抜歯の魔女④
なんでこんなことに。
アキセは、急にイーグスとウィムに襲われた。
一度逃げ切れたか、指輪を奪われた。どうやって取り戻すか考えていた矢先にこれ。
ジャンヌが目の前の魔女と組み、魔女に引き渡された。しかもイーグスと間違われている。
ジャンヌが見間違えているということは、魔術ではなくコルンの発明品を使った。つまりイーグスとウィムが襲ったのは、身代わりにさせるためだということ。
完璧に罠にはまった。
今すぐにやり返したいが、体が全く動けない。
椅子にしばりつけ、開口具で口を無理やり開けられている。
「どこにいったかな~」
魔女は箱の中をあさっている。
「見つけた!」
――大きいベンチだった~
「よ~し。全部抜いちゃうぞ!」
まさか、歯を。
ルンルンとハイテンションな魔女はベンチをむき出す。
こんなところで歯を抜かれてしまうのか。しかもこんな醜態で。残りの人生を歯がないとは、いろいろと決まらない。
その時魔女の動きが止まった。
「誰よ!」
おそらく効力が切れたようだ。
「なんで白の吸血鬼じゃないの。欲しかったのに」
そのまま諦めて。
「ん~あとで吟味して歯を抜こう」
やっぱり魔女は見逃してくれない。
「もう~あの聖女をまた探さなきゃいけないの」
ペンチを箱の中へと投げ、魔女は消える。
この隙に逃げる。絶対に逃げてやる。
「あら~そんなに大きく口を開けてどうしたの?」と何こともなかったように風鳴の魔女ウィム・シルフがひょこっと目の前に現れる。
「ふががが!(ウィム。てめえ!)」
「虫歯あるの。その年で。残りの人生が入れ歯か銀歯になるのね」
「ふが!(てめえも歯を引き抜いてやる!)」
「今ね。面白いことになっているの。どうする?」




