10月31日④
金髪で紫の目。黒い三角帽子。黒いワンピース。長い黒の手袋。ブーツ。片足は黒と黄色の縞模様だった。黒いマントをなびかせる魔女だった。
「まさか、あんなランタンに変装していたとはね」
「サプライズはあった方が盛り上がるでしょ」
「そうね!」
ジャンヌは、白い炎の球をサリーナに向けて放つ。
サリーナは、後ろへ一回転してかわす。
「ちょっと、失礼じゃないの」
サリーナは腰に手を付け、文句を言う。
「よくも見世物にしやがったな」とドスの入った声で言う。
「面白かったでしょ」
「まあな」
ゴツ。
アキセが返したので、殴った。
「面白くない」
「それにさっき、私を投げたでしょ」
アキセにランプを投げていた。あれが魔女とは誰だって思わない。
「あれ、結構痛かったんだけど」
サリーナはジャンヌを見下ろす。
「いい投擲があったもので」
嫌味に返す。
「それに主催者なら終わらせるのも仕事でしょう」
ジャンヌは、サリーナをにらみつける。
「くふふふ。祭りはこれからでしょ!」
サリーナは、ランタンを先にぶら下がっているホウキを出す。
「トリック・オア・トリート!」
箒を振るい、ランタンから火の玉を飛ばす。
ジャンヌは白い炎を横に振るい、炎の壁を作る。火の玉は、白い火の壁にぶつかり、『光』の浄化により蒸発するように消える。
白い炎の壁を越え、ランタンのような獣がジャンヌに襲い掛かる。そのまま地面に倒れる。ジャンヌは手でランタンの獣を抑える。
よく見れば、グローブが口で、口の中に火が燃えている。黒い手足が伸び、今でも引っかいてくる。
アキセは横からランタンの獣を足で蹴り飛ばす。
ジャンヌはすかさず、白い炎をランタンの獣に向かって放つ。
ランタンの獣は白い炎に包まれ、炎と共に消える。
「とりあえずご無事で」
アキセが手を伸ばすが、ジャンヌは無視して立ち上がる。
周囲を見れば、いつの間にか町人たちに囲まれている。手には鍬やオノを持っていた。
「町人は、普通の人間だからね。朝日が昇る前に私を殺さないとこの町とともに魂を奪って消えるからね。頑張ってきてね」
サリーナは、黒マントで体を包み、そのまま消えていった。
「待て!逃げるな!」
ジャンヌは追いかけようとしたが、町人に囲まれていた。
これ以上時間をかけたくない。
「はあ~しゃあ~ねえ」
アキセが銀色の銃を上に向ける。
銃は魔術を発動する杖の一種。魔術を使うようだ。
アキセは上へ撃ち、弾がはじけ、四方八方に飛び散る。雨のように降り、町人に当たる。当たった町人は、それっきり動かなくなった。
「あんた。何をしたの?」
「弾に当たった者は一時的に止まる術だよ・・・あ」
ジャンヌは一発殴る。