狼の取り替え③
どうすれば。バレたら、確実にボコられる。
スピカの中にいるアキセは思う。それに『光』を扱う聖獣だからか、妙に苦しい。
「スピカ~動こうよ~」
アタランテが動かそうとするが、絶対に動かない。岩のように固める。
「スピカが動かない・・・」
「ん~本当なら連れていきたいんだけどね」
「仕方がない」
イルが詩う。
スピカの周りに風が包みこまれる。精霊術で運ぼうとするのか。そうはさせるが。アキセは飛び出し、カブっとイルの頭を噛む。
「イタタタタ!」
「イル!」
「スピカ!」
意地でも離さない。
「はな!」
イルが口を掴み、外そうとするので、さらに噛みつく。
「イッタ!」
「血!出でる!」
「スピカ!もうやめて!」
匂いがした。
獣の臭さと人の匂い。もしかしたら入れ替わったアーノルドかスピカかもしれない。
イルの頭から離れ、イルの背中を押して飛び出す。
「うわ!」
イルが倒れ、ジャンヌはイルに潰れる。
「先輩!」
「あ!すまん!」
イルがすぐに起きあがる。
「私よりもイルの方が。頭から血が」
スピカに噛まれたことでイルの頭から血が流れる。
「こんなの軽いもんだ」
イルは軽く返す。
「魔族は丈夫だから、これくらいは平気だ」
「ならいいんだけど・・・」
「イルさんを噛みつくなんて・・・」
アタランテが落ち込む。いつものスピカはイルに対して攻撃的ではない。
「大丈夫。スピカは元に戻るよ」
「はい・・・」
その時、イルの顔が変わった。
「どうしたの?」
「何かが近づく」
「もしかしてスピカもそれに気づいて」
「追いかけるぞ!」




