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魔女狩り聖女ジャンヌ・ダルク サイドストーリー篇  作者: 白崎詩葉


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糸巻の魔女②

 今夜、月が出でいるおかげで真っ暗にはならなかった。

 夜風が涼しさを増す。

たどり着いた町は、灯りが一つもなく、誰もいない廃村のようだ。石作りの家があちこち壊れていた。屋根がない。半壊した家と様々だった。

「で、なんで付いて来るの?」

 付いて来るレオンに訊く。

「聖女についていけば、安全かと…」

「それ前にも聞いた・・・」

 ジャンヌは溜息を吐く。

 アキセのように付いて来るのは嫌だった。裏切ったり、巻き込ませたりはしないと思うが、レオンはリリスのお気に入り。リリスに関わりたくない。できれば離れたいだか、何をしても付いて来るような気がして諦めているジャンヌだった。

「明日にはどこかに行ってよね。これ以上面倒は見ないから」

 もしずっといることになったら、進出気没のリリスがどこで現れるのか、心臓が縮まる日々におわれる。そんなのはお断りだ。

 そんな中、廃村に進むにつれ、違和感に気づく。

「ん~」

「なんだよ」

「廃村だから、夜盗か何か潜んでるかと思って、警戒していたけど・・・」

 視線を感じた。人ではないものだった。

 ジャンヌはロザリオを懐から取り出し、警戒態勢を取る。

 レオンも気付いたのか警戒していた。

 その時だった。

 半壊の家から何かが飛んでくる。

 ジャンヌは、咄嗟にロザリオで横に払おう。

 切った正体は、真っ二つになった巨大なクモだった。

「クモ?」

 レオンがエルフ語で詩い、精霊を操る精霊術を発動する。

 壊れた家から土の槍は大きいクモごと刺していた。

「こいつらタランチュラだ!」

 そのほとんどが異形(デミ)化した異獣(エヴォル)のクモのタランチュラだった。

 異獣(エヴォル)は、『呪い』の影響により異形(デミ)化した獣。

 タランチュラは、体中に毛を持ち、人よりも巨大化し、八つの赤い目。鋭い牙に猛毒を持っている。

「今日もゆっくり休ませてくれないのね」

 呆れるように言った時だった。

「あら、そこにいる子ってリリムかしら」

 女の声をした方へ向く。

 半壊した建物の上にいた。

 糸と混ざった黒くて長い髪。紫の目。上半身は女。下半身がクモの体。背中にもクモの足が2本はえている。それに可視化した『呪い』を黒いモヤとしてまき散らす。

「魔女か・・・」

 ジャンヌは、にらみつける。

「聖女が釣れたと思ったら、噂に聞くリリムちゃんまでいるのね~」

 不適な笑みを見せる。レオンの噂は、魔女にまで行き渡っているようだ。

「私。リリスに嫌がらせされたんだよね」

 リリスの被害者か。

「人間の姿にされないように『呪い』をかけられてね。この体嫌いなの。どう見たって醜くて気持ち悪いでしょ。それをね。リリスがなんて言ったと思う」

 魔女は睨みつける。

「これ以上に似合っているのに他の姿に変えるなんて勿体ないってね」

 つまり、魔女はリリスに他の姿に変えないように醜い姿のまま固定されたということ。本当にリリスは質が悪い。

「まあ痛めつけようにも、あんな強いリリス様を殺すなんて無理な話。だからリリムに八つ当たりしようと思ったけど・・・」

 魔女の視線がレオンを向いた。

「かわいい!」

 魔女は、顔を赤らめて言う。

 レオンもアキセと同様魔女に好かれる体質を持っているようだ。嫌な予感がする。

「え・・・」

 レオンが引いている。

「ん~。結構かわいい顔をしているんじゃない。いじりがいがあるわ~」

「それは別のにしてくれないか…」

「裏切ったら殺す!」

 ジャンヌはすがさず低い声で釘を刺す。レオンがアキセのように裏切らないようにするため。

「いや、聖女じゃないから。お怒りを収めてください・・・」

「けど。今夜は月が出でいるから負ける気はないけどね」

 ジャンヌは狩る目をする。

「それはどうかしら。過信もよくないわよ」

 壊れた家からタランチュラが現れ、ジャンヌとレオンを囲まれていく。

 不適な笑みを見せた魔女は、「やれ」の一言でタランチュラたちを襲いにかける。

 タランチュラたちは、鋭い糸を吐き、突進といった攻撃だった。

 ジャンヌは、ロザリオに光の刃でタランチュラや糸を切っていく。

レオンも詩い、土の槍でタランチュラを突き刺す。

 タランチュラをいくら切っても減る様子もなかった。魔女に向かおうにもタランチュラが邪魔してくる。

 そんな中、レオンのエルフの詩が止まった。

 レオンに視線を向ければ、レオンの口を糸で絡めている。

 精霊術を塞がれた。

糸がレオンの体を絡みつかれ、引っ張られる。レオンは、魔女の胸の中に包まれるように抱く。

「つかま~えた~」

 魔女は、不気味な笑顔を見せる。

「もう!兄弟揃って!」

 アキセも魔女に捕まっているが、やはり兄弟なのか体質も似ているようだ。

 ジャンヌは、レオンの元に駆け寄ろうとしたが、後ろから攻撃され、地面に倒れる。立ち上がろうにも、地面に張りつけるように背中に糸を付けられ、体の自由を奪う。四方八方にタランチュラたちが吐き出された糸に埋もれていく。

 視界が真っ白に染まる。徐々に空気が苦しくなる。ロザリオに光の刃を作り、糸を切り払う。

 ジャンヌはようやく自由を得られた。

 顔を上げれば、周囲は誰もいなかった。

 舌打ちをする。

ジャンヌが、白い炎で糸を燃やしている内に魔女はレオンを連れて逃げたのだろう。

「あの魔女。ぶっ潰す!」

 地面を引っかくほど怒りを込めた。

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