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2-01 土産

 鳴り響く目覚ましを止め、時刻を確認すれば七時十五分、いつも通りの起床時間である。当然起こしてくれる人も居ないので、万一この目覚まし(相棒)がお亡くなりになれば、その日は遅刻が確定する。せいぜい長生きしてくれよ。

 安息の地ベッドから渋々と起き上がろうとしたところで、足に違和感を覚える。……ああ、そういえば昨日は良く解らない不思議少女騒ぎで、庭の木に後ろ回し蹴りを喰らわしたか。木よ、すまんかった。それでこれは、普段弓道では使ってなかった筋肉が張っているようで、たまには全体的に動かしておかないとだな。

 制服に着替えて階下へと降り、洗面所に向かう。歯を磨きながら、ふと昨日の少女は何だったのだろうかと考えてみる。

 血痕……喧嘩(けんか)のお誘い? おいおい、あんなちびっこが誰をヤろうってんだ、ここは世紀末のスラムかよ。パパ発言も含めて、やはり妄想癖の強い子という線が濃厚だ。中二病・高二病と症状が悪化していかなきゃいいが……まぁ所詮は人ごとか。

 台所へ行き、皿を出してチップタイプのシリアルを入れ、牛乳を注ぐ。パッケージのような立派な虎に成れますようにと、願をかけながらもしゃもしゃと食べる。食べ終わったが、残念ながら今日も虎には成れなかった。大人はみんな嘘つきだ。今度はチョコリングタイプのシリアルで、象に成れるか試してみよう。

 野菜分摂取のために冷蔵庫のトマトを一個(かじ)ると、玄関に向かっていそいそと廊下を進む。靴を履いて外に出ようとしたところで、玄関脇の郵便受けから飛び出している何かに目が留まった。

 どうせ何かのチラシだろう、そう思って取り出してみると……それは薄桃色で二つ折りにされた紙だった。何じゃこりゃ?

 不審に思いつつも、ひとまず謎の紙を開けてみる。


『パパ、おはよう~ 朝ご飯ちゃんと食べた? 昨日はゆっくりお話もできなかったから、また来るね~ それじゃ気を付けて行ってらっしゃい 最愛の娘より (ゆ)』


 とても丁寧かつ綺麗でありながら、少し丸みを帯びて可愛らしさも兼ね備えた文字であり、内容を抜きにしても筆者は女性だと分かる。そして、ところどころに手書きの❤が描かれており、末尾には「ゆ」を○で囲ったサインらしきものが添えられていた。

 ふむ、これは、いわゆる……「お手紙」というやつか?

 送り主の名前は、断片的なサインらしきものしかないので判断できないが、パパという時点で昨日の不思議少女で間違いないだろう。

 お手紙片手に門の外に出て、一応周りを見渡してみるが、最愛の娘(仮)まるゆさんの姿は確認できない。昨日の夜に家へ入れてもらえなかったので、これを残して帰っていった――いや、昨日は見たところ手ぶらだったし、通学の途中で置いていった可能性の方が高いか。

 いずれにせよ、実に手の込んだ事だ。しかも昨日同様に目的不明――いや……血痕のお誘い、だったな……はぁ。


「へいへい、誰かに尾行されないよう、せいぜい気をつけて行くともさ」


 俺は謎の桃色レターを通して皮肉を言って、家を出るのだった。


不思議少女の名前が一文字だけ明らかになりましたね!

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