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17話 証明

「証明って言われても、どうすればいいんだ?」

「そこは千歳が考えてくれないと」

「無茶振りだな」

「先生なんだから、無茶振りには慣れてるでしょ」

「なんだそのよくわからん認識は!?」

「え?」

「違うの? みたいな反応はやめてくれないか?」


 色羽は、教師に対する妙な偏見を持っているみたいだ。

 これも、そのうち正さないといけないな。


「千歳があたしのこと大好き、っていうことを証明して♪」

「そんなことを言われてもな……そもそも、まだお試しの段階だろう? 好きの証明と言われても困るんだが」

「……千歳は、あたしのこと嫌いなの?」


 色羽がシュンとなってしまう。

 雨に濡れた子犬のような目を向けてくる。


 うっ。


 そういう目で見るのは反則だろう。

 何もしていないはずなのに、とんでもないことをしでかしたような罪悪感に襲われる。


「……嫌いじゃない」

「なら、好き?」

「……正直、よくわからない」


 好きといえば、場はうまく収まるのかもしれないが……

 こんな大事なことでウソはつきたくない。


 色羽はかわいいと思うし、女の子としてレベルが高いとも思う。

 が、それだけで好きとは言えない。

 大人になれば、付き合う以上の選択肢も視野に入れなければいけないし……

 簡単に答えを出すことは、相手に失礼なことだと思う。


 そんなことを伝えると……


「くすっ。千歳は真面目さんだね♪」


 なぜか、色羽はうれしそうに笑った。


「あたしのこと、ちゃんと考えてくれてるんだ」

「当たり前だろう」

「生徒からの告白なんて、千歳は無視するかと思ってた」

「世間体がよくないから、断りたいという気持ちはあるが……相手の気持ちを無視するようなことはしたくない。そんなことをしていたら、俺の目指す教師にはなれそうにないからな」

「千歳の目指す先生って?」

「……笑わないか?」

「笑わないよ」

「生徒に親身になって接することができるような……生徒と同じ視線に立てる教師だ」

「あははっ、ドラマに出てくる先生みたいだね」

「おいこら」


 おもいきり笑ったな。


「ごめんね。でも、バカにしたわけじゃないよ? むしろ逆。千歳のこと尊敬したよ。それに、ますます好きになっちゃった♪」

「あー、はいはい。それはよかったな」

「拗ねないでよー。あたしが悪かったから、ね? 謝るよ?」

「はぁ……まったく」


 困った生徒だ。

 不良で、でも優しい子で……

 コロコロと態度を変えて、俺のことを好きと言う。

 こんな生徒は初めてだ。


 ……今まで感じたことのないような、不思議な感覚。

 心が乱される。

 けれど、それは悪い気分ではなかった。


「っていうか、証明は? してくれないの?」

「……ちょっと待ってくれ」


 色羽が好きなのかどうか。

 それはまだわからない。

 ただ、この子が証明というのを求めているのなら……

 今は、それに応えてもいいかな、という気分になった。


 とはいえ、どうしたものか。

 俺の気持ちが嬉野先生に向いていないことを教えてほしい、ということ。

 そんなもの、どうやって証明したものか。


「……そうだな」


 少し考えて、とあることを思いついた。


「こっちに来てくれないか?」

「こう?」


 言われた通り、千歳はとてとてと俺の前に移動する。


「ちょっと踵を上げて」

「んっ」

「目を閉じて」

「ふぇ」

「ほら、目を閉じて」

「そ、それって……も、もしかして……?」

「いいから閉じる」

「……んっ」


 頬を桜色に染めて、色羽はそっと目を閉じた。

 そんな色羽に、俺は……


「嬉野先生はただの同僚だ。でも、色羽は違う。お試しではあるが……彼女だ」

「あっ」


 色羽を抱きしめた。

 そして、耳元で、今俺の中にある確かな気持ちを伝えた。


 お試し期間で、俺の気持ちはハッキリしていないが……彼女であることには違いない。

 大事に思っている。

 そう、伝えた。


「……千歳のばか」

「なんで怒られるんだ!?」

「こんなことさせられて……キス、されるのかと期待しちゃった」

「まあ……そこは、ちょっと狙ったところはあるが」

「ばかばか」

「わ、悪い」

「でも……許してあげる♪ あたしは、千歳の彼女だからね」


 色羽は笑い、抱きしめ返してきた。

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