赤色の色彩
薄暗い部屋で春望がのんびりと紅茶を飲んでいると、玄関に付いている鈴が鳴る。
「やっほー、もっぢッ――」
柑奈は入ってくるなり手を広げながら春望に飛びつこうとすと、地面のコードに引っかかり顔を机にぶつける。
柑奈はそのまま地面に倒れていた。
「もう、コードは整理しなさいって言ってるでしょ。こっち向きなさい」
春望は柑奈の隣に座りおでこに右手を当てる。
紅茶の入ったカップの中に左手を浸けて目を瞑る。
一秒ほど経った時、柑奈を点々とした光が包み、傷は回復した。
「ありがと、それとココア頂戴」
先程の事が無かったかのように元気にしている。
「分かったわ。少し待ってなさいね」
春望はカップをもって奥の部屋へと入っていった。
柑奈はパソコンの前に座り、すぐにゲームを起動させる。
キーボードやマウスの熟練されている動きでゲームの中のキャラクターを動かし銃で撃つ、いわゆるFPSだ。
「お前そこ邪魔なんだよ!――あ、死んだ」
溜息と舌打ちが聞こえる。
「柑奈、ココア注いだからこれで落ち着きなさい」
ココアを柑奈に渡すと、両手でコップを持ち一度ですべてを飲み干した。
柑奈は今やているゲームをやめ、他のゲームを起動させる。
騎士や盗賊、魔法使いなど様々な役職の中から一つ選び、オンラインで協力してクリアしていくよいう、いわゆるMMO RPGだ。
春望はココアが入っていたコップを洗いに奥の部屋に行こうとすると環奈は口で春望を止める。
「ねぇ、魔術と魔法って何が違うの?」
それは、ゲーム内で魔法使いという単語が目に入りそこから出てきた疑問だった。
「また唐突ね」
春望は少し考える。
「それは国や文化、世界によって変わるでしょうね」
「文化?世界?」
柑奈は目を瞑り考えてみる。
「そう、地球の中にも様々な国や文化はあるし、この世の中、今現在と時間や場所は同じでも全く違う歴史が作り上げられてる可能性はあるからね、その一つ一つで魔術と魔法の考えは違うかもしれないわね、もっと言ったら一人ひとりで変わるかもしれないし」
様々な可能性、魔術と魔法の違いでなぜここまで壮大な話になってしまうのか……春望の面白くいい点でもあり悪い点でもある。
「ムズカシイ……それで、もっちーはどう考えてるの?」
環奈はよく理解できず、春望自身の考えを聞く。
「そうね、魔法は代償を必要とせず奇跡を起こすもの。魔術は代償を必要として奇跡を起こすもの。かしらね」
あくまでも春望の考えでしかなく、他にも様々な考えがあるだろう。
「そっか、だったら魔法っていいね」
代償なしで奇跡が起こせるなんて夢みたいなものだ。
「そうでもないわよ、なにも代償としなければその有難味も分からない、何も感じない人間になると思うからね」
やっぱり、春望の話は難しいと柑奈は思い頭を抱えるが、すぐにゲームへ戻る。
春望はいつもの柑奈を見て笑顔になり、ココアがあとほんの少しだけ残ったコップを洗いに行った。
玄関に付いている鈴がなり、春持ちと入れ替わるように見慣れない顔が入ってくる。
「あらあら、可愛らしいお嬢さんがいる。あなたはどんな色?」
環奈はちょうどゲームで死んでしまい舌打ちをしながら声のする方を向くと、赤色のベルトに紫と青のボーダーシャツを羽織っている男が立っていた。
「色?何言ってんの?あとここは店じゃないんだよ。路地裏にあった喫茶店の廃墟ってだけ、ここは私たちのテリトリーだから早く帰って」
柑奈はこの廃墟の喫茶店をたまり場としようとしている奴が入ってきたと思い追い払おうとする。
「いえいえ、そんな奪うなど致しません。ただあなたの色を見せていただきたい」
その目は凶器に満ちていた。その男の息はだんだんと上がっている。
「キモイんだけど、早くどっかいってよ」
柑奈は虫を払うように手を振った。
「そのような事をされては泣いてしまいそうです。ですので泣く前に見せていただきますね」
その男は懐から包丁を取り出す。
「は?やる気なんだ。じゃあこっちも殺す気で行くから」
柑奈はパソコンの前の椅子から立ち上がり『ロック』と口にする。その瞬間、彼女の手元に水色のカマのようなものが生成された。
「これを見たからには生きて返す気ないから」
柑奈はその男に余裕の表情を見せていた。




