表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

15/34

第15話「パーティ」

「うわっ、おっきい……お城みたい!」


 私は感嘆の声を上げた。

 目の前には、家というより、城といった方がいい建物がある。

 これがバルダー家のお屋敷なのか。


「バルダー領は帝国との境目にある、国の要衝だからな。その役割も重要なのだ。農地の多い我がエルフラン領よりも、収入は多いかもしれない」


「へええ……」


 なんだかよくわかんないけど、すごい家ってことだ。

 そういえばこの世界のことってまだ全然知らないな。魔法のことばかりじゃなくて、そういうことも勉強したほうがいいかなぁ。


「さ、私の手をとって。堂々と乗り込もう」


「は、はい。お父様」


 緊張してきた。

 考えてみれば、こんなに遠出するなんて初めてだ。

 しかも、パーティだって。貴族のお歴々がたくさんいるに違いない。

 うう~、会いたくない。


 華やかな廊下を進むと、徐々に人の数が増えてくる。

 通りすがりに、私のことを見る人たち。口々に何かささやいているのが聞こえる。何を言ってるんだろう……


 そして私とお父様は、パーティの会場と思しき大広間にたどり着いた。


「うわああああ……」


 すごい、キラキラだ。

 こんなすごい会場、初めて見るかも……

 あれだ。ディズニーのお姫様が出てくる映画とかで見るやつだ。


 少し、胸が高鳴っていた。

 もしかして、バルダー家って本当にすごい?


「やあ、エルフラン侯爵。お久しぶりです」


「これはどうも、レーン侯爵。ご無沙汰しております」


 お父様が誰かと握手している。

 その相手は、視線をおろすと、何かに気付いたように目を見開いた。


「侯爵、この子はもしかして……」


「はい。うちの娘です。マルテ、挨拶して」


「は、はい……マルテ・フォン・エルフランです。初めまして」


 と、若干ぎこちないが、丁寧に挨拶した。


「おお! この子が例の……いや、これは思った以上の子が来たな。これはバルダー侯爵の御子息もさぞ……」


 例の……ってなんだ。「思った以上」ってなんだ。

 褒められてんだか、どうなんだか。

 大体、バルダー家の御子息が何だって? 一々気になるな。


「まあ、エルフラン侯爵。お久しぶりですわ。この子は……?」


 また別の人がやってきた。

 丁寧にお辞儀をすると、その人の顔が輝いた。


「わあー、可愛い! 小さい子なのに、良くできてるわねー!」


 と、私のことは割と好評のようだ。

 次々と人がやってくる。


(つ、疲れる……! これが、貴族の世界……ああ~、幼いころから教育されているとはいえ、元一般市民の私には辛い……!)


 機械的に挨拶を繰り返す私。

 早くも疲労困憊になって来た時。

 ふと……妙な気配を感じた。


(あれ……? なんだろうこの感じ。……どことなく、西の森の洞穴に入った時と似ているような……)


 気配は、パーティ会場の奥から来ているように感じた。

 私はそちらを見た。

 すると……


(……見てる)


 こちらをじっと見ている人がいた。

 その人は、私と目が合うと、すぐに視線を逸らして人混みに紛れた。


(銀の髪に、長身の男の人……)


 知らない人だった。

 だが、姿が消えた後も、妙にその人物の事が気になった。



※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※



「はああ~……」


 一通りの挨拶を終え、私はため息と共に椅子に腰かけた。


「こら。はしたないぞ、マルテ」


「だって、お父様~……パーティ、とっても疲れるんだもん……」


「そう言うな。これでも、主役に比べればずっと楽な方だ。今の内から慣れておかないでどうする」


「でも、ここに来てから挨拶ばっかり……いつになったら終わるの?」


「主役が登場するまでさ。……ほら、そろそろ出番のようだぞ」


「えっ?」


 私は顔を上げた。

 会場の視線が一点に集まっている。

 一際身なりの良い人物が、壇上に立っている。


「紳士淑女の皆さま、本日はよくお集まりいただきました。本日は我が息子、ダン・フォン・バルダーが8歳を迎える記念日です。これより、ダンの誕生日を祝福するパーティの開幕を宣言します」


 盛大な拍手が巻き起こる。

 今の発言からすると、あの人がバルダー侯爵か。


「それでは今日の主役、我が息子を紹介します。ダン、前に出て」


 ドキリとした。

 いよいよ現れる。

 おそらく、私の婚約相手となる人が。


 以前絵を見たときは、太っちょの男の子だったが……

 あれから一年ほど経過している。

 月日がたてば、人も変わる。

 ましてや、私たちは伸び盛りの子供なのだ。見た目が大きく変わっていてもおかしくない。


 これだけの屋敷に、これだけのパーティ。

 肩書だけ見れば、とてつもない貴公子だ。私よりも格上と言って良い。

 否が応でも期待は高まる。

 その姿は、果たして――


「本日はお集まりいただきありがとうございます! 私はバルダー侯爵が三男、ダン・フォン・バルダーであります! 皆様に祝福していただき、私は幸せです!」


 堂々とした名乗りだった。

 会場の全員が拍手をして祝う中……私は淑女にあるまじき大きさで口を開けてダン・フォン・バルダーを見つめていた。

 彼は大きく様変わりしていた。


 縦ではなく、横に。

 わずかに伸びている身長に対して、横は倍以上伸びている。

 つまり、小太りがスーパーデブに変わっている。


 ……ふざけんな。あの頃より、なんでさらに太ってるのよ!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ