第24話「秘密のクラブ」
魔法同盟。
バルツが語る、この学校に隠された秘密のクラブ。
そこに入れば、私も魔法のことを知ることができる……!?
「そ、それ、私も聞いたことがあるかも。私じゃなくて、おにいちゃ……お兄様が、クラスの人が入ってるって噂があるって」
アルトが勢い込んで言った。
「ああ。俺も、学校を卒業した兄上から聞いたんだ。この学院には秘密があるって」
「……あ、そういえば」
私も思い当たることがあった。
リーンさんと初めて話した時。
確か、彼女は私のことを、
「あなた、魔法同盟の人?」
と聞いたのだ。
「マルテも何か知ってるのか?」
バルツが言った。
「ううん、わたしじゃなくて、リーンさんなら……彼女なら、何か知ってるかも」
私たちは頷いた。
放課後、三人で隣のクラスへと乗り込んだ。
彼女は昨日早退してしまった。
病気で休んでないといいが……
「あ、いた」
窓の外をぼーっと眺めている。
どうしたんだろう。昨日はあんなに元気だったのに……
「あ、あのー、リーンさん」
「……ッッ!?」
声をかけると、彼女は椅子の上から転げ落ちそうになった。
あわてて彼女を支える。
「大丈夫? 体調は戻った? まだ元気がなさそうだけど……」
「べ、べべべ別にどうってことありませんわ。久しぶりに魔法を使って、疲れただけよ! 別に悔しくて落ち込んでるわけじゃありませんからね!」
「そっか。良かった。ねえリーンさん、魔法のことで聞きたいことがあるんだけど……」
「な、ななな何かしら? あなたが知らないことで、私が知ってることなんて、あるとは思えませんけど……!」
「えっとね、昨日”魔法同盟”って言ってたじゃない? リーンさんは何か知らないかなぁ、と思って」
その言葉に、彼女の眉がぴくっと反応した。
「やっぱり、何か知ってる? それとももしかして、リーンさんが”魔法同盟”の人だったり?」
彼女は微妙な表情をしていたが、ため息をついて話し出した。
「……私は”魔法同盟”には入っていませんわ。その分だと、あなたも何も知らないようですわね」
「うん。この学校には来たばかりだし。さっき初めて噂を聞いたよ」
「私も”魔法同盟”を探そうと、一時期躍起になったことがありましたわ。でも、結局何の手がかりも得られませんでしたの」
「……そっかあ」
この学校のことについてはずっと先輩で、魔法使いのリーンさんでもわからないか。
じゃあ、やっぱり噂でしかないのかなぁ……
「でも、あなたならあるいは……」
「え?」
リーンさんはまじまじと私の顔を見た。
「マルテさん。あなた、”燐光のホルス”は知ってらっしゃる?」
「え? し、知らない」
「この学校には、公然と知られた魔法使いが一人いますの。それが”燐光のホルス”。年長組の生徒ですわ」
「へえ、すごい! リーンさん以外にも居たんだ! 魔法使い!」
「……私なんかは、足元にも及びませんわ。名声も、実力も」
「え、でも、リーンさんも”炎のリーン”って名前が……」
その瞬間、リーンさんの顔が赤くなった。
「あ、あれは、自分で名乗った二つ名が年少組で広がっただけでしてよ……公然と魔法が勉強できないこの学院で、魔法使いとして知られた名前があるということが、どれだけすごいことか」
「マルテちゃん。”燐光のホルス”なら、私も知ってる。光と炎の魔法使いで、大人にも敵う人がいないって……」
「ああ、俺も知ってるぜ。”燐光のホルス”と言えば、貴族の間でも若手の魔法使いとして有名だ。その実力は、最近有名な”風のルーリーダ”にも匹敵するだろうって」
「み、みんな知ってるんだ」
そんなにすごい魔法使いなのか。
恥ずかしながら、私は魔法使いでありながら、魔法の世界のことは何も知らない……
「とにかく、”魔法同盟”について知っているとすれば、”燐光のホルス”以外にいない。逆に言えば、彼が知らなければ、根も葉もない噂ということでしょう」
「じ、じゃあ、その人に聞きに行けばいいんだね!?」
そういうと、リーンさんの顔が曇った。
「聞ければ、ですけどね」
***
リーンさんを仲間に加え、私たちは階段を上っていた。
年長者のクラスは一番上の階だ。
彼らは年少組より授業時間が多いため、まだ全員学校に残っている。
「なんかドキドキするね、上のクラスに行くって」
バルツが言った。
「リーンさんは、言ったことがあるんだよね?」
「……その、”リーンさん”というのはやめてくださる? 私も呼び捨てでいいわ」
「あっ、うん。じゃあ、私のことも、”マルテ”って呼んでね!」
「わ、わかりましたわ……マルテ」
リーンが照れ臭そうに言った。
私たちは慎重に身を隠しながら、年長者の教室を覗いた。
彼らはまだ授業中だ。
「あ、あいつだ……あの、一番後ろの端っこに座ってる人」
バルツが言った。
私も見てみる。
……ふうん。なんというか、名前の割には地味な印象の見た目だ。
髪はボサッとしてて、顔も目立つ特徴はない。
背の高さは中くらい。
ザ・普通の人って感じだ。
本当に高名な魔法使いなんだろうか。
……ちょっと試してみようか。
私は魔力を解き放ち、長い手を伸ばすように彼に近づけてみた。
このまま背中を叩いたら、どういう反応をするだろう……
そして魔力の手が彼の足元まで来た時。
変化が起きた。
(……えっ!?)
伸ばせない。
これ以上魔力の手が彼に近づけない。
戸惑う私に、今度は彼の方から魔力が迸るのを感じた。
大きな手が私の魔力の手を包む。
そして、指先が触れた瞬間……
”君は、誰?”
問いかけられた気がした。
「ひっ!?」
思わず大きな声が出てしまった。
教室の生徒たちが一斉に振り向く。
私たちはあわてて逃げ出した。




