トランクケースを持つ女③
「二人で話をしたかったので、離したつもりが、まさか戻ってくるとは。どういう仕掛けでしょうか」
女は首をかしげる。
「うるさい」
よく見れば、頭上に浮いているトランクケースの口から銃口を向けている。これも魔術の一種だろうか。
「一応警告はしたんですけど」
「私は別よ」
魔女案件。たぶん。
「まさか、この男の警護を受けているんですか」
「もっと違う。私。魔女しか相手しないから、その男はご勝手に」
「おい!見捨てるな!」
スティーブが声を上げるが、石突きの針が首に向ける。
魔女を仕立てて戦わせるのが最も嫌だから、見捨てても問題ない。
「魔女?やはりあなたは聖女ですか」
「やはりって、もう会った時から分かっていたのね」
「ええ。私・・・」
その時、一つの容器が現れる。容器が爆発し、発光が起きる。目を眩むほどの眩しさ。思わず腕で目を隠す。
今度はガラスが割れる音がした。光が止めば、女とトランクケースは消えていた。
「なんだ。逃げたのか」
いつの間にかアキセが戻ってきた。
「来るのが遅いぞ」
スティーブが少し怒って言う。
「すみませんって」
アキセは誠意がなく、軽く謝る。
「で。魔女だったのか?」と問いに対して、「やめる!」と思いっきり返した。




