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魔女狩り聖女ジャンヌ・ダルク サイドストーリー篇  作者: 白崎詩葉


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野獣の夜④

 ジャンヌとアキセは、オカマのユーベルが吸血鬼(ヴァンパイア)を片付けている間に逃げ出した。

 翌日森の中にいた。

ジャンヌは笑っていた。

「いつまで笑っているんだ?」

「あんたにも弱みがあるってことにしかもオカマだったてね~」

 アキセの弱点を知ってから、見るたびに笑ってしまう。

「そりゃ~誰だって苦手なモノはあるものさ。ジャンヌは水が苦手なようにね」

「私の場合は仕方がないもの。でもあんたの場合、適当な女と遊んだ結果、あのオカマと当たったところでしょう」

「ぎく」

「図星か」

呆れた目で見つめる。

「やるまでオカマなんて都市伝説でしか思ってなかった・・・」

アキセが珍しく青ざめた。

「いい女と思ってやったら、実は男でしかも技術があいつの方が上ってことに・・・思い出しただけで鳥肌が立つ・・・」

 どんなことされたのやら。

「あのオカマから逃げても、すぐに見つかって食われるし。逃げられたとしても夢の中にまで夜這いしてくるし」

 オカマの性欲も高いようで。

「眠れない時は他の女とやって気分転換したものだ」

――やっぱ、クズいはこいつ

 恐怖から逃れたいからって、性行為にする筋合いがない。

 リリスの血を引いているのか、淫魔体質で性格を持っていれば、そうなってしまうのか。

 いろいろと呆れ果てる。

「それで名前を変えて逃げきれたんだよな」

「え!そんな理由で!?」

 失敗した女から逃げるために名前を変えていたのか。

 それが理由だとしたら、ガルムからアキセになるまでに名前がいくつあることやら。

「まあ、どう見ても自業自得だから、同情なんてしないね」

とアキセから離れようとしたが、アキセの手が伸ばしてくるので、アキセの腕を掴む。

「何するつもりだったかな」

 枯渇を入れる

「慰めてほしいと」

「どさくさに紛れて、記憶を奪うつもりだろうが!」

 アキセの奪う魔力は、油断できない。

 『光』を奪えるほどの『光』の抗体を持っており、アンザムのように魔力までを奪えるほどの実力を持つ。

「何気に人の頭をいじるのはどうなのかな」

「いじるって人危機が悪いな。そんなことないって」

 悪意のある笑顔を見せるアキセ。

「オカマが弱点ってことを忘れさせる気じゃないでしょうね」

 鋭い目つきをし、アキセの腕を血管見えるほどに強く掴む。

「おや、察しがよろしいようで・・・てか痛いです・・・」

「こんないいネタをほっといて溜まるものか。それ以上やめないなら、その腕を切り脅すぞ」

 その時だった。

「見つけたわ!」

 ごく最近に聞いたことのある声。

 振り向けば、オリビアではなくユーベルがいた。

「この泥棒聖女が!」

 ユーベルが怒鳴る。

 腕を強く掴んでいたはずなのに、いつの間にかアキセがいなくなっていた。

 逃げたな。

「ガルム君が聖女と付き合ってるって聞いたから、吸血鬼(ヴァンパイア)の人間狩りを利用してガルム君の泥棒猫を殺害する計画がおじゃんになったわ~」

 おそらくユーベルは、風鳴(かざなり)の魔女ウィム・シルフが流した風の噂を訊いたのだろう。

「私がわざわざやりやすくしびれてさせようと毒持ったのに」

 毒を持った。

 つまり、あの時手を引っ張られた時か。おそらく小さな針で毒を注入したのだろう。

――このオカマが!

「昨日の作戦は失敗したけど、私反省したの。こんなことでは彼のハートを取れないって」

「取るつもりない」

「私決めたの。正々堂々と彼のハートを掴むって」

「だったらあげる」

「そうよ!あなたは私の恋のライバルよ!」

 ユーベルはジャンヌに指を指しながら宣言する。

「聞けや!人の話を!」

 この時どこかで落ちたような音をしたが、無視する。なぜか予想ができたからだ。

「ガルム君いや、アキセ君は私のものですからね!」

「嫌。あんな奴。好きにどうぞ」

「覚悟しなさい!」

「だから!人の話聞けよ!」

 無条件でやると言っているのに、なぜ、わざわざ競わせる。

「今度は負けないからね~」

 ユーベルは立ち去る。

「だ~か~ら。あいつは彼氏じゃないんだからあああああああああああああああ」

 向ける相手もいないにもかかわらず、ジャンヌは叫んでいた。



 数日後聞いた話では、吸血鬼(ヴァンパイア)がオカマに襲われたあの日。吸血鬼(ヴァンパイア)に恐怖を植え付けられたようで、「野獣の夜」と呼ばれ、吸血鬼(ヴァンパイア)の間で恐れられているそうだ。


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