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生命魔術と想い出  作者: 紗厘
第二章 ~真実と決断~
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夢と記憶

「何でですか!」


 女性の叫び声が聞こえる。

 その女性は教会の中に立っていた。


「何故とは?」


 女性の怒鳴り声に対し、白衣を着た男の声が反応する。

 教会の中にはこの二人しかいない。

 よく見ると、女性の方は雪音だった。だが男の方は顔が見えなかった。


「何で魔術師同士を殺し合わせる必要があるんですか!」


「人間は殺し合う事で存在意義を見出す。一部の人間に存在意義を見出す手伝いをしているだけだ」


 雪音は狂っていると思った。


「そんなことはない!人間は一人ひとりにちゃんと意味がある」


「これからお前はその殺し合いをさせるための力の元となるんだ。殺し合いをさせ、殺し合いで死ぬために生み出された存在なんだ」


 雪音は全身に力が入り、唇を噛みしめる。

 そんな事のために生み出された自分が悔しく、そんな事のために自分を生み出した目の前の男が憎らしく思えた。

 その男は手を顎にあて少し考える。


「力が手に入るだけでも人間は変わるが、そうだな。何か勝者に相応しい物を用意するべきだ」

「何でそこまで殺し合いをさせたいんだ」


 必死な雪音を見て、男は舌打ちをした。

 少しずつ雪音に近づき、頬を殴る。

 雪音は床に倒れこんだ。


「さっき理由は言ったはずだ。二度以上は言わせるなクズが」


 そう言って、雪音に近づいていく。

 雪音の近くでしゃがみ、髪の毛を掴み上げる。


「君は殺し合いの道具になったらいんだよ。こう生まれた以上感情は変えられないが記憶は消せるんだ。だからさ、少し眠ってよ」


 そして、雪音の視界は暗くなった。


 そしてすぐに織音がベッドの上で目覚める。


……夢?


 嫌な夢だった。

 生々しく、とても嫌な夢。


「……さっきの見たの?」


 小さく雪音の声が聞こえた。

 静かに頷いた。


「そっか」


「ごめん、でも聞かせて。今の夢は雪音の記憶?」


 雪音から返答が無かった。


「お願い、教えて」


 もう一度聞くと、答えてくれた。


「そう、今のは私の記憶。記憶がなかった理由は分かったけど雪には知られたくなかったな」


 織音は返す言葉が見つからずに黙り込んでしまった。


 これからどうするべきなのか。何も分からなかった。


 そこに、パジャマ姿の日葉が織音を起こしに来た。


「お兄ちゃん今日は起きてたんですね、でしたらこの時間に来なくてもよかったですかね」


「日葉、おはよう。わざわざありがとな」


 日葉はドアを開けたまま話を続ける。


「うん、にしても、空気が重いですけど何かありました?」


 隠そうと思ったが隠しきれないと判断した。


「今日の夜、また四人で話せるか?」


 日葉は何かを察したように頷いた。

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