「かいそう」
――私、小博恵美33歳は平凡であると思っていた。
◇◇◇◇◇◇◇◇
「はーい、じゃあ今日は公園にお散歩に行こうと思いまーす♪」
「せんせい、すいとうどこー?」
「……」
「きょうはすべりだいであそぼうぜ!」
保育室にいる14人の子ども達が、楽しそうな声を出して賑わっている。
…この仕事を始めて3年、同じ子たちをずっと。3歳の頃から見届けてきた。
自慢のようで恥ずかしいが、子ども達からは絶大な信頼を得ていると思う。
「スマイルせんせい!」
「なにかな、めぐるくん?」
付き合いも長くなってきた子達からは、名前の「えみ」から派生して「スマイルせんせい」と呼んでくる子もいる。
その一人の剣崎巡くんが私に話しかけ、こう言ってきた。
「ぼく、おおきくなったらスマイルせんせいをまもってあげる!」
「ほんと!めぐるくん、とっても強いから先生頼っちゃうな~♪まるで勇者さんみたい!」
子ども特有の、キラキラした力強い瞳を前にそう返す。
「ゆうしゃ?ゆうしゃになるには、なにすればいい?」
「うーん、みんなに優しくするのが一番かな?後はやっぱり剣で戦うイメージかも!」
「けん!かっこいい!ぜったいゆうしゃになるからね!」
「でも、どうして急にそんな事思ったの?」
「せんせいがいってくれると、なんかふわーってして、ホントになんでもできそうなきがするの!」
「?…そっか!頑張って!」
「うん!」
そう言ってまた友達の近くに戻っていく彼は1週間後、無事に卒園式を迎え私たち「ほしぐみ」の楽しい楽しい3年間は終わりを告げた、はずだった。
『このっ、偽愛者がっ!』
――――そんな10年前の昔話は、究極のバッドエンドで幕を閉じた。
◇◇◇◇◇◇◇◇
「……っ!」
今日もそんな昔の夢を見て目が覚める。
今日も『あの日』を思い出す。
今日も変わらない日常、閉じこもった部屋の中で私は思う。
『あの子たちと、また遊びたい』
小博恵美は、己が非凡であることをまだ知らない。
日常コメディ8割、シリアス2割くらいになればなーと思ってます。
特に決まりなくゆっくりと進めていきます。
のんびりお楽しみいただければ幸いです。