タタリ解放戦①
「アリス様。あの者にどんなタタリをかけたのですか」
アリスの執事であるグレオが話かける。
「気になる」
「ええ」
「それはね」とアリスはいたずらな笑みを見せる。
イーグスはアリスから解放され、森の中にいた。
だか、アリスからどんなタタリをかけられたのかは教えてくれなかった。
ジャンヌの血を吸わなければ、発動はしない。それでもタタリは把握しておきたい。今後のためにも。それに解放するためにも。
内容を知っているジャンヌに尋ねなければならない。さっそく探そうとした時だった。
急に足元が光る。見たことがある。それは魔術が使う陣だった。陣から鎖が伸び、体を絡める。
いつの間に。
「よう」
声をした方へと顔を上げる。
「久しぶりだな」
アキセが見下ろしていた。
朱薇の魔女アリス・キテラとガーデンハウスにいた時だった。
アキセは手足が縄で縛られ、椅子に座らせる。指輪はアリスの手に渡っているから、逃げるにしても魔力しかない。魔力だけではアリスに勝てるとは思えない。
「おや。逃げようとしているんですか」とアキセの上にチェシャが乗る。
察しがいいのか、タイミングよく現れる。
「乗るな」
「え~なんで~」とチェシャがお尻をすりすりと頭をこする。
このやろ。
「あなたの性格上、おとなしくするつもりもないから、この手段になったのよ」
アリスは一枚のクッキーを食べる。
「あなたに私のお願いを受けてくれるかしら」
「は?」
「今、二人の仕事が終わった後でね。ジャンヌのお願いでシロちゃんにタタリをかけるつもり。彼女の血を吸ったら発動するように」
「え?何それ見たい!」
一番に反応してしまった。
「まあ。別荘を片付けてからだから、1週間くらいはなるかな。その後ならいじってもいいわよ。ただしその間までジャンヌには手を出さないこと」
「おい。待った。もしかしてそのタタリを教えないつもりか」
「ここで教えたとしても面白味が減ると思うけど」
「ん~」
一理ある。
「だから、あなたにお願いをしているのよ。シロちゃんが出る前にジャンヌから訊くつもりでしょ。手段はだいだい予想つくけど」
アリスはカップを口につける。
「だったら、ジャンヌにタタリの内容を訊かなければいいだろ」
「器用なことできないでしょ」
アリスにじろっと見つめられる。
「いくらリリムだとしても、1週間くらいなら我慢できるでしょ」
「俺の正体までお分かりで」
「ええ。リリスの子供で女を垂れまわす男ってことに」
魔女の情報伝達はどうなっているんだ。
「リリスの血縁と話すだけでも嫌だわ。だから、一人減っただけでも気にしない」とアリスが軽く手を振った途端に、アキセの横に何かが通った。
「簡単なことだからやりなさいよ」
アリスは笑顔で言う。
「これをあげるから」
アリスの手に赤い血の入った瓶だった。
その後、二人の仕事が終わったとアリスが言うから、体を縛られたまま返された。
ジャンヌにタタリのことを訊かなければ、接触しても問題ないと思った矢先で、チェシャに見つかる。
「見てるよ~」
いつの間にチェシャがいたが、すぐに消えた。
だめだ。監視されている。
というわけでジャンヌと会わずに1週間経ってしまった。




