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4話 生徒の家で、二人の距離は縮まる

 塀は高く、長く伸びている。

 パッと見で、50メートルほどだろうか?


 その奥に、一流料亭のような庭園。

 そして、武家屋敷のような家。


「……これが、天塚の家なのか……?」

「そ。ほら、ぼーっとしてないで早く車止めて。駐車場、そこを入ってすぐだから」

「あ、ああ……」


 ドッキリじゃないだろうな?


 そんな可能性を疑うが、屋敷内に続く道に警備の人がいて、助手席に乗る天塚を見ると頭を下げてきた。

 つまり、ドッキリという可能性はない。

 間違いなく、ここは天塚の家というわけだ。


 マジかよ。

 コイツ、とんでもないお嬢さまじゃないか。




――――――――――




「ほら、入ってくれ」

「おぉ……」


 この屋敷に来て、何度目の感嘆の声だろうか?


 案内された部屋は、純和風。

 ただ、とんでもなく広い。

 ついでに言うなら、高そうな掛け軸や壺が飾られていた。

 鑑定団に出したら、たぶん、とんでもない値がつくんだろうな……


「ここが天塚の部屋なのか?」

「は、はぁ!? そんなわけねーだろ、なんであたしの部屋に入れないといけねーんだよ」

「それもそうか……なら、客間か?」

「そーゆーこと。茶の一杯くらい出してやっから、おとなしく待ってろよ」


 そう言って、天塚が部屋を後にした。

 茶って……天塚が淹れるのだろうか?

 それとも、お手伝いさんとかいるんだろうか?

 いそうだよなあ……こんな家だし。


「おまたせ」


 ほどなくして、天塚が戻ってきた。

 お盆に乗せたお茶をこちらに差し出す。


「ありがとな」


 一口、飲む。

 熱く、濃いお茶だ。

 が、うまい。


「良い味だな。天塚が淹れたのか?」

「ああ……そ、そうだけど」

「うまいんだな。見直したよ」

「べ、別に、これくらい普通だし」

「こういうのは、お手伝いさんとかがやるものだと思ってた」

「今、別のこと頼んでっから。猫、綺麗にしてもらってんの」


 やっぱり、お手伝いさんがいるのか……


「あ、面倒だから任せたとか、そういうんじゃねえからな? ウチのお手伝いさん、猫飼ってたことがあるらしくてさ。色々詳しいから、ちょっと任せたんだよ。その……今は、先生に聞きたいことがあるから」

「ん? なんだ?」


 大事な猫を預けて、わざわざ俺と話をするなんて……

 どんな内容だ?

 学校のこと……ではないだろうな。

 かといって、猫のことでもないはずだ。当の本人……本猫? がいないからな。


「あのさ……先生は、なんで優しいんだ?」

「うん? どういう意味だ?」

「いや、そのまんまだよ。あたしに優しくしてくれたじゃん」

「……したっけ?」

「無自覚かよ……ったく、天然タラシか」

「あー……悪い、どのことを指してるんだ?」

「だから、ほら……車の中で、あたしを励ましたくれたじゃん」


 車の中……ああ、あの時のことか。

 猫がどうにかなるのではないかと怯えている天塚を励ました……その時の話だろう。


「あたしが……生徒だからか?」

「それもなくはないが、ちょっと違うな。あの時は、生徒も教師も関係ないだろ」

「なら……あたしの家を知ってたからか?」

「それこそ関係ないぞ。天塚がお嬢さまなんて、今知ったばかりだからな」

「じゃあ、どうして……」


 わけがわからないというように、天塚は困惑してみせる。


 そんなこともわからないのか。

 コイツ、なんだかんだで、まだまだ子供なんだな。


 俺は笑いかけながら、天塚の頭をぽんぽんと撫でた。


「女の子を助けるのは男の役目だろ?」

「あっ……」

「教師とか生徒とか、家とか……そんなのは関係ない。俺は、天塚が困っていたから助けた。励ました。ただ、それだけだよ」

「先生……」


 なぜか、天塚の顔が赤くなる。

 どことなく、瞳がとろんとして……

 視線が、ぽーっと熱くなる。


「そ、そんなこと言われたら、あたし……」


 ぎゅ、っと胸の前で拳を握ったり開いたりする天塚。

 迷っているみたいだ。

 何を?


 その答えは、すぐに出る。


「……よしっ、決めた!」

「なにをだ?」

「先生……」


 ぐぐっと、天塚が身を乗り出すように、こちらに近づいてきた。

 俺の顔を覗き込むように、目と目を合わせる。


 か、顔が近い……


 まつげが見えるくらいの距離で……

 ともすれば、唇がくっついてしまいそうな距離。


 って、俺は何を考えているんだ?

 そんなこと、あるわけがないのに……


 ……なんてことを考えるが。


「あたしと付き合ってくれ!」


 そんなことが実際に起きた。


「……は?」

「あたし、先生に惚れた! 好きだ! あたしを、先生の女にしてくれ!」

最後の最後で、色羽が軽くデレました。

これでも、軽くです。

本格的にデレたらどうなるか? もうちょっとお付き合いいただけたらうれしいです。

よかったな、なんて思ってもらえたら、更新の励みになるので評価やブクマをしていただけるとうれしいです!

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