表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

29/34

第29話「レベルアップ」

「最強の……魔法使い……?」


 ホルスを見た。

 彼は頷いた。


「あらゆる属性を使える君は、究極的には全ての魔法を封じることが出来る。魔法を極めた君に、勝てる魔法使いはいない」


 そうか。

 私は闇属性以外の魔法が使える。理論的には、闇属性以外の魔法使いに負けないということだ。


「マルテ君。これから毎日、放課後は僕と魔力錬成の練習をしよう。二人で練習すれば、そのギルギスタって人に対抗できる力が身につくかもしれない」


「う、うん!」


 ホルスとの修行が始まった。


「いいかい。僕は”炎の柱”を使おうと魔力を解き放つ。君は自分の魔力を使ってそれを抑え込み、自分の炎の精霊に変えて見せるんだ。いいね?」


 ホルスから魔力が放たれる。

 それほど多い量ではない。

 この魔法が成功したところで、私の腰ほどの高さの炎の柱しか出ないだろう。

 私はそれよりほんの少し多い魔力を解き放ち、ホルスの魔力を抑え込もうとした。


「マルテ君、まだ魔力の練りが甘い。その程度の意思の力では、僕の炎を抑え込むことは出来ないよ」


「ぐ、ぐうう……!!」


 予想以上の難しさだった。

 他人の魔力を制御するというのは……

 いつもは自由に形を変えられる魔力が、まるで金属の塊のように硬く感じた。

 私の努力も空しく、炎の柱は顕現した。


「マルテ君。最初はもうちょっと魔力を多めに使ってみよう。同じくらいの量で支配してしまうのがベターだが、最初は難しい。多めの量の方が、支配しやすいはずだ」


「わ、わかった!」


 今度はうんと多めに魔力を使ってみた。

 先程よりも、ホルスの魔力が柔らかい気がする。

 よし、あと少し……! 魔力で包んで、私の形に変えて……


「素晴らしい! それだよマルテ君!」


「で、出来た……!」


 私の手の中に、大きな炎の精霊があった。

 この精霊を構成する三分の一くらいは、ホルスの魔力だ。


「よし、今度は光の魔法でも試してみよう」


「はい!」


 修行は順調に進んだ。

 ホルスが使う光の魔法を押さえられるようになったら、次は風の魔法。

 それも出来たら、次は……


「待ってくれ。僕は炎と光と風しか使えない」


「あっ、そっかあ……じゃあ水と土は練習できないのかぁ……」


 その時、アルトに魔法を教えていた先輩が近づいてきた。


「じゃあ、水は私がやろっか。水と風はそこそこ得意なんだよ♪」


「あ、ありがとうございます!」


 彼女は四年生で、ミグという名前らしい。

 ショートカットの可愛いお姉さんといった感じだ。

 彼女の協力もあり、水属性を支配することもできた。


「土属性は俺だな。俺は土しか使えないんだけど、その分練度は高いぜ」


 彼も四年生。ミグと同じクラスで、ハインという名前らしい。

 すごい。先輩たちのおかげで、どんどん魔法が上手くなる。

 これまでの停滞が嘘のように上達していく。

 あはっ。魔法を憶えるの、楽しい……!!


「すごいな、マルテ君……あっという間に全属性を支配できるようになってしまった」


 ホルスが感嘆した。


「ま、まだまだ小さい魔法しか封じれませんけどね」


「出来るという感覚を掴むことが重要なんだよ。後は努力次第で、いくらでも伸びていくはずだ。じゃあ、次は逆のことをやってみよう。僕が君の魔法を封じようとするから、君はそれに抗って炎の柱を発現させて見せるんだ」


「は、はい。でも、あの……」


「どうかした?」


「いいんでしょうか。私ばっかり、修行に付き合ってもらって……先輩たちもやりたい修行とか、研究とかあるんじゃないですか?」


 私の言葉に、先輩たちは顔を見合わせて微笑んだ。


「いいんだよ。君との修行は、僕たちの修行にもなる」


「そうそう。私、マルテさんのおかげで前より水の魔法が上手くなったよ」


「俺も。土の魔法にさらに磨きがかかったぜ」


「そ、そうですか」


「うん。それにね、僕たちは後輩の成長が楽しいんだ。マルテ君は誰にも負けない魔法使いになれるかもしれないし、リーン君は光と炎の魔法が得意で、僕の後を継いでもらえるかもしれない」


「アルトさんの魔法の才能も素晴らしいわ。たぶん、私よりも水の魔法に適性があると思う」


「バルツはまだまだって感じだけど、手先が器用だよな。魔道具を作らせると、面白いものが出来るかもしれない」


「うん。だから君たちは遠慮しないで、僕たちから学べるだけ学んでほしい。そして君たちも、次の魔法使いが入ってきた時に、同じように鍛えてやってほしいんだ。魔法同盟が無くならないようにね」


 私達四人は顔を見合わせた。


「「「「はい!」」」」



***



 急速に何かを掴みかけている気がする。

 壁を一つ越え、魔法使いとして成長したようだ。

 以前とは比べ物にならない精度で魔力を制御できる。

 今なら、出来るはずだ。


「”隠者の風よ、欺け”」


 風と水の魔力が合わさり、魔法が顕現する。

 鏡から、私の姿が消えた。

 私はこれまで出来なかった”ミイス魔導物語・第二巻・秘密の書”の魔法に成功した。


 合成魔法に、魔力の錬成は欠かせない要素だったのだ。

 先輩たちとの修行が、私を引き上げた。

 私は第二巻の魔法を全てマスターした。


 魔法を解き、階段を下りる。

 彼はいつもそこにいる。

 澄ました顔で、本を読みながら……


「ギルギスタ」


 呼びかけると、彼は本から顔を上げた。


「おや? どうかしましたか?」


 言葉では語らない。

 私はただ一言、彼に開始の合図を告げた。


「いくわよ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ