蛙恋の魔女②
まさか、キス魔になるとは思わなかった。しかも『光』を注がれながら。危うく内臓溶かされるところだった。
いまだにけだるさ。体内が溶かされているようで気持ち悪さで本調子ではなかった。
アキセは魔女の血が半分流れている。いくら『光』の抗体を持っているとはいえ、直接体内に『光』を入れられては、体が応える。
この状態でジャンヌに会えば、確実に殺される。しばらくは大人しくしようと思った矢先時だった。足に何かに触られている。
「なんだ?」
下を向けば、カエルが足にべたべたと触っている。
「なんだ。カエルか」と足を振り、カエルを飛ばす。
「さてと」と思いきや、カエルがまた足にべたべたと触っている。
「早!」と思いっきり足でカエルを遠くに飛ばす。
「これで・・・」と思ってもまだ足にカエルがべたべたと触っている。
――なんで、一文で帰ってくるんだ。このカエルは!
「しつこいぞ!」とカエルに怒鳴りつけた時だった。
目の前に浮いていた泡に触れてしまう。
気が付けば、周囲の木が大きく見える。なぜ、服が散らばっている。
手を上げれば、カエルの手になっている。
「え?なにこれ・・・」
顔を触れば、なせか粘ついている。体も緑色にカエルのような体。
「まさか・・・カエルになっているううううううううううううううう」
アキセはカエルになってしまった。
なぜ、カエルに。
確か泡に触れてからだ。これはどう考えても魔女の『タタリ』にかかってしまった。
近くに魔女がいる。逃げなくては。
それに指輪はどこにいった。契約しているから、すぐには見つかるが。見つけたとしても魔術が使えるのか怪しい。
とりあえず指輪を探そうとした時だった。
木の陰で様子を伺っているカエルがいた。そのカエルは足にべたついていたあのカエルだった。
――あの蛙め
カエルは目と合い、急に顔色が変わり、逃げ出す。
「待て!コラ!」と追いかけるにも、跳んでいるだけで速くもない。それに恥ずかしい。こんな姿を知人に知られたくない。特にジャンヌに。ジャンヌの反応が目に見える。
このままでは追い付かないので、力を込め、思いっきりジャンプをし、カエルの上に乗る。
捕まえた。
「おい!おまえのせいで!」
「離せ!」
この声。とても聞いたことのある声。
「おまえ・・・コゼットか?」
「俺はレオンだ!あ!」
レオンだった。夜輝の魔女リリス・ライラ・ウィッチャーの子供で、エルフの血が流れているリリムでアキセの兄弟に当たる。
「おまええええええええええええ!」
さらに怒りが増し、レオンの首を絞める。
「どういうつもりだ!」
「うるさい!日頃の仕返しだ!」
レオンは反抗する。
「恨みあるにしてもカエルに変えさせるな!」
「俺が変えさせたんじゃねえよ!」
その時だった。
なぜか体が浮いた。
「なんだ?」
顔を上げれば、人の膝までの大きさの赤いマントをつけたカエルに掴まれていた。
「ケロケロ(みつけたケロ)」
マントカエルが見つめる。
「うわ!離せ!」
ジタバタ暴れても、びくともせず、マントカエルが懐から取り出した鳥かごに入れられる。
「ケロケロ(おいおい、いっぴきのがすなけろ)」
向こうからもう一匹のマントカエルが現れ、片手にはレオンの足を掴み、逆さにぶら下がっている。
いつの間に逃げた。
レオンも鳥かごに入れられる。
「おまえ、俺をカエルにさせおいて逃げやがったな」
「ちっ!」
レオンは舌打ちして返す。
「俺をカエルにした罰だな」
「捕まっているくせに意気がるな!」
鳥かごが大きく揺れる。
マントカエルは跳ぶことはなく、歩いていく。
「やべ、連れてかれる」
「まさかとは思うけど・・・」
「魔女に」
予想しすぎて驚かない。




