メダルビースト 前半③
メタルビーストたちに連行される。
ジャンヌはロザリオを取り上げられ、手錠をつけられる。
バーストイーグルは、ハクトウワシのまま、体に鉄の塊から出る光線に巻かれ、サソリのメダルビーストに運ばれる。
止まったと思えば、大きい岩の前だと思えば、岩が上がる。
岩を見せかけた扉のようだ。岩が上がり切れば、また洞窟が続いていた。奥から何かが近づいてくる。
それは浮く円盤だった。
魔術で使った様子もない。どういう仕組みなのかも一目でわからない。
サイのメダルビーストに押される。
――これに乗るの
全員、円盤に乗れば、円盤の側面から薄い壁に包まれる。円盤が浮き、洞窟の奥へと飛んでいく。洞窟の先が明るい。洞窟を抜けきれば、今まで見たことがない町だった。
暗い洞窟のはずが、昼のように明るかった。円柱のような建物。長い円柱がいくつも繋がっている。現在の技術でできるとは思えない建物ばかりだった。
別の世界に来てしまったような感覚だった。
どこに運ばれるかと思えば、中央に大きい円柱の建物があった。上部に入口が開き、その中へと入っていく。
部屋の前に着く。
「ギルバーアトラス様。連れて参りました」
サソリのメダルビーストが言う。
「入れ」
扉が左右に引き、部屋に入る。
見晴らしのいい大きい窓に広い部屋だった。その部屋に人より少し大きめの赤いドラゴンがいた。
「ドラゴン?」
「これは失礼」
人型へと変化する。
頭部が左腕になり、手足が伸び、顔をだした。天井まで届きそうなほどに大きかった。
「はじめまして。聖女様。私、ギルバーアトラスと申します」
「あなたが・・・」
バーストイーグルが言っていたメダルビーストが目の前にいる。
「あなたと話したく、ここまでのご無礼をお許しくださいませ」
サイのメタルビーストが手錠を外し、ロザリオも返した。信用を得たいためか、警戒を解かせるためなのか。油断はできない。
「そんなに警戒しなくても殺すつもりはございませんので」
だとしても魔女と退治させるのは目に見えてる。
「ギルバーアトラス様」
ギルバーアトラスが視線をサソリのメタルビーストに向ける。
「バーストイーグルはどうしますか」
サソリのメタルビーストがバーストイーグルを持ち上げる。
「そいつも・・・」
「同席させて」
視線が一斉に向けられる。
「同席させないとあなたの話は聞かない」
ジャンヌはギルバーアトラスに力強く視線を向ける。
バーストイーグルがこの後何されるかわからない。ただ悪い方向になるのは間違いない。目が届く範囲なら彼に何もさせないはず。ギルバーアトラスが信用を少しでも得るためにこの要求は乗る。
「いいでしょ。ただし変身解除はしません」
「分かった」
拘束具は外され、バーストイーグルを突き飛ばされる。
バーストイーグルに駆け付け、「大丈夫?」と声かける。
「はい・・・」
バーストイーグルは人型へと変身はできないが、異常はないようだ。
「さて」
床から椅子が伸びる。ギルバーアトラスは傲慢に椅子に座る。
「話をどこまで訊いていたのでしょうか」
話を訊いた前提で訊いている。下手に嘘をつかない方がいいか。それにジャイルレイカーの安否も確認したい。慎重に聴く。
「そうね。魔女のことも、あなたがみんなに嫌われているってことは分かっている」
「はっきり言いますね」
ギルバーアトラスが苦笑する。
「この国の事情をそこのワシから聞いたとお見受けします。そうですね。これは我々の戦いだ。聖女様を巻き込ませたくない。魔女を退治してくだされば、解放してあげます」
魔女しか関わらないのは分かり切っているか。
「魔女を退治してくれればいいの」
「はい」
「そうね。私。ただ働きって嫌いなの。だからこっちも条件つけたい」
「なんでしょうか」
「私。ジャイルレイカーに興味があるの。だから会いたくなった」
おそらくジャイルレイカーは生きている。
死んでいたら、混乱させるために知らせるはず。それがないとしたら、他に生かす理由がある。
「私を呼びましたか」
部屋に入ってきたのは、人型に変身しているメダルビーストだった。大きさもギルバーアトラスと同じくらいだった。体の部分を見てゴリラのメダルビーストだろう。
「ジャイルレイカー様・・・」
バーストイーグルが一番に反応した。
「あなたがですか・・・」
「ジャイルレイカーと申します」
捕えているはずのジャイルレイカーがここにいる。
「実は、長く話をした結果、ジャイルレイカーは賛同してくれたんです。これから発表しようと思っていたところです」
「嘘だ!」
バーストイーグルは叫ぶ。
「おまえが洗脳しただろうが!」
「何を言うんだ。これは彼の意思だ。司令官の意思は尊重するべきだ」
「違う・・・あなたが賛同するはずがない・・・」
バーストイーグルは絶望する。
「これでジャイルレイカーに会いましたが、条件はそれだけですか」
ギルバーアトラスは言う。
生きているから洗脳される場合も考えていた。だから、「いいえ。他にあるわよ」と返す。




