蜜鳥の魔女④ 挿絵あり
アキセが気絶している内に指輪を取ろうとしたが、指輪がなかった。もしかしたら、あの女が盗んだかもしれない。あの女を探さなくてはと思った矢先にアキセは消えた。アキセも指輪を探しに行ったんだろう。
レオンの精霊術を使ってアキセを探していた。指輪の行方を知っているのがアキセだからだ。
レオンの精霊術で4つの石を動かしている。以前も使われた術だった。一つは動かず、一つの石が二つの石を追いかけている。
「え~と、魔女3人に一人」
「魔女が3人?」
「ウィムにさっきの女。知らない魔女」
一度に3人も魔女が出るなんて。しかもさっき助けた女は、魔女だったのか。それにウィムも絡んでいる。ジャンヌがいれば、周囲に『光』が放ってウィムには聞こえないはず。
「知らない魔女がさっきの女とガルムを追いかけてる」
「じゃあ、ウィムは高みの見物ってところね。誰か指輪を持ってるか分かる?」
「指輪はウィムが持っているみたい」
「ウィムか」
だったら。
「離してください!気色悪い!」
アキセは魔女姿のアニエスに抱き着きながら森の中を逃げている。
戦えなくてもアニエスは空を飛べる。
「さすがに杖一本で戦えないって!」
「指輪のないあなたに用はありません!」
その時、木から黄色の液体が飛び出す。アニエスは咄嗟に空へと上がる。それでも黄色の液体が伸びていく。
アキセは杖で記号を描き、黄色の液体に向けて投げる。記号が弾け、黄色の液体は凍っていく。それでも後から黄色の液体が木から伸びていく。
「やっぱ無理か」
「だったら離れてください!」
「いやさすがにこの高さは死ぬから!」
その時、桃色の花が吹雪く。周りが見えなくなった。この花は攪乱するために放しただろうか。思惑に気付いた時には遅く、黄色の液体が体にへばりつく。払おうにも払えない。アニエスにも黄色の液体がへばりつき、そのまま森へと引っ張られる。
「これ・・・樹液か」
体中についた樹液で動けない。それにしても。
アニエスも体中に樹液が粘りついている。思わずたってしまう。
「こういうのは、別でやってほしかったけど」
アニエスと目が合う。
「あなたって言う人は!」
「大したことはなかったわね」
別の女の声。
黄緑色の長い髪。桃色の瞳。淡い桃色の花の羽を6枚。桃色のドレスを着た女だった。
「蜜鳥の魔女ハミング・ビアリング・バードの羽を奪おうとしたって」
ハミングは見下ろす。
「私を殺しても、エリニュス様が見つけた以上、あなたを追いかけます」
「だからといって、あなたを見逃す理由にはならない」
その時だった。




