表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
33/44

33話 秘密のやりとり・2

 午後の最初の授業は、ウチのクラスだった。

 生徒たちは難しい顔をして、俺が作成した小テストと向き合っている。


「わからないところは、無理に埋めようとしなくていいからな。まずは、わかるところ、答えを導き出せそうなところを重点的に攻めるように」


 時折、軽いアドバイスを送り、生徒たちが問題を解く様子を見守る。


 もうすぐ中間考査だ。

 そのために、小テストを作成して、生徒たちに発破をかけたのだが……


(苦々しい顔をしているな)


 なんで小テストなんか、というような顔をしている生徒が大半だ。


(こういう小テストを積み重ねておくと、後々楽になるんだが……それを説いても仕方ないか)


 こういうことは、自分で気が付かないと身にならない。

 面倒と思いながらも、がんばってほしいが……さてはて、どうなるか。


 そういえば、色羽はちゃんとやっているだろうか?


 気になり、後ろの席を見る。


「……」


 色羽は真面目な顔をして小テストに取り組んでいた。

 渋い顔をして、手を止めている。

 それでも、諦観は見られない。

 なんとか問題を解いてやろうという意思が見られ、必死になってがんばっているみたいだ。


(良い傾向だな)


 本心から勉強を楽しんでいるわけじゃないだろう。

 うぬぼれのようなことを言うが……

 俺に褒められたいために、がんばっているのだろう。


 でも、今はそれでいい。


 本心からではなくても、勉強に取り組むことができれば、それは大きな前進だ。

 このままの調子で、少しずつ気持ちをスライドさせて、学業に取り組むことができるようになればいい。

 言うほど簡単なことではないが、やるだけの価値はある。


 色羽は、やればできる子なのだ。

 俺はそう思っている。


「……」


 ふと、色羽と目が合った。

 何かを求めるような視線を向けられる。


 俺は生徒の様子を見て回り……

 ある程度迂回して、色羽のところまで足を進めた。


 そこで、そっと手を差し出す。


「……んっ」


 周囲に見られないように注意しながら、色羽が俺の手を握る。


「……えへ」


 誰にも見られないところで、こっそりと手を繋ぐ。

 二人で決めた秘密のやりとりの一つだ。


 ただ手を繋ぐだけ。

 それでも、授業中にしているというだけで、特別な行為に感じられる。


 それは色羽も同じらしく、うれしさを隠しきれない感じで、ニヤニヤしていた。


「……」


 どうして、色羽はこんなにも俺のことを好いてくれるんだろうな?

 時々、色羽のことがわからなくなる。

 俺はただ、困っている色羽を助けただけだ。

 それ以上のことは何もしていない。

 それなのに、色羽はたっぷりの好意を与えてくれる。


 考えても仕方のないことなのかもしれないが……

 それでも、考えずにはいられない。


 どうして、この子は俺が好きなんだろう?


(いや……)


 色羽がどうこう、という話じゃない。

 俺がどうするか、という話だ。


 不良だけど、優しい女の子で。

 子供だけど、しっかりしていて。

 生意気だけど、かわいらしいところもあって。


(案外、惹かれているのかもしれないな)


 そんなことを思うと、不思議と、すんなりと納得できた。


 相手は生徒なのに。

 不良なのに。


 抵抗感は一切ない。

 むしろ、そうなりたい、という想いが湧き上がってきた。


 一時だけの感情かもしれないし、そもそも、勘違いかもしれない。

 気の迷いかもしれない。


(それでも……)


 もう少し踏み込んでみよう。

 そう思った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
よろしければこちらもどうぞ→この度、妹が彼女になりました。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ