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7-57 隠絵  ※挿絵付

※問題イラスト再掲

 挿絵(By みてみん)

―――――――――――――――――――――――――――――――――



「そもそもこの絵の同音異義語って一個なん?」

「「「あ」」」


 ヤスの予想外な切り口の質問を受けて、うろこが飛び出んばかりに皆の目が丸くなった。


「そうか、うん、そうだよなっ! 同音異義語なんてメチャクチャ珍しい単語だし、俺らは一個見つけて満足してたけど……」

「ええ、二個目があるかもしれません!」

「いやぁ部長、よく気付いたな?」

「ああ、でかしたぞヤス!」

「え? ――あたっ」


 自分の功績を理解していないヤスがポカンとしていたので、その背をパンッとはたいてヤスイッチを押してやれば、いつも通りと調子に飛び乗ってきた。


「ハッハッハ、これがスーパーヤスさんの力だっ! さぁ、皆で偉大な僕をもっとたたえよっ!」

「……本当にすごい……私にはできない発想……尊敬」

「えーと、目堂さん、ありがと? む、むむ……なんだか照れるなぁ、あはは」


 目堂から純粋な賛辞が送られて、ヤスは戸惑いを隠せない様子だ。まさか本当に褒めてもらえるとは、思ってもいなかったのだろう。


「にしても、まさか二個目が──んっ、二個?」


 新たな視点で見たことで、今しがた悩んでいたベン図の謎について、一つ答えが見えてきた。


「そうか……これならベン図の向きにも説明が付く」

「おっ、次は宇宙こすもひらめきか?」

「おうよ」


 皆に期待の目を向けられる中、俺はたった今解けた縦向きの謎について説明していく。


「さっきまで俺らは、左の絵から流れてきた『desert(砂漠)』という一つの情報を、頑張って二つに分けてベン図に入れようとしてたよな?」

「ええ。上手くはいきませんでしたけど……」

「ああ、それだとベン図は通常通り横向きで良くて、だから答えに辿たどり着けなかったんだ。本当は左から二つの同音異義語という二つの情報を持ってくるのが正解で、それらを受けるように二つの円を左に対して並列配置──つまり縦向きに描かれてたんだろう」

「わあぁ、そういう事だったんですね!」「……納得」「さすがだな、あんたなら解けると思ってた」「並列配置……ん、んん?」


 約一名を除き納得顔であり、隣の夕も小さくウンウンとうなずいている。恐らく夕は二つ目もすでに見つけており、ベン図が見えた段階で、この考え方で最終の解まで到達しているのだろう。


「あともしかすると、まだ絵が隠されてるかも──ん、やってみた方が早いな。すまんが目堂、もっかい厄災メガネ借りていいか?」

「……役立つ厄災……ふふっ、変なの」


 何やらツボだったらしく、目堂はクスクス笑いながら手渡してきた。先ほどの騒動が良い方向に転じたのか、人見知りオーラがかなり薄まっていて、何だかとても可愛らしいなぁと感じる──っていやいや、もちろん夕には負けるけどなっ!

 そうして首を振りつつテントの外へ出ると、予想した箇所に光を当て、皆のところへ戻って用紙をテーブルに置く。


「みんな見てくれ、矢印が出てきたぞ!」

「「「おお〜」」」


 挿絵(By みてみん)


 左のデザートの絵から右のベン図の二つの円に向かう形で、左の枠内に矢印が二本出てきたのだ。


「ふぉっふぉっふぉ~、よくぞ隠し絵まで見破ったぁ~! ヤスくん大地くん〜、あっぱれあっぱれじゃぁ~!」

「「ヨッシ!」」


 なるほど、隠し絵と言うからには、最悪見つからない可能性も考えていたようだ。つまり解くために必須ひっすの絵ではなく、今回のようにあくまで推測を確証に変えるための材料、もしくは偶然見つかった場合はヒントになる仕掛けとして、オマケ感覚で配置していたのだろう。


「これで同音異義語が二つあることが確定したし、これを探し出したら、ついにゴールだな」

「ええ、皆で頑張りましょうっ!」

「「「おー!」」」



   ◇◆◆



 こうしてヤスの閃きで大きく前進した俺たちは、再び同音異義語探しをすることになり、しばらく左の絵とにらめっこしていたのだが…………これがまた、一向に見つからない。このラスボス、しぶと過ぎる。


「うぅ、困りましたぁ……絵から連想できる言葉はいくつか思いつくんですけど……」

「同音異義語って条件が、マジでキツすぎるんだよなぁ」

「それな。本当はあるけど、オレらが知らない英単語ってパターンもあるしさ?」

「僕なんて、英訳の時点で詰んでるからねっ!」


 このように、発想力だけでなく豊富な英単語知識も要求される訳だが、俺含めてこのメンツは英語が特別得意でもない。ここは堪能であられる夕先生にヒントでももらえないものか……そう他力本願になってしまうほど、何も思いつかない。


「――こほん」


 すると願いが通じた訳でもないだろうが、夕がそっぽを向きながらボソボソと話し始めた。


「ショートケーキかぁ~。あー、この絵を見てたら、ボクなんだかスイーツが作りたくなってきたなー。実はさっきのデーツの話で、新作のスイーツ思いついたんだよなー。これ絶対美味しいスイーツになるぞー、ウンウン」

「え、鉄人、急にどしたん? んまぁ小学生の鉄人は英語分かんないし退屈だろうけど、僕らが今頑張ってるところだから、邪魔しちゃだめだぞ?」


 突然飛び出した夕のパティシエ魂――と見せかけて、これは不甲斐ふがいない俺たちのためにヒントをくれたに違いない。ありがとう、夕先生! あとヤス、テメェは今すぐ土下座して謝っとけ!


「あはは~、ヤス君おもしろぉ~い♪ ね~、あっさくん?」

「エー、ボクワカンナイ。ふすーふすー」


 当然ヒントと気付いているなーこから茶化されるが、吹けない口笛を吹いてトボける夕先生。何してても可愛いのがズルい。

 それで夕先生がくれたヒントだが、やたらと連呼していた『スイーツ』のことで間違いないだろう。sweets(スイーツ)か……本来はあめやお菓子のことで、デザートと同じ意味合いでも使われる言葉だ。その同音異義語は…………むぅぅ、そんなの、あるかぁ? となると他の形は……確か単数形のsweet(スイート)でも似たような意味で……ん、なんか聞き覚えがあるぞ?


「――おっ、大地のその顔は……やったか!?」

「なんで無駄にフラグ立てんだよテメェは」

「まぁまぁ、それで?」


 俺の様子に目ざとく気付いたヤスへうなずき返すと、思い浮かんだ候補を皆に言ってみる。


「スイーツと言ったら――」


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