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異世界でチートでは無く物欲センサーが付属しました  作者: 狼絕
1章 『星々の願い』
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11 『状況整理 1』

 「あーーもー、取り敢えず魔狼氏お願い」


 全部面倒くさくなった私は魔狼に全投げ。


 「あ、ああ。あと、俺の事はイグラスって呼べ」


 「……? 何で?」


 「お前が付けたからだ。それも覚えてないのかよ?」


 「いや。覚えてない」


 「……そうかよ」


 何か言いかけたイグラスも、諦めたように息を吐いた。


 「あの状況で意識を強く保つのも無理な話でしょ?」


 「しらねぇよ、貧弱なニンゲンの事なんか」


 随分と傲慢な性格な様だが、それに裏打ちされた実力があるであろうことは明白だ。

 私もこいつくらい強くなれたらいいのに。


 「……ナナツキ、覚えてねぇみてぇだから改めて言おう。俺を__次の目的地まで連れて行け」


 「嫌だ」


 即答した私に、イグラスが目を見開く。


 聞き間違いでもあったのかというような困惑を見せるイグラスだけど、いや、嫌だよ?


 「……何でだよ!? まだ殆ど何も説明してねぇだろ!」


 「いや、なんか怖い」


 「まずは聞けよ!!!」


 それもそうだが、私には展開が早すぎる。シグレは椅子に座り、此方をじっと見つめている。


 なんか言えよ。


 「しょうがないなあ」


 「おま……」


 欠伸をしながら、イグラスを改めて見る。触ったらすごいもふもふしてそうだなぁ。


 「………。まず、嫌だ嫌じゃないとか以前に、既に俺らの間に契約は成立している」


 「……は?」


 「お前が覚えてれば話は早かった。俺が出した条件をお前は飲み、俺に名前を与えた。その時点で、俺とお前の間に契約による繋がりがある」


 淡々と説明するが、それがそもそも、よく分からないのだ。


 「いや、待って。それは分かったけど、そもそも、私次の目的地なんて、まだ決まって__」


 「決まってますよ」


 突然口を挟んだのは、シグレだった。


 「は!?」


 「エリアール森林に行く前から、決まっていました」


 「は、何を言って……」


 「ナナツキ、俺は目的地が何処かは知らねぇが、俺は何としてでも着いていく」


 真面目な顔でいうイグラスだが、待って欲しい。


 「そもそも、なんでイグラスが着いてくるの。メリットも目的も無いでしょ? 寧ろ私から離れたがってたのは、イグラスの筈でしょ?」


 「……ナナツキ」


 真面目な顔で此方を見るものだから、どうにもこうにも、反論が出てこなくなる。そういえば、洞窟にいた時のような威圧も存在感もないが、今は消している状態なのだろう。

 なのに、その瞳は見るものを魅力するような何かがある。


 「……俺がお前に着いていくのに、理由なんて無い」


 「……は?」


 「森林でも言ったな、『殺したいけど、殺したくない』、と」


 まさか。


 察した私に、イグラスは続ける。


 「ナナツキ、俺はただ、何となく着いていくんだ。いいか、そういう通り道なんだ。俺がお前を何となく、未知の感覚から来る意思によって、殺さなかった様に、俺は何となく、ついていく」


 「……それは……」


 なんという、理不尽な事なのだろうか。

 イグラスは着いてきたいなんて元々思っちゃ居ないだろう。だが、意思とは関係なく、そう導かれている。


 「何が起こっているのかは分からねぇ。だが、まあ、そっちの野郎は分かってるかもしれねぇがな」


 イグラスがシグレを睨み付けるが、シグレは何処吹く風。


 「……シグレ」


 「ナナツキさん。次の目的地は、『星屑の洞窟』です。言ったはずでしたが、覚えてませんか?」


 「あ……」


 そういえば、言っていた。シュトルツが行ったという、洞窟。


 それもダンジョンなのだろうか。


 「はっ!? 待てや、お前。あの洞窟は……」


 「ええ。ご存知かとは思いますが、あの洞窟は指定霊沓(れいとう)危機区域です。指定霊沓危機区域は、ギルド……いや、国から指定された、特殊な精霊の集う危険区域です」


 聞き間違えだと思いたい。


 「ま、まって、それは__」


 私が咄嗟に口を挟むと、此方を静かに視線を向けて言うのだ。


 「そして__私の生まれた場所です」




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