表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

15/44

15話 ライバル?

 その後、色羽は五限目の授業をおとなしく受けて……

 聞いた話では、六限目も出席したらしい。


 まともに授業を受けていたか、それは怪しいという話ではあるが……

 出席しているだけよしとしよう。

 今までは、丸一日、サボることも少なくなかったからな。


 天塚色羽の更生の第一歩だ。

 この調子で、少しずつ、まともな方向に軌道修正できればいいんだが。


「以前、伝えたと思うが、明日は小テストがあるからな」


 放課後の一歩手前のショートホームルーム。

 ようやく授業が終わるということで、生徒たちはソワソワしてる。

 その気持ちはわかるので、なるべく早く話を終わらせよう。


「日頃、ちゃんと授業を受けれいれば、まず落ちることのない難易度だ。もしも赤点をとった場合は、居残り勉強をしてもらうから、覚悟しておくように」


 ブーイングが鳴る。


「問答無用で、全員、居残りにしてもいいんだぞ?」


 ブーイングが鳴り止んだ。

 わかりやすい。

 内心で苦笑しながら、話を進める。


「連絡事項はそれくらいだ。寄り道するなとは言わないが、ほどほどにな」


 日直が号令をして、ショートホームルームが終了。

 放課後になった。


 俺は名簿などを脇に抱えて、教室を後にする。


「先生、またねー!」

「ああ、また明日」

「まだ仕事なん? 俺たち、遊びに行くんだ」

「うっさい。さっさと行ってこい」


 すれ違う生徒たちと軽口を交わしながら、職員室へ向かう。


「森下先生」


 振り返ると、嬉野先生がいた。


「おつかれさまです」

「はい、おつかれさまです」

「ふふっ」

「どうしたんですか?」


 俺の顔を見て、嬉野先生が小さく笑う。

 なんだろう? ゴミでもついているのだろうか?

 ついつい、顔に手をやってしまう。


「あ、すいません。いきなり笑ったりして」

「何かついてますか?」

「いえ、そういうことではなくて……森下先生は人気があるなぁ、と思いまして」

「人気……ですか?」


 誰に?


「たくさんの生徒に慕われているじゃないですか」

「そう、ですかね?」

「今も親しげに話をしていましたよね」

「あれは挨拶のようなもので、親しいってほどじゃありませんよ。あるいは、友だち感覚で舐められてるのかもしれませんね」

「そんなことはありませんよ。親しみの現れのように見えますし……私のクラスの子も、森下先生の話をよくしますよ。皆、笑顔で、森下先生のことを信頼していることがわかります」

「そ、そうですか」


 そんなことを言われると、照れくさい。

 だが、うれしくはある。


 良い教師であろうと、日々、前を向いて歩き続けてきた。

 その努力が認められたような気がして、気を抜けば笑顔になってしまいそうだ。

 周囲に生徒がいるので、そんなだらしないところは見せられないが。


「なあなあ、先生」


 ふと、色羽が後を追いかけてきた。


「ちと話したいことが……あん?」


 俺を追いかけてきたらしい。

 ただ、嬉野先生が一緒にいることに気がついて、敵意たっぷりの視線を向ける。


 こらこら。

 意味もなくガンを飛ばさないように。


「なに、コイツ? なんで先生と一緒にいるわけ?」

「こらこら。嬉野先生をコイツ呼ばわりするんじゃない」

「嬉野……?」

「えっと……天塚さん、こんにちは」


 今にも噛みつきそうな勢いの色羽に、嬉野先生がそっと話しかける。

 猛獣に接するような態度だ。

 まあ、似たようなものかもしれないな。


 猛獣イロハ。

 猫科。

 普段は凶暴。しかし、飼い主にはデレる。


 ……そんなデータが思い浮かんだ。

ブクマや評価が、毎日更新を続けるモチベーションになります。

少しでも「面白い」「続きが気になる」と思っていただけたら、

ブクマや評価をしていただけるとうれしいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
よろしければこちらもどうぞ→この度、妹が彼女になりました。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ