら、それは、おめでたいことですわね。」
ガルトにエミリーまでもが祝福をしだしもう、断ることなんてできない雰囲気になっていた。ここまで、来ればもう腹をくくるしかない。
「み、皆さん、ありがとうございます!!」
やけくそになりながら、全員に感謝する。この後のことは、よく覚えていない。大人たちが何やら話していたようだが。急に決まった婚約のことで全てが塗り潰され、会話が頭に入ってこなかった。気づけば帰り支度を済ませて、スレイガル邸の門前に居た。
「いや~、久々にお前に会えて嬉しかったよ。ワイアット、ソニアさん。」
「それは、俺もだ。ガルト。色々ともてなしてもらって悪かったな。」
「いいさ。俺とお前の仲だからな。」
「そうだな。今度は、何か手土産でもぶら下げてくるさ。」
「楽しみにしてるよ。」
ワイアットとガルトは、別れ際の会話を楽しんでいる。
「また、いつでもいらして下さいね。ソニア。」
「えぇ、エミリー。その時は、あの話の続きを聞かせて。」
婦人2人も同様に会話をしている。そして、こちらも。
「アミル、〈ストレージ〉のスキルを教えてくれてありがとう。次会う時までには、絶対にアミルの木剣、取り出して返すね。」
「うん。レイ、楽しみにしてるよ。こちらこそ、ありがとう。魔石なんて高価なもの貰っちゃって。」
「いいんだよ。僕たちの仲じゃないか!」
「そうだね。」
こんなに、楽しく話せる友人ができたのは一体、いつぶりだろう。話をしているだけであっという間に時間が過ぎ去ってしまう。理想的な友人だと思う。
「アミル。暫くのお別れだけどまた、すぐに会えるからね。」
エレメーラが抱き抱えてくる。
「はい。僕もエレメーラさんに会える日を楽しみにしています。」
「さん付けなんてしないでよ。もう、婚約までしたんだから。」
「いえ、僕は、まだエレメーラさんより弱いですし子供です。敬称は、付けさせて下さい。」
何より年上の人にため口なんて、親以外にできない。しかも今日、出会ったばかりの人ならなおさらだ。
「そっか~。残念じゃあ、エレメーラって呼んでくれるの楽しみにしてるね。」
「分かりました。」
「チュッ!」
エレメーラの顔が急接近し、頬に柔らかい感覚が伝わる。
「え?」
「この続きは、大人になってからね。」
そう耳元で言われ、地面に降ろされる。
「・・・はい。」
キスされた!
「アミル、帰るぞ~。」
ワイアットの声が聞こえ、そちらを振り向いて歩くが気持ちは、いまだにエレメーラを向いたままだ。我に返ると馬車に乗っていた。景色がゆっくりと流れだす。
「アミルーー!」
窓の外から声が聞こえ、窓から身を乗り出して馬車後方を見る。
「次、会った時は、絶対アミルに剣術で勝つから!!」
レイデルトのその言葉を聞いて、エレメーラへ向いていた気持ちが消え去り、ライバル心に切り替わる。
「うん!次、会った時も僕が勝ってみせるよ!!」
「またねーーーーー!!!」
精一杯のレイデルトの大声が聞こえ、遠のいていく。次に会う時が本当に楽しみだ。何年ぶりかの感覚だ。小学生の時に良く味わったワクワクする感覚。
そんな感覚に浸っていると、エレメーラとの訓練での疲れが一気に押し寄せ、馬車が町の商店街辺りに差し掛かった所で深い眠りについた。
《種族》人間 《個体名》アミル・ヘイズ 《神定武器》不明 《家系スキル》探索 《Lv》23《HP》142《MP》112《攻撃力》145《防御力》90《知力》80《抵抗力》50《素早さ》110《スキル》極東剣術・極、探索、能力特化、感覚特化、解析、マーキング、ストレージ、偽装、ステータス、慧眼




