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8話 一緒に登校

 翌朝。


 約束した通り、7時半に色羽の家に車で向かったが……


「そういえば、連絡手段がないな」


 携帯の番号でも交換しておくべきだった。

 インターホンを鳴らすしかないな。


「確実に、ご両親に知られるよな……」


 この時間だ、まだ在宅してるだろう。たぶん。

 娘を迎えに来た教師、という認識ならギリギリセーフだけど、色羽が全部しゃべっていたら……

 ものすごい気まずい思いをすることになる。


 一瞬、無視するか?

 という考えが浮かぶものの、却下した。

 ここで色羽を置いていったら、アイツ、本当にサボるだろうからな。

 ちゃんと更生させないといけないし、サボりなんてこれ以上させてはいけない。


 俺は車を入り口の近くに止めて、インターホンを……


「おはようございます」

「うぉっ!?」


 振り返ると、昨日のお手伝いさんがいた。


「お、おはようございます」

「お待ちしておりました。今、お嬢さまにご連絡しますので、中でお待ちください」

「あっ、いえいえ。いろ……天塚はすぐに来るんでしょう? なら、ここで待ちますよ。朝からおじゃまするなんて、どうかと思いますし」

「そうですか、かしこまりました。では、少々お待ちください」


 一礼して、お手伝いさんは屋敷の中に戻った。


 俺が来たことに、どうやって気がついたんだ……?

 というか、まるで気配がしなかったんだけど……ニンジャー?


「ふわぁ……はよっす、センセー」


 お手伝いさんと一緒に、色羽が姿を見せた。

 今は外にいるからなのか、不良モードらしい。

 口調は荒く、制服も着崩している。


「おはよう。ちゃんと起きられたか?」

「ったりまえだろ。人を子供扱いすんな」

「お嬢さま。そういうセリフは、私に起こされることなく、自力で起きられるようになってから……」

「わーわーっ!? そういうのダメっ、なしっ、言ったらダメだからね!?」


 本当のことが暴露されて、一瞬だけ素に戻っていた。


「ったく……いこーぜ、センセー」

「それでは、失礼します」

「はい。お嬢さま、いってらっしゃいませ」

「はいよ」


 色羽が車に乗り込み、俺もシートに座る。


「天塚、シートベルトを」

「……」

「……色羽」

「はーい♪」


 ある意味、めんどくさいな、この子。


 ため息をこぼしながら、俺もシートベルトを締めた。

 それから、安全運転で車を発進させる。


「~♪」

「ずいぶんごきげんだな」


 視線は前に向いているものの、隣から鼻歌が聞こえてきた。


「だってだって、千歳と一緒に登校だもん♪ うれしくないわけないよっ」

「そんなにうれしいことか?」

「彼氏と一緒の登校って、けっこう夢見るものだよ」

「よくわからんな」

「肩を並べて、手を繋ぎながら歩いて、他愛もないことを話して……楽しいよね♪」

「肩は並べているが、手は繋いでないぞ?」

「手、繋ごう?」

「無茶言うな。事故る」

「あはは、だよね♪」


 色羽は楽しそうだ。

 そして、うれしそうだ。


 自分で言うのもなんだが……

 コイツ、本当に俺のことが好きなんだな。

 一緒にいるだけで幸せ、というような、ふにゃりとした顔をしてる。

 日頃、ナイフのように鋭い顔をしてる色羽しか知らないから、新鮮な気分だ。


「なあ、あまつ……じゃない、色羽」

「ぶー、また間違えてるし」

「すまん。だが、勘弁してくれ。一晩で気持ちを切り替える方が難しい」

「一回間違えるごとに罰ゲームを設定しよっかな?」

「その内容は?」

「んー……キスとか?」


 ギュルルルッ!


 事故りそうになった。


「わっ、危ない!」

「お、お前な……いきなり変なことを言うな。動揺するだろ」

「そんな変なこと言ったかな?」

「十分変だ。キスしてくれ、っていう催促に聞こえたぞ」

「ある意味、そうなんだけどね」

「マジかよ。今時の子って、こんなにアグレッシブなのか」

「千歳も、そんなに歳変わらないでしょ?」

「そうなんだけどな……ちょっとしたジェネレーションギャップだよ」


 あるいは、俺の価値観が古いのだろうか?

 わりと厳しい両親に育てられたせいか、思考回路が偏っているからな。その自覚はある。

 まあ、そのことについて問題を覚えたことはない。

 むしろ、こんな自分に育ててくれた両親に感謝してるくらいだ。


 最も、こんな自分に育ったせいで、妙な女の子に懐かれてしまったわけだが。


「なあ」

「なぁに?」

「俺たち、付き合っているんだよな?」

「うん♪」

「俺のどこに惚れたんだ?」

「昨日も言ったじゃない。優しいところだよ」


 優しい……のだろうか?

 俺としては、当たり前のことをしただけで、何一つ、特別なことはしていない。


 ひょっとしたら、色羽は優しくされたことがないのかもしれない。

 あるいは、極端に少ないのかもしれない。

 だから、雛鳥が初めて見るものを親と認識するように、俺に惚れてしまったのかもしれない。


 かわいい子ではあるし、ちゃんと話せば優しいということも理解した。

 ただ、本気で付き合うとなると色々と問題が浮上する。

 そうなると、やはり……


「どうしたの、千歳?」

「……いや、なんでもない」


 昨日今日の話だ。結論を出すのは早い。

 色羽が望むのなら、しばらくはこの関係を続けることにしよう。

 きちんと色羽を更生させる、という目的もあることだしな。


「ところで、俺からも聞きたいことがあるんだが、いいか?」

「うんうん、いいよ。なんでも聞いて」

「なんで不良やっているんだ?」

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