花桜の魔女⑦
頭を失ったサクヤの体が倒れる。
イーグスが拘束していた枝がしおれる。
奥に銃を構えていたアキセが姿を見せる。
「ジャンヌ!作戦が違うぞ!」
「う」
体だけになっても消えない。完全に倒していない。その証拠に首の上から桜の花びらが集まっていく。
その時、狼と羽をもった腕で鋭い爪と大きい足を持つ鳥の獣、さらにタテガミをもったオオネコ、桜で密集した体をした獣が迫ってくる。
「こいつらは使い魔じゃないのか」
使い魔は魔女の一部から生まれる。喪失していれば、使い魔は使えなくなる。
花の魔獣は、従者といったところか。
ジャンヌはすかさずマイルズを掴み、ブランシェの元へと投げる。
「おい!」
「おっと。お二人さんはこっち」
光の穴からチェシャが現れ、マイルズとブランシェを掴む。
「「うわ!」」
光の穴へと消えた。
魔女の空間の外へと出した。
――よし
イーグスとアキセは、花の魔獣と戦っている。
後は、チェシャが戻ってくるまで時間を稼ぐ。
アキセは銃から炎の球を放ち、桜の獣と戦っている。イーグスも赤い剣を振り回し、桜の獣と対抗している。
二人が相手している内に逃げる。
――こいつらを置いて。
アキセは銃で火が散弾に散り、的確に花の獣を燃やす。
イーグスは赤い刃を無数に飛ばし、的確に花の獣を刺し、散っていく。
目に見えない速さでアキセとイーグスに両腕をがっちり捕まる。
「ちょ!おまえら!」
「忘れていませんか」
「俺を置いていこうとしただろ」
「おまえらはいらん!」
察しがいい。
「仕方がないっすね」とチェシャの声。
床から光の穴が広がる。
そのまま落ちていき、魔女の空間から出られる。 と思いきや目の前に尾が迫り、ジャンヌとイーグスを払われる。アキセはそのまま穴の中へと入り、光の穴が消えてしまった。
チェシャが閉じたわけではない。
「よくも私の顔を!」
顔が半分回復し、片目で鋭くにらみつけるサクヤ。
「犯人は先に逃げたわ!」
また時間を稼ぐしかない。
ロザリオを構える。
「逃がしません!」
顔を完全に回復したサクヤは、袖から桜色の剣を引き抜く。
距離を詰められ、剣撃が続く。刀のぶつかり合いが響く。
距離を取り、ロザリオで白い炎の波を放つ。サクヤの前に桜が集まり、桜の壁を作り、白い炎を防ぐ。サクヤが飛び出し、桜色の剣を横に払う。ジャンヌはロザリオで受け止める。
腹に蹴りが入る。背後に飛ばされるも、今度は横から何かに押しされる。
態勢を取る。顔を上げれば、イーグスの腹に太い枝が貫通していた。




