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生命魔術と想い出  作者: 紗厘
第四章 ~始まりの夜花(はなび)~
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特訓はじめ

 織音と日葉はお風呂に入り一緒によるご飯を食べ、各自室へと向かった。

 日葉は布団へ潜り、織音は紅茶を飲みながらLoo awaの曲を聴く。

 話によれば、お互いが寝ている時にのみ、他人のブリガンテと夢の中で合う事が可能らしい。

 織音はLoo awaの静かな曲で眠気を誘っている。

 その方法はなかなか良く、カップに紅茶を残したまま眠っていた。


 真っ白な果ての無い空間に、織音と雪音は立っていた。


「まだ雪の妹さんは寝ていないみたいだよ」


 まだ日葉が寝るまでにはあるだろうと思い、ニュースでやっていた血液の魔術師の話をしておこうと思った。


「魔術師の可能性のあった血液のやつ、なんか新しい情報ってある?」


「新しい情報はゼロさ、強いて言うなら犠牲者が二人増えた事ぐらいだね」


 殺人魔にしても魔術師にしても、恐怖の対象に変わりはない。


「さて、もう寝たらしいぞ」


 物騒な話をしているうちに日葉も眠ったみたいだ。


「じゃあ、頼む」


「よし、目を瞑って」


 織音と雪音は手を繋ぎ目を瞑る。

 五秒ほど目を瞑っていると雪音の声がした。


「目を開けていいよ」


 雪音の合図に織音は目を開けた。

 景色は変わらず真っ白で果ては無い。

 目の前には日葉と宵がいた。

 織音が不満そうな顔をしていると雪音が気づく。


「どうした?かっこいい演出的なものが無くてガッカリしているのか?」


 織音にとって正直なところ図星だった。

 風が起きたり、何か音が鳴ったり、何かに囲まれたりすると思っていたが何も起こらなかった。


「……悪いかよ」


「別に」


 雪音は笑っていた。


「やっぱり馬鹿にしてるよな」


 織音が雪音の方を睨んでいると、宵が割り込んでくる。


「主の夢に急に入りたいというから許可してやったんじゃが、入って早々そちらで口喧嘩をするではないわ」


 宵はお怒りのようだった。

 その理由としては、他人の夢に入る時はブリガンテ同士での契約のようなものがあり、その許可が無ければ他人の夢には入れないらしい。

 宵が怒る理由もなんとなくわかる。


「それで、なんの用なんじゃ?主の(にぃ)が我に用があると聞いたのじゃが」


 宵は話が進まない事に不満を感じ、めんどくさそうな顔でこちらに聞いてくる。


「宵、こっちに来てくれないか?」


「なぜじゃ、面倒くさい」


「いいからさ」


 宵は何も疑うことなく、溜息を吐きながら織音に近づく。

 確実に蹴りが当たるところまで近づいた瞬間に宵の腰を狙い蹴る。


 宵はいとも簡単に織音の足を掴み、遠くに投げ飛ばす。


「主の(にぃ)は馬鹿なのか?」


 ――失礼な。


「否定はできないですね」


 ――日葉まで……。


 立ち上がり、意識をハッキリさせるために首を振る。


「宵は小さいのに力があるんだな」


 実際、織音よりも低く数字で言えば150㎝あるか無いかだ。

 宵は織音に近づき、腹パンを食らわせ頭に蹴りを入れた。


「馬鹿にするな!魔術師の戦闘方法の中にブリガンテを使う事もあるのじゃ。元を言えばブリガンテは戦闘のために存在していたと言っても過言ではないぞ。それにブリガンテは生まれる事は無くその場に存在するのみ。性格などの内面は成長しても見た目の成長など存在しない。その見た目を馬鹿にするではないわ!」


 織音は宵の地雷を踏んでしまったらしい。


「だからって、頭を蹴るなよ……流石に死にそう」


「安心せい、夢で死んでも現実ではしっかりと目を覚ます」


 ならば安心。……というわけでもなく痛いことに変わりはない。


「ちょうどいいじゃないか。雪、鋭い(やいば)を想像してみろ。それで宵を斬れ」


「雪音、何言ってんだ」


 いくら何でも無茶過ぎる。

 本気の蹴りを軽々止められた上に、蹴られた威力もかなりものだった。

 それに聞いた話ではブリガンテは夢の中で存在している。刃物なら下手をすれば死んでしまう。


「確かに、ブリガンテは夢の中で存在している。でも夢とは繰り返すものさ、死ぬことは無いんだ。ブリガンテに死は来ない、死の痛みはあるけどね」


「じゃから、構わん。来るがよい」


 ブリガンテには存在しない事を分かったとしても気が引ける。


「お兄ちゃん、魔術師には戦う時は必ず来ます。そのための特訓だと思ってください。……私もやられましたから」


 最後の言葉は急に小さくなっていた。相当辛かったのだろうかと予想する。


「それに人間がブリガンテに傷の一つも付けられぬよ」


 織音は分かりやすく、宵の挑発にすぐに乗ってしまった。

 夢でお互いに死ぬことは無いと知っているから余計に挑発に乗ってしまったのかもしれない。

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