海の仕置人②
きんにい?
「あ」
男が起きた。
「お。アマビエか」
アマビエ。どこかで聞いたような。
起き上がった男と目が合う。
「誰かと思えば、この間の聖女じゃないか」
覚えていたか。
「きんにい。知り合いだったの?」
アマビエが首をかしげる。
「一回会っただけだよ」
「え?兄妹?」
「血は繋がってはいないけど。まあ、呼ばれてるだけだよ」
――よかった。あの魔女からどうやってこんな子供を産んだのが疑いたくなった。
「そういえば、ちゃんと名乗ってなかったな。俺。キンタロウだ」
「私はアマビエといいます」
「名乗らないとダメ?」
面倒な者に目をつけられているから、名乗るのに抵抗する。これ以上覚えられたくない。
「いいだろ。名前訊くくらい」
「は~ジャンヌよ」
「よろしく」
陽気に言うキンタロウ。
「で。なんでジャンヌはアマビエと一緒に」
いきなり馴れ馴れしいな。
「私が追われていた時に助けてくれたの」
「そうか。それは助かったよ」
「どういたしまして。そんなにストーカーに追われているの」
「まあな。だから、俺が避難先になっているんだ」
――あの魔女がいるとな。
セツコはイケメンには目がないから、逆に襲ってくる。目に浮かぶ。
「じゃあ、なんで離れたのよ」
防衛が高そうな家でわざわざ離れる。
「ずっとは申し訳ないと思って、住まいを探していましたが、ことごとくすぐに見つかって・・・」
いろいろと苦労しているようだ。
「それにトリトンに目をつけられたみたいで・・・」
「厄介なのに目をつけられたな」
キンタロウが頭をかく。
「トリトンって?」
「魔女と契約して強くなった人間だったかな。しかも女癖が悪くて、最終的には女を手下に相手させるとか。暴力を振るうとか」
普通に最低な男だ。
「確か対価で地上に上がれなかったからな」
「だから地上に」
「うん」
アマビエは頷く。
「分かった。しばらく山にいろ」
「ありがとう」
「また母ちゃん。寂しがっているからよ」
「うん!」
アマビエは嬉しそうに大きく頷く。
あとはキンタロウが面倒を見るだろう。任せて去るか。
「じゃあ、私はこれで」
「なんだよ~せっかくだから一晩くらいは泊めてやるからよ。アマビエをここまで連れてくれたお礼にさ」
何を言い出すかと思えば。
「あんたの親が怒らない」
セツコを殺そうとしたんだけど。
「今は出かけているんだ。1週間は帰ってこないよ」
これ以上言っても引き留められそうだ。
「少しくらいなら」
「アマビエも聖女と仲良くしたらいいぞ」
「うん」




