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魔女狩り聖女ジャンヌ・ダルク サイドストーリー篇  作者: 白崎詩葉


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野獣の夜③

 狭い通路では戦いにくい。

 吸血鬼(ヴァンパイア)が一斉に襲われる前に、広いメインデッキに出る。

「貴様がいるとはな」

 そこにはアンザムが立っていた。

「何知り合い?」

「いたっけな・・・」

 アキセはわざと惚けたようにいう。

「ほう、覚えていないと・・・貴様が魔力を奪ったおかげで地位を失い、こんな下働きをする羽目になったんだぞ」

 アンザムの言葉の中に怒りを感じる。

 アキセの盗みの魔力は、相手の魔力や能力を奪える。以前その被害者に会っている。

「え。そうなの。下っ端への降等おめでとう」

 アキセは悪意に祝賀する。

「ほんと、あんた。敵は多いわね」

 ジャンヌは呆れた目でアキセを見つめる。

「まあ、俺も結構やってるからな。いちいち覚えてやれん」

「意地でも思い出させる」

 忘れたことに気が障ったアンザムは剣を抜き、突っ込む。

 距離を取るが、アンザムはアキセの方に向かい、アキセは魔術の杖の一つ銃で立ち向かっている。

 どうやらジャンヌの相手は下っ端の吸血鬼(ヴァンパイア)だった。

 一斉に赤い剣を構えた吸血鬼(ヴァンパイア)が襲ってくる。

 赤い剣で切りにかかってくるが、白い炎で遠慮なく吸血鬼(ヴァンパイア)を燃やしていく。

 やられた仕返しをしっかり返してやる。

 そんな中、帆の紐を掴みながら飛ぶ吸血鬼(ヴァンパイア)に蹴られる。

 転がるよう船の外へ滑っていく。

 ロザリオを上甲板に刺し、危機を回避する。

 危うく湖に落とされるところだった。

 この状態で襲われたらたまったものではない。早くメインデッキに戻らなければと思ったが、吸血鬼(ヴァンパイア)が襲って来ない。

 こんな好機を吸血鬼なら逃さないはずでは。

 その時、唸り声を上げていた。

 下っ端の吸血鬼がやられているようだ。

 高い声をしたと思ったら、野太い男の声がした。

 アキセやアンザムの声ではない。一体誰だろうか。

 体を大きく揺らし、思いっきり足を持ち上げた瞬間、ロザリオを十字架に戻し、上に上がり、メインデッキに戻る。

 そこには、いつの間にかいなくなったオリビアがアンザムを殴り飛ばしていたところだった。

――どういうこと?

 ジャンヌは首をかしげる。



 ジャンヌが船の外へ飛ばされた。

「あいつ!」

 視線を向いた瞬間、アンザムの回し蹴りで頭を蹴り、そのまま船床に伏せる。首を足で抑え、手に剣が刺す。

「ぐっ!」

 アンザムは見下ろしている。

「本当にその手が一番憎い」

 手を剣に刺さっては、奪う魔力が使えない。

 徐々に首を踏みつける。

「死ね」

 その時だった。

 突然の唸り声。

 視線を向けば、ジャンヌを下っ端の吸血鬼が倒れていた。顔にはキス跡があった。

「ガルムきゅ~ん!」

 高い声が響いた。

 その声でアキセは身を縮める。声をした方へ向けば、水色の長髪。黄色の瞳。ロングスカートとシャツとブラザーを着た女が立っていた。

「げ・・・ユーベル・・・」

 アキセは彼の名前を言った。

「私のアキセ君をいじめるなんて・・・」

 ユーベルは徐々に近づく。

「ひどいことす“ん”じゃね“え”ぞ!」

 男に近い口調でアンザムを殴り飛ばす。

 アンザムも驚いたのか目開いている。

「あれ?どうなっているの?これ?」

 ジャンヌの声がした。

 ジャンヌもようやく船上に登れたようだ。

「まさか・・・おまえ・・・オカマか・・・」

 アンザムが怯えながら言う。

 ユーベルはオカマだった。

 淫魔は3種類いる。異性と狙う一般の淫魔。特殊な欲情を持つ淫魔。そして、オカマ。

 男の淫魔の突然変異。同性と性行為するようになり、同性と体を磨くために、女も襲うという。現在はユーベルを含め5人もいるそうだ。

「あ~でも、よく見たら、イケメーン。食べかいがありそう」

 ユーベルは興奮したように声を高らかに言いながら、アンザムを見つめる。

「遊びましょう~」

 ユーベルは、陽気にいいながら、アンザムに向かう。

 こうなってしまってはもうアンザムたちは終わりだった。

 船上では、悲鳴が静寂だった夜に響いた。


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