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異世界でチートでは無く物欲センサーが付属しました  作者: 狼絕
1章 『星々の願い』
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2 『行ってきま』



   ∀   ∀   ∀




 「おや、ナナツキさん、終わりましたか?」


 「うん、どうかな?」


 「ええ、とても強そうです」


 似合うとか可愛いとかじゃなくて強そう、なんていうのがシグレらしい。にこやかに笑うシグレと、冒険者の装備を大方整えた私。

 まだ不安だが、今日はダンジョンに挑む日。腹を括るしか無いようだ。


 まだ戦闘等した事も無い。練習もしたことが無い。それなのにシグレは行けと言うのだから、借金を背負って命令される人の気持ちは案外こんな感じなのかもしれない。


 何より、まだダンジョンについての詳細も、目的も、なにも分かっていないのだ。

 行く途中で教えてくれるというシグレ。途中まではついてきてくれるらしいからまだマシだろう。


 思ったより装備は重く、でもそれを着てみると想像以上に軽くなった。持つのと着るのでは全く違う事に驚いたが、恐らく重さの負荷が係る面積が広くなるからだろう。


 「今日のダンジョンは、エリアール森林です。アラグレーの街の南に位置する、魔力濃度の低い比較的安全な森です」


 ……今日の?


 「ご存知かと思いますが、森は魔力の満ちる場所です。森は大抵ダンジョン扱いされますが、その中でも安全です。今回は移動手段の確保の為のものですので、悪しからず」


 ……今回は?


 嫌な単語が聞こえた気がする。が、まあ聞かなかったことにする。


 移動手段、か。それも後々説明してくれるだろう。


 私は不安だったけれど、何よりも不安だったのは最終的にシグレが何をしたいのかが分からない事だ。シグレが戦うのかは知らないが、私に何をさせようとしているのかが一切分からない。


 道中に魔物が出るだろうから、一応ギルドの依頼を次いでで受けていた。


 ギルドの依頼は代わりに受けてくれていたようで、私はギルドの方に行っていない。ギルドでの登録は武器屋に行く前に終わらせて居たし、私がギルドに寄ったのは実質この世界に来てから二回だけだった。一回目はシグレの仕事を見るので、二度目は登録だ。


 私達は街を出て、森の方に歩き出した。移動手段はレンタル可能だが、高いので単純に費用節約だ。


 シグレは不思議なことに、いつものギルドの職員の制服だった。武器があるようには見えないし、汚れが付いたら困る筈だが。


 「ナナツキさん、私達は__最短を目指します」


 「最短?」


 「ええ、最短です。物事には時間が必ず介入し、そして物事には理由が必ず付きまとう__」


 「時間と、理由……」


 「シュトルツさんが行ったダンジョンは『星屑の洞窟』です。かなり距離がありますが、シュトルツさんならあと__二日も掛からずに辿り着くでしょう。シュトルツさんが出発したのは三日前、私達はそれに__二日と掛からず追い付きます」


 「その為の……移動手段?」


 移動手段? ダンジョンに車でも置いてあるのか?

 森の入口に着くと、シグレは立ち止まった。


 「ここからは……ナナツキさんが行ってください」


 「は? え? ちょ、私だけ? っていうか、目的は? 何をすればいいの?」


 「全部入ったら分かります。いや、ナナツキさんなら分かるでしょう」


 固まった私に未だ曖昧な言葉を投げるシグレ。その妙な断言に困惑するしかない。

 ギザギザした歯を見せ笑うシグレの笑みは何処か安心感もあって、それに誤魔化されそうにもなるがそんな曖昧なまま終わっても困る。


 「いいですか、ナナツキさん」


 急に真剣な顔に顔になるシグレ。笑うのか真剣になるのかどっちかにして欲しいものだ。


 「ここの森の魔物は__臆病です。ナナツキさんに敵対すれば、絶対にナナツキさんに近付きません。危険じゃないと分かれば、敵ではないと認識すれば、必ず近付いてきます。分かりますか? 魔物の中には近付くだけで酷い怪我を負うような特性を持つものも居ます。だから__敵対するように行動して下さい」


 「????????????????」


 「それでは」


 背中をトン、と押される。それだけで私は森の中に吸い込まれるように歩いて行った。戻ろうとしても足が言う事を聞かない。


 「ちょ、ま……」


 「死なないよう、応援しています」

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