黒い馬④
ユビワは黒い馬を見失う。
「見失っちゃった」
後は相手の居場所を探せる『探しモノ地図』を使うしかない。すぐに『探しモノ地図』を召喚しようとした時だった。
急に体が鎖に絡める。
「え?」
「うわ!」と鎖に引っ張られ、木に押し付けられる。よく見れば、陣が浮かんでいる。しかもよく知っている。
これは魔力を封じる魔術。魔術が使えなくなった。
目の間にはアキセが銃を構えていた。
「ニセモノですね!」
契約しているから判断ができる。目の前にいるのはニセモノだということを。
「おお~捕まえた」
無表情だったアキセが声を出す。
「偽装人形を使ってますね」
コルンの発明品『偽装人形』。
口しかない丸い頭と小さい体。柔らかい触感の不気味な人形で、体の一部を人形に食べさせ、その体の情報を元に模倣した体を作る。年齢も調整ができる。人形の脳を握るだけで想い通りに動かし、話したい言葉も考えるだけで言葉を話せる。
今回は魔術を加えて、視覚、聴覚を共有し、声までも出しているようだ。
「やっぱ道具を管理してあるだけあるな」
「人形を使っているということは、まさかあの黒い馬を襲っているんですか!」
「本当に頭が回るな」
今すぐに転送して逃げなくては。
「おっと」
アキセは指飾りで描いた記号を投げる。記号に触れた途端にユビワの体が動けなくなる。
「な!」
「転送しても無駄だ。来るまで大人しくするんだな」
「う・・・」
「あとおまえ。魔力を宿ったな」
バレている。顔に出してはいけない。
「推測にもほどがあります!」
「とぼけるな。魔力をうまく使えないんだろ。コルンがいた時にすぐに指輪に戻ったはずだ」
「そこまで・・・」
「大丈夫。帰ってきたら指輪に戻してやるから。大人くしろ」
イラつかせるほどにアキセは余裕の笑みを見せる。
マズイ。魔力をバレてしまった。アキセの奪う魔力で魔力を奪いとるつもりだ。おそらく人になるのを待っていたんだろう。
早く逃げださなければと思った矢先だった。
物音がする。




