心霊現象で無かったとしたら 恐怖が数十倍に羽上がるので 霊の仕業だと思いたい
僕が 東京に住んでいたのは 約一年間
その間 住んでいた家での 恐怖体験の真相は
解明すること無く 地元に帰ってしまった ので
“それ”が 心霊現象だったのか それとも 人為的なナニカ だったのか
全くわからないまま なのだけれど
心霊現象であってほしい と 僕は切に願っている
僕の両手には 神秘十字線がある
先祖の霊に護られている人に出る 手相
そして 人よりも霊感が強い証 の様なもの
霊感がある とか ない とか
幽霊を信じる とか 信じない とか
僕の小さい頃は そんな質問をよく聞いたけど
今も 聞く質問かもしれない けれど
僕は ある とも ない とも
信じる とも 信じない とも 答える事は出来ない
なら 僕は どう答えるのか
僕の答えは こう
実際に 霊の方から 声を掛けられてしまったのだから しょうがない
それは 僕が 高校二年生の 夏の終わりごろ だった
家には 僕と 犬と それと 家鳴が居ただけ だった
家に居た人間は 僕だけだ
学校から帰って 制服を着たままの僕は
一階のリビングで 少し休んでから 二階の自室に向かうつもりだった
畳に少し横になっていると 心臓に針を刺されたような痛みに襲われた
でも それは 僕にとって 小学生の高学年から 当たり前に有るとこで
ああ またか と思うくらいだった
息が詰まる程 苦しい が 痛みが終われば 何て事はなかった
畳から起き上がると 僕は 二階に上がるため 階段へ続く扉を開けて
一歩 先に進もうとすると 突然 右耳に 直接 男性の声が聞こえた
“おい”という一言だった
僕は 真っ直ぐ前を向いたまま 声を低め 静かに
“うせろ” と返した
それ以来 その声は聞かないし
心臓の痛みも 無くなった
まあ そんな事が有ったので
僕は 霊を 信じる とか 信じないとか
霊感が 有るとか 無いとか そんな次元では済まないのだ
さらっと 家族に含めてしまった 家鳴は
どうも 家のなかでも 僕の周りにしか居ない らしい
思い出せないほど昔から 僕の周りには 家鳴が居て
小さい頃から 家が軋むのを よく聞いていたし
中学の修学旅行にも 家鳴は憑いて来て
旅館のルームメートを 怖がらせた
高校に入ってから 両親が家を建てた
家鳴は 引っ越しにも憑いて来て
新築に出来た 僕の部屋を軋ませた
ある時 僕は 母親と 部屋を交換した
部屋の交換が済んでも 家鳴の移動が済んでなかったのか
僕は 母に 部屋で音がするのだけれど 今までもそうだった? と聞かれ
そこで 僕は はじめて
家鳴が居るのは 通常 僕の周りだけ なのだと 気づいた
おっと 僕の話が 長くなったしまった
東京の話しに戻ろう
家に居る時は 基本的に 鍵をかけて チェーンロックをしていた
それは 時間には 特に関係なく 必ず忘れていた頃に起こる
内側からも 外側からも 誰も 触れては居ない し
鍵が動いている様子もない のに
鍵が開く音だけが するのだ
出先で センサー式のトイレを 勝手に流したりするので
僕は 家鳴の仕業だと思っていた だけど
何度か続いたので 音楽プレイヤーに入っている
般若心経を流したら 起こらなくなった
それでも しばらくすると 起こりだしたので
もう しょうがないな と 放っておいた
音がなるだけで 害はない から
ちょっと 焦る けど
一番始めに それが起こったのは いつだったのか
もう 思い出せないけれど
朝 四時から六時の間に インターホンが鳴るようになった
そして それは 僕にしか聞こえない
一緒に寝ている猫は ピクリもとしない
鍵が開く音には反応するのに 明朝のインターホンには 反応しないのだ
僕は 霊め 鍵の音を無視してるから 新たな手で来たな と 思った
そして それも 起こされはするが 布団からは出ないで すぐ寝た
東京に移住してから
霊とは別の事が原因で 徐々に 徐々に 精神を病んでいって
睡眠を取ることが難しくなって “まとも”では無くなってしまうと
考えなくても良いことを 考え出してしまうようになって
霊の仕業だと 勝手に決めつけてしまっているけど
万に一つ 霊の仕業ではない可能性もある
と 考えてしまった
明朝四時から六時の間に わざわざ インターホンを押しにくる人間
だとか よっぽどの暇人だろう と 今なら思うのだけど
その当時の僕は 精神を病んで ドン底の状態で有ったから
心霊現象よりも 恐ろしかったのだ
東京にいた頃の記憶を 脳が 全て箱に積めて
奥へ 奥へ し舞い込む仕事を せっせとこなしているから
最後の方の三回 しか 思い出せないけれど
明朝 インターホンが鳴った 数日後
アラートが鳴る程の地震が有った
三回では 統計が取れないから 断言は出来ないけど
地震を知らせていたのかも知れない