第7話「初めての冒険」
「マルテ、まずいんじゃないかな……僕たちだけで、西の森に入るなんて……」
「大丈夫だよ。ここら辺の領地には、魔物なんていないって、おとうさま……お父さんも言ってるし。ちょっと様子を見るだけだから」
私は渋るルゥの手を引き、西に向かっている。
後ろには、いじめっ子三人も一緒だ。
「ありがとう、ありがとう……!! あの、ルゥ……この前のこと、ごめん……」
「え? いや、いいよ。もう……」
「あと、魔法使いの……お前、なんて名前なんだ?」
「私? マルテ! マルテ・サイトウ・タナカよ!」
「……変な名前だな。でもありがとう、マルテ」
「俺、ラズ!」
「俺はティビー!」
いじめっ子はリーダー格がゼドで、一番ちっこいのがラズ、ちょっと太ってるのがティビーか。一気に友達が増えて、なんだかうれしい。
近所の子供5人のパーティかぁ。ゲームみたいで楽しいな。
私は、”ミイス魔導物語”に書かれている冒険譚を思い出さずにはいられなかった。彼女も子供のころは、近所の友達を連れて、冒険に出かけたのだ。
さながら私はパーティのリーダーの魔法使い。そしてお供の賢者のルゥ。あとは見習い戦士が三人。……ちょっとバランス悪いかな?
私はうきうき、ルゥはびくびくしながら進んだ。
そしてついに、私たちはうっそうと茂る森にたどり着いた。
「ここが……西の森……」
ものすごく木が高い。森の中は、木々が日を遮り、薄暗かった。
「……本当に行くの?」
「行くよ! だって私たちは魔法使いなんだから!」
それに、私は本当は大人だしね。
そんなに不安がるなルゥ君。お姉さんに任せなさい。
「”光の精霊よ、顕現せよ”」
手の中にまばゆい光を放つ球が現れる。
それも、一度に6体呼び出した。これくらいは楽勝だ。
周囲を光の精霊が漂うと、ゼドたちがうわぁ、と歓声を上げた。
私たちは森に足を踏み入れた。
一気に緑の匂いが濃くなる。
全員で手をつないで、はぐれることのないように森を進んだ。
「……”風の精霊よ、顕現せよ”」
ある程度進んだところで、ルゥがなぜか風の精霊を呼び出した。
緑色の発光体が、複数周囲に散っていった。
「あれ? なんで風の精霊?」
「うん。この森は思ったよりも深そうだし、魔物はいなくても、危ない動物はいるかもしれないからね……」
「え、でも、風の精霊なんかじゃ……」
動物を追い払うなら、炎の精霊とかのほうがいいんじゃないだろうか。いや、火事になっちゃうかもしれないけど。
「マルテ、気付いてない? 風の精霊に意識を集中すると、周りの気配がすごくよくわかるんだ。風の精霊は音や匂いにとても敏感みたいだ」
え? そ、そうなの?
全然気づいてなかった……
「ルゥ、すげえ!」
「お前も魔法使えたんだな!」
はやし立てるゼドたち。ちょっと悔しい。
「え、えへへ……ゼドたちも、練習すれば使えるようになると思うよ」
むううう。
わ、私も風の精霊を呼び出そうかな……と、悶々としていたとき。
「マルテ、左のほう!」
ルゥが何かに気付いたように言った。
私はあわてて彼の示す方を見た。
「え、なに? 何も見えないけど?」
普通の茂みだ。怪しい物も動物もいない。
「一見して何もないけど、おかしな空気の流れがある……」
ルゥは私の手を離し、前に立って歩きだした。
彼の後を私とゼドたちが追う。
「……ここだ! ”炎の精霊よ、顕現せよ!”」
彼はうっそうと茂る蔦を、炎の精霊で焼き切った。
「こ、これは……」
私たちは息をのんだ。
そこには、地下へと延びる怪しげな洞穴があったのだ。




