高嗤の魔女⑨
緑色の床に左右が引き戸に挟んでいる通路をジャンヌは走っていた。
「あははははは!」
エミは笑いながら、ユビワを抱えて、屋敷の奥へと走っていく。
罠なのは分かっている。
魔女の空間に入っているから、何が起きるか分からない。
だから、ここで見失ったらマズイ。
その時、足元がない。
落とし穴だった。
落とされる。
さらに底から無数の槍が伸びていく。
すぐに足に白い炎を噴射し、落とし穴から抜ける。
その時、横から鉄球が迫ってくる。
すぐにロザリオで切る。鉄球が真っ二つにし、着地する。
「あはははははは!」
エミの笑い声が響く。
「あははははは!どう!どう!楽しい!高嗤の魔女トサ・エミの屋敷はどう!どう!あははははは」
――ふざけやがって
マズイ!見失った。
周りを見ても、緑色の床に引き戸が左右に挟まれているだけだった。
ユビワを隠したのか。
怪我しているから早くエミから助けないと。
「早くしないと死んじゃうよおおおおおおおおおお」
戸が開くと縄で縛られ、吊るされているユビワの姿。
切口から血が流れている。
「ユビワ!」
また戸が閉じられる。
「あははははは」と笑い声が響く。
閉じた戸からいくつも水が細く噴射する。
ジャンヌは走り、迫ってくる水から避ける。
反対側の戸に穴が空けるほどの勢いだった。
ユビワがいた部屋から離れていく。
遠ざけるつもりか。
その時、壁から突き破ぶる。
口が裂けるほどに笑い、殺意があるエミがハンマーを振り上げる。
――エミ。自らか。
ロザリオを構えるが。
――待て。
あの女は騙すことが好き。
ユビワが目的なら、わざわざ連れていくか。
人質にするならわざわざ自分が出向かうか。
今まで隠れていたのに。こんなタイミングで現れるとしたら。
踏み出す足を思いっきり踏みしめ、背後に跳ぶ。
迫ってきたエミが倒れる。
エミの姿がユビワに変わった。
――やっぱり。危うく斬ってしまうところだった。
ユビワに向かうが、サイドから殺意が感じる。
すぐに跳び、態勢を立て直す。
ゴンと轟音。
そこには、床にヒビが入るほどにエミが柄の長いハンマーで叩いていた。
「この・・・」とにらみつける。
エミは倒れているユビワを踏みつける。
「なんで引っかかないのよ~」と不思議そうに見つめるエミ。
「二度も騙してたまるか!」
エミに怒鳴る。
「せっかくのドッキリだったのにな~」
「最初から私を・・・」
「当たり前でしょ。あなた。聖女なんだから」と当然のような顔をするエミ。
「毒を差し向けたのも・・・」
フタネがお菓子に毒をまいたあの時。
「力が未熟だったし。死んでほしかったのに、失敗に終わっちゃった。でも、アドリブは臨機応変に!」
「だから、ユビワを・・・」
「まあ、いいターゲットだったし。あの顔ではまっちゃって完全ふっかっつ!あははは!」
「笑うな!」
白い炎を飛ばす。
ハンマーで白い炎を叩き潰す。
「笑ってやる!騙してやる!騙して騙して騙して心を抉って傷だらけに砕けて散りとなれ!あはははははは!」
エミは口が裂けるほどに笑い声をあげる。
その時、ユビワが消える。
また隠したかと思えば、エミが目を大きく開いている。
「どこにやった!」
エミが隠したわけではない。
だとしたら。
エミの喉にエンジェライトの刃が貫通している。
「う!」
エミが喉を抑える。
視線を向ければ、ユビワが銃を構えて姿を見せる。
「ここですよ」
ユビワが無事だった。ケガをしているはずが。
ユビワが銃を撃つ。
エミの足元に陣が光り、鎖が伸びる。
動きを止めようとしている。
今は苦しんでいるエミを殺すのが優先。
すぐに跳びだす。
「ぐう!」とエミが唸ると、天井から槍が伸びる。
エミの前に壁のように槍がいくつも刺す。
さらに槍が天井から伸ばしていく。
ジャンヌは背後に跳ぶ。
エミから遠ざかっていく。
ユビワは、指飾りで一線を引き、光の壁で天井から来る槍を止める。
さらに天井から伸びた槍がエミの足元にある陣を刺す。
陣や鎖が消える。
エミは首に刺さったエンジェライトの刃を引き抜く。
ハンマーを持って、飛び込む。ユビワに向かって。
ジャンヌはすぐに向かうが、足元がなくなっていた。
――また
また落とし穴に落ちるかと思えば、天井から槍が伸びる。
ジャンヌが落とし穴に落ちた。
エミがハンマーを持って迫ってくる。
ユビワは動けない。
天井からくる槍を光の壁で抑えているからだ。
エミが向かってくる。
直接ハンマーで壊すつもりだろう。壊した隙に攻撃すれば。
急に首が苦しくなる。
首に縄が絡まれる。
――どこから
床から穴を空いて伸びていた。
さらに手首も絡まれる。
紐に引っ張られ、床に体が叩きつけられる。
これでは魔術が使えない。
光の壁と共に槍が消え、近づいたエミがハンマーを下ろす。
その時、エミの手元が光の紐に絡める。
それはアキセが指飾りから出た魔術だった。
アキセが光の紐を引っ張り、エミの動きを止める。
エミが口を開ける。
笑い声でまた耳に攻撃される。
だか、エミの喉から光の刃が貫いた。
穴に落ちたはずのジャンヌが背後からロザリオで喉を刺したからだった。
「だま・・・」
「騙したあ?てめえが言うことか!」
ジャンヌはエミが白い炎に包まれる。




