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異世界でチートでは無く物欲センサーが付属しました  作者: 狼絕
1章 『星々の願い』
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10 『皆黙るといいのにな』


   ∀   ∀   ∀




 「ナナツキさん、ナナツキさん」


 微睡みの中で揺蕩う感覚は、以前であれば離れ難いものだった。私は欲求にとても弱かったし、それは私の性格というよりはもっと深い、元々の性質なのだろう。


 昔から、私はダメな子だった。

 何も出来ない訳ではないし、元々そこまで不器用な訳でもなく、器用な訳でも無かったが、やる時は大体の場合丁寧にやるような子。

 でも、それはやる時の話しだ。私は、何もやらなかった。

 何も、「やろうとしなかった」のだ。


 「ナナツキさん」


 「ん……眠………」


 「……………」


 「……くは、ない……?」


 すぅ、と水の中から浮上する感覚。

 眠気が綺麗に梳いて消えていくように離れていき、私は目を覚ます。


 以前なら、ここまで早く起きれなかったのに。


 ここに来てからの成長か、または別の要因か。まあ、別に寝起きの癖なんてどうでもいい。それが致命的な何かに発展するなら別だが、合理に関わることなんてほとんど無いし、非効率になる訳でも無い。


 「おは、よう?」


 「おはようございます。もう昼です」


 その言葉をゆっくり噛み砕く。

 ……もう昼?


 「え、あ、何? ここは、ええと、家?」


 正確に言えばシグレの家だが、私は帰宅していた様だ。シグレが目の前で立ち、此方を見つめていた。


 「ええ。そうですね。きちんと目標を達成出来たようで良かったです」


 「え? あれ、ええと、私は、エリアール森林に、行って……」


 こういう風に目覚めると、意識を失う前の記憶を辿るというが、本当に自分が体験するとは。案外思い出せないもので、唸りながら記憶の足跡を踏みしめる。


 「あ、魔物……ふぇんりる」


 「名前のないネームドモンスターに名前を付けたんですから、大したものです。想像よりも上手く行きましたね」


 そういやコイツ嘘ばっかついてたな。よく私の前に堂々と立てたものだが、ここまで堂々としていると、恐らくきちんとした理由があるのであろう事が察せられる気がした。

 そうでなくとも、私が有利な状況な訳では無い筈なのでどうとも出来ないのだが。


 「……ねーむどもんすたー」


 なにを言っているのかわからない。寝すぎた影響か、それとも疲れからか頭が痛かったが、身体を起こすとベッドから降りる。


 「んゅッ!?」


 「起きたか。遅ぇな! ったく、ニンゲンはもっと早く起きれねぇのかよ?」


 ベッド脇に居た存在に、思わずひしゃげた声を上げてしまった。


 「え、あ、え? なんでいんの? この魔狼」


 「はっ!? 頭引っぱたいた方がいいか!?」


 「落ち着いて下さい。ナナツキさんには負担が大きかったのでしょう」


 「ナナツキさん、ナナツキさん、この家にある砥石、とっても性能がいいです!」


 皆黙らないかな。


 「会話に突然突っ込んで来られると反応に遅れるんだよね、セレナ?」


 「ひゃぃ!? ご、ごめんなさい!」


 魔狼に首輪が付いていた。如何にも即席です、みたいな雑さだが、一応首輪。そこに、おまけとばかりにぶら下げてあるセレナ。その状況もよく分からないので先送りにするとして、察するに研いで貰ったようだ。使ってないのに。働けよ。


 ベッドに腰掛けると、状況を把握する為に息を吐き、脳内に余裕を作り出す。


 よし、よし、皆黙った。そのままでいいよ。永遠に。

 まあ、冗談なのだが、尚この状況は。


 シグレが迎えに来たわけがないし、セレナは動けないし、まあ多方、この魔狼が運んでくれた、という所だろう。

 この魔狼と最後会話を交わしたのは覚えているが、内容が曖昧だ。


 「そんな所ですね」


 シグレが返答。セレナはカタカタと揺れ、魔狼が鬱陶しそうに首を掻いた。


 「状況整理嫌いなのよね。どこからどこまでどうやって整理すればいいのか分からないし、把握の為に時間かかることあるし」


 「諦めようとすんなよ」


 呆れたように言われましても、嫌いなものは嫌いなのだ。何もしたく……無くはない。前までなら何もしたくない、といって放棄したい気持ちでいっぱいになるのだが、これも成長か。


 「魔狼氏、説明お願いしてもいい? 私以外は割と把握してる系?」


 「……氏?」


 「あ、ナナツキさん、ええと、私は少ししか……」


 「二回説明しましたが、セレナさん」


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