笑顔
五時にアラームをセットしていた冴月の携帯が鳴る。
そのアラームで皆が起きる。
「付きましたか?」
「もともとついている。少し眠たかったんでな」
「おはようございます。では行きますか?」
「ああ、行こうか」
日葉はいつも通りだった。
だがいつも通りの言動で鷹中には騙されていた。
それだけではない。ただ怖かった、織音は日葉に声を掛ける事に怯えていた。
そのまま、車を降りる。
車が通る道を点滅する信号が彩る。
左右に気を付け横断歩道を渡り、まっすぐ進む。
目の前に黒崎遊園地の看板が出てくる。
中に入ると目の前には時計台と噴水が一緒になった綺麗なオブジェクトが目立っている。
「スゲー。にっちーすごいねー」
「に、にっちー?」
「日葉ちゃんのあだ名だよ」
柑奈が突然に日葉の呼び方を変えた。
仲良くなりたいからだろう。
陸翔と織音は微笑む。
「久々に来たんですけど。本当にこれはすごいです」
陸翔がここぞと言わんばかりに日葉に問いかける。
「ここには誰と来たんだ?」
「おい」
止めようとする織音を雪音が止める。
「ここにですか?……もう死んでしまったんですけど健兄さんと、後一人いたんですけど……忘れてしまいました」
日葉は「ごめんなさい」と苦笑いを浮かべる。
「そうか。とりあえず何かに乗るか」
「はい」「おおー」
日葉と柑奈はテンションが上がっていた。
珍しく宵が静かだと思えばずっと地面を見ている。
「気にしなくていいさ。今は楽しめばいい」
「じゃが……」
「俺は最後ぐらいは皆と笑って終わりたいんだ」
「……」
宵は黙り込んでしまう。
「早くしないと置いていくぞ」
陸翔の声に織音と宵はついて行った。
織音と宵は目の前にある遊具に立ち尽くした。
「最初にこれはおかしいでしょ」
「我は今回遠慮する」
360度回転の垂直落下あり、という文句なしの絶叫マシーンの前に立っていた。
「そんな目で俺を見るな」
「主?殺気ばかりの目でこっちを見るな」
柑奈が心を亡くしたような目で織音を見て、日葉が宵を睨む。
「……分かった。乗る」
「――……承知した」
柑奈と日葉はぱーっと笑顔に変わり列に並ぶ。
月曜日という事もあり、学生らしき人は多いが家族連れはあまり見なかった。
そういえばもう夏休みだっけ……。
織音は他の客を見てそんなことを思う。
思っているうちにもう座席に座っていた。
ゆっくりと出発する。
ゆっくりと上へあがり、頂上に着く。
そして止まる。
――止まる?は?
織音がパニック状態になる。
「わー綺麗ですね」
「すげー。すげー」
日葉と柑奈はなぜここまで楽しんでいるのか分からない。
宵を見ると石のように固まっていた。
突然動き出し、下を向く。また止まる。
――いやいやいやいやいやいや。ここで止まるのおかしくない?おかしいだッ――。
また突然動き出し、急降下する。
織音の頭の中はもう訳が分からなくなっていた。
いつの間にか終わっていた。
千鳥足になりながらベンチに座り込む。
「死ぬ。もう死ぬけど、マジこれは死ぬ」
「雪が言うと冗談に聞こえぬぞ」
「ははは」
織音の乾いた笑いが聞こえる。
雪音はその二人を見て大爆笑していた。
日葉と宵からの会話の中に「また乗る?」などと聞こえて体が震える。
目の前から冴月と陸翔が飲み物をもって歩いて来る。
「ほら」
陸翔が織音に飲み物を渡す。
「サンキュ」
「大丈夫か?」
「無理」
「じゃ、ご飯食べに行くか」
「吐くわ!」
「冗談だよ」
陸翔は笑うが織音はそれどころではなかった。
「最初、敵視してたとは思えないな」
「実際に戦ったわけじゃないんだ。だからすぐに馴染みあえるさ、日葉さんは柑奈が支えてくれるさ」
「あの感じだと、安心だな」
織音は笑った後にトイレへ走って行った。




