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魔女狩り聖女ジャンヌ・ダルク サイドストーリー篇  作者: 白崎詩葉


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豪火の魔女③

 ジャンヌは、家の裏にある森の中に走り、息が上がったところで足を止める。

「あれ・・・いない?」

 振り返っても変質者のアキセはいなかった。

「あきらめたのかしら・・・」

 安堵の溜息を吐き、前向くと、木の上からアキセが落ちてきた。

「きゃあ!」

「お、なんてかわいい声だ」

 逃げ出そうとしたが、「待てよ」とアキセがジャンヌの腕を掴む。

「ちょっと、遊んでもいいんじゃないのか」

「離して!」

 ジャンヌは手を大きく振って抵抗する。


 可愛く怯えるジャンヌを見てアキセは思った。

 はあ~かわいいな。これはもうお目にかかれないと思うとなあ~やっぱりこのままにしようか。


 離してくれない。

 何なの。この人。さっきから鳥肌が立っているのはなんだろうか。

 ジャンヌの疑問を抱いた時だった。

「あいたー」

 アキセの額に石が当たり、抜けたような声を上げる。その衝動でジャンヌの腕から離れる。

 誰が投げたのだろうと後ろに振り替えると、トールがいた。

「彼女から離れろ!この変質者!」

「トールさん!」

 ジャンヌは、トールの元へと走る。

「大丈夫ですか」

「はい」

「よかった。家に着いたら、ジャンヌさんが外に出たのを見たから、すぐに追いかけたんだ」

 トールは安心したのが、笑みを見せる。奥にいるアキセに視線を向ける。

「おまえ、一体なんなんだ!ずっと彼女を追いかけて」

 トールはアキセに言う。

「何これ、俺完全に悪役みたいな立ち位置じゃないのか・・・」

 訳の分からないことを言いながらアキセは石が当たった頭を摩っていた。

「え、関係、そりゃ。一言では言えない関係というか・・・」

 アキセは考え込んでいる。

「やっぱり、変質者か!」

「だから、そこらの犯罪者と一緒にするな!そいつはな。聖女なんだよ!」

「聖女?」

 トールが首をかしげる。

 ジャンヌはその言葉に何かが引っかかる。

「そうだよ。今はかわいらしい女だが、本性は、口が汚く、男勝り、バカ力でかわいげがない女なんだ。まあ、そういう強い女が落としがいあるんだよなって!」

 ゴツっ!

 気が付いたら、頭くらいの大きさの石をアキセに向かって投げ、アキセの顔に当たり、倒れていた。

 妙なイラ立ちと殺気たって、つい投げた感じがした。

「ジャンヌさん・・・?」

 突然の行動に驚いたのか、トールがジャンヌに声をかける。

「あれ、私がやりました?」

 トールは、小さく頷く。

「まあ…あ!今倒れている内に離れるよ。ジャンヌさん!」

 トールとその場から離れようとした時だった。

「あら、こんなところにいたの、聖女様」

 女の声が響く。

 声を向いた先に木の枝に座っている女だった。

 茶髪の赤い目。腕から長い袖が垂れている。2枚の長い布を肩に下げ、腰の布で留めている。橙色のドレス。頭にはバンダナを巻いている。

「まだ決着つけていないんですけど」

 女は見下ろす。

「何を言って…」

 女の言っていることが理解できない。ただ分かっていることは、人間でないことは理解できた。

「トールさん。気をつけて、あの人。人間じゃない」

「え?人間じゃないって・・・もしかして…魔女?」

「おそらく」

 なぜだろうか。覚えのある感覚だった。

「ねえ、聴いてる?」

 女が声をかける。

「忘れていたとは言わせないわよ。ほんとあの時はひどい目にあったわ。そのおかげで回復するまでに時間がかかった」

 女は、ジャンヌをにらみつける。

 その時だった。

 赤い光が女に向かってぶつかる。煙が上げ、見えなくなっていた。

 ジャンヌの手に誰かが握ってくる。

 トールかと思ったが、先ほど倒れていたアキセだった。 

「走るぞ!」

「え?」

「あいつは魔女だ!逃げるぞ!」

 アキセはジャンヌを引っ張りながら走り出す。

「おい!」

 トールも走り出す。

 煙の隙間から、女は三日月のように笑っていた。



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