表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

13/34

第13話「縁談、再び」

「ふあ~あ」


「なんですかマルテお嬢様。その大きな欠伸は。はしたないですよ」


「別にい……」


 先生がため息をつき、かぶりを振った。

 ルゥが去って数か月。私は年を一つ取り、この体になって6年、前世から数えれば23歳になった時。


 私は幼児とは思えないほど、やさぐれていた。

 勉強には身が入らず、本を読むのも投げやり。

 家族の前では一応平静を装っているけど、笑うことは少なくなったと思う。

 そして読み書きの先生の前では、あからさまに態度が悪くなった。


「マルテお嬢様……そんなにショックだったのですか? その、近所のお友達のこと」


「別にい……」


「仕方ありませんよ。そこらの木っ端貴族ならいざ知らず、お嬢様はエルフラン家のご令嬢ですからね。たとえ家督の相続には関わらなくとも、おいそれとそこらの馬の骨に嫁に出すことなんてありませんよ」


「別に嫁になんて行くわけじゃないし……ただの友達だし……私だって何の役にも立たない末妹だし……」


「はあ。よっぽど好きだったんですねえ、その子のこと」


「ち、違うし!! あいつは初めての友達で、私の、まほ……もう、先生のバカ! バカバカバカ!! 教えるのへたくそ!! 給料下がれ!!」


「え、ええええええ!?」


 あいつが好きだったって?

 ふん、バカじゃないの。私は23歳の大人。それに対して、あいつは7歳か8歳のちんちくりんの子供。釣り合うわけがない。結婚なんて、こっちからお断りだ。


”あーらら。後悔してもしらないよ”


 私の中のミイス王女が笑った気がする。

 なんか腹立つ。

 ……とにかく!! もう、しばらく男のことは考えたくない!!

 今は魔法に集中する!! 見てろよ、あいつなんて足元にも及ばない使い手になってやるんだから……!!


「”闇の精霊よ、顕現せよ!!”」


 部屋で一人、魔法の練習を続ける。

 しかし、熱意とは裏腹に、結果は出ない。


 最後に習得した魔法は、”風の刃”。それから、新しい魔法は一切身についていなかった。

 どうやら、完全にスランプのようだ。


「はぁ。ミイス王女はこういうとき、どうしてたのかなぁ……」


 ごろりと横になり、本を開く。

 読んでいるのは、”ミイス魔導物語・第二巻・秘密の書”だ。

 この前ルゥの力を借りてではあるが、ようやく”灼熱の剣”を習得し、読み進めることができた。


 このころのミイス王女といったら、完全に王家を手玉に取っており、城を抜け出すのも日常茶飯事となっていた。

 そんなことが知れれば大問題になりそうだが、そこも彼女は魔法で解決した。


 風と土の合成魔法、”木霊の風”で自分の声を部屋に残したり、風と水の合成魔法、”隠者の風”で姿を消したり……本当にやりたい放題だ。


「うらやましいなぁ。当たり前みたいに合成魔法を使ってる」


 私はルゥの体を借りて、ようやく一つの合成魔法だ。

 もちろん、”木霊の風”も”隠者の風”も試してはいるが、いまだに成功していない。

 はぁ。読んでいる限り、ミイス王女はスランプに陥った様子はない。私はどうすればいいんだか……


”ちょっと、別の方向で進めてみたら? もう一度前の魔法をおさらいしてみるとか”


 ふと、ルゥの言葉を思い出した。

 そういえば、彼にできて私にできなかったことがある。

 風の精霊を使って、周囲の様子を探る……だったか。


 認めたくないことだが、魔力の質と量は私が上でも、魔力の制御は彼のほうが上手らしい。この機会に、私も……魔力の制御の練習をしてみるべきか。


「よしっ」


 がばっと起き上がり、胡坐を組む。


「”風の精霊よ、顕現せよ”」


 風の精霊を、とりあえず三体呼び出した。

 それらを周囲に浮かべる。

 目を閉じ、意識を集中する。


 ……目を閉じても、風の精霊の場所はわかる。

 彼らと私の間には、魔力的な繋がりがあるからだ。

 私からコードのようなものが延び、彼らに魔力を供給し続けることで、精霊は顕現している。


 彼らを、もっと深く意識する。

 そう、例えば……彼らが、まるで私の体の一部のように。

 精霊には、目がある。耳がある。鼻がある。


 ……聞こえる。彼らを通して、周囲のざわめきが。空気の流れが。

 私は、精霊と深くつながっている……


「マルテ、入っていいか?」


「は、はい! お父様?」


 急速に現実に引き戻される。

 あわてて風の精霊たちを消した。

 お父様が部屋に入ってきた。


「読書中、すまんな。急いで知らせたいことがあって」


「え? な、なんでしょう」


 お父様はベッドのそばの椅子に腰かけた。

 彼はじっくりと私を見た。


「……お前が生まれて、もう6年か」


「な、なに? 改まって……」


「いや、ずいぶん大人になったと思ってな……」


 私はぷっ、と噴出した。


「何言ってるの? 私はまだ6歳だよ? まだまだ全然子供」


「いやあ、確かに年はまだ幼いが……お前は言葉も達者で、思考も大人びて見える。それになにより、マリアに似て美しいしな」


「えええ? 何急に、お父様、そんな……照れるよ」


 私がもじもじしていると、お父様はニカッと笑った。


「お前を外の人間に見せるのも、そろそろいい頃合いかもしれないな」


「……え?」


 嫌な予感がした。


「隣の領地のバルダー侯爵家というのがあるんだけどな」


「は、はい……」


「そこの三男が、今度誕生日を迎えるそうで、大々的にパーティを開くんだ。そこで、お前を紹介しようと思う」


「は……」


 いいいいいいいいいいいいいいいいい!?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ