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生命魔術と想い出  作者: 紗厘
第四章 ~始まりの夜花(はなび)~
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子どもは子ども

 最初に浴衣のレンタル屋に寄った。

 日葉はピンクの浴衣を、宵は水色の浴衣を、繊月は赤色の浴衣を、雪音は黒色の浴衣を、織音は紺色の浴衣を選び更衣室に向かった。


 選んだといっても全て冴月に決められたといった方が正しい。


 レンタル屋の主人が気を利かせ織音を先に着替えさせロビーで待たせる。


「冴月先生は浴衣着ないんですか?」


 冴月はカッターシャツに黒のスラックスという、いつも通りの格好だった。


「まぁね、私はこの格好が一番いんだよ」


 冴月の浴衣姿も織音は見てみたかったが、何を言っても着る事は無いと思い言う前に諦める。


「今日鷹中はどうしたんですか?」


 今のところ、冴月たちが来てからもずっと姿を見ていない。


「聞いてなかったのか?午後から用事があって終わり次第急いでこちらへ来るとの事だよ」


 冴月には連絡を入れていたらしい。


「そうですか」


「大丈夫さ、もしも花火が上がる方が先だったら車で迎えに行くからね」


 不安そうな顔をしていると冴月が励ます。

 確かに間に合うのかという不安もあるが、何かに巻き込まれていないだろうかという不安の方が大きかった。

 よりその不安を大きくさせないようにという冴月なりの気遣いなのかもしれない。


 そんな話をしていると、日葉たち四人が一緒に出てきた。


「……お兄ちゃん、どうでしょうか」


 初めての格好で恥ずかしいのか、目を合わせることなく聞く。


「良く似合っている」


 素直に褒めると曇り一つない嬉しそうな笑顔を見せる。


「ありがとうございます」


「雪君に浴衣姿を見せるのはこれで三回目くらいか」


 繊月が織音の方へ近づく。


「そうだな、昔は俺と日葉と繊月で祭りとか行ってたもんな」


「最近は全然行ってなかったもんね」


 繊月は欲しいコメントが来なくてずっと織音を見る。


「……どうしたんだ?」


「――あ、うん、知ってたけど。もういいわ」


 織音の反応を見て繊月は諦めた。

 織音は不思議そうな顔をしていた。


「雪、私には何かないのかな」


 雪音はこちらを見て色気を出している。


「……いいと思う」


 織音は素直に綺麗だと思い目をそらし答えた。


 目をそらした先には宵がいた。


「雰囲気が変わるものだな」


 いつも浴衣姿の宵だが、違う浴衣に身をまとっている。

 黒色から水色に変わり、子供っぽさが増している。

 子供っぽいと口にすれば宵に殺されるので、誰も言う事は無かった。


「ちなみにどんな風に変わったのか聞こうではないか」


 不気味な笑顔で、織音を見つめる。


「えっと……、より宵らしくなった」


「ほう……、それほど逃げられていないぞ」


 確実に遊ばれている。


「喧嘩が始まる前に、会場に向かうとしよう」


 冴月が仕切り役になっているが、仕切り役が普段通りの服装というのもどうなのか、と思いながら彼らはついて行った。


 行きは、繊月の車に乗り目的地に向かう。

 車の中では、日葉と宵が屋台で遊んだり食べたりと妄想を膨らませている。


「雪音は、何か食べたいものとかは無いのか」


 ずっと外を眺めている雪音に織音は声を掛けた。


「食べるよ。ただ宵ちゃん程食事が好きってわけじゃないからね。それと今回私が楽しみなのは花火だから」


 ブリガンテに空腹感と満腹感は無く食事は趣味のようなモノと先日聞いていたが、ここまで違いが出るものなど知り、本当に人間みたいだと織音は思った。


「――待て、雪音とやら。我を今『ちゃん』付けで呼んだか」


「ええ、可愛いからいいじゃない」


 雪音からは悪気は感じないが、宵は『ちゃん』付けを何か嫌っている。


「次言ったらお前を殺してやる」


 口が悪く物騒だが、頬をほんの少しだけ赤くさせていた。

 嬉しいのか、ただ恥ずかしいから嫌なのか、はっきりとは分からないが雪音は変える気はないだろう。


「喧嘩しないでよ、今されると事故るから」


 冴月はヒートアップしないように宵と雪音を止める。

 車の中は静かになった。


 八分程して花火大会の駐車場についた。

 ドアを開け降りると、賑やかな音が聞こえる、


「早く行こうではないか。食べるぞ、食べまくるぞ」


「食べる事以外、頭にないのか」


「無論だ」


 宵の今までで一番の笑顔を見た気がした。

 一番の笑顔を今見られるなんて特別よりも普通の生活が良いなと、織音に思わせた。


「よし、それじゃ行くか!」


 織音にも気合いが入る。

 皆も笑って屋台のある方へ歩いて行った。

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