真実の入り口
織音と日葉がキッチンで食器を洗う。
「言い過ぎたかな」
織音が食器を洗っている時、ボソッと言葉がこぼれる。
ハンバーグの感想で織音は『ソースの味しかしない』といった。
不味いわけでは無いので大丈夫と思ったが宵は気づいたら消えてしまっていた。
それも織音だけではなく雪音と日葉まで頷いてしまったからだろう。
「料理が上手くなりたいと思う人には良いかもしれませんが、そうでないなら少しきつかったかもしれませんね」
日葉も反省をしていた。すると、日葉にだけ聞こえるように宵が強く言った。
『我だって上手になりたいわ!』
またふててしまった。
「お兄ちゃん、宵は上手になりたいみたいです。またふててしまいました」
日葉はしょんぼりとしてしまった。
「宵はまだ子どもって事だな」
笑いながら織音が宵をからかう。すると突然日葉が兄である織音を蹴った。
その威力は見た目にそぐわない強さだった。
「日葉……、なにすんだよ」
織音は蹴られた腰を撫でる。
「ごめんなさい。でも宵に『蹴れ』と言われて……」
「日葉も実際にしなくていいから。それと宵、次出てきたとき覚えとけよ」
織音は溜息を吐きながら、食器洗いを再開した。
皿洗いを終えて、自室に戻りすぐ雪音と話をする。
「雪音、思ったんだが魔術師ってどうやって戦うんだ?」
雪音は姿を現すことなく声だけで返答する。
「それは魔術師によって異なるものさ、一人は武術。一人は魔術などを使いこなし、一人は永遠と隠れ続ける」
様々な戦い方もあり、隠れる事も戦略の一つというわけだ。
先程の日葉の蹴りが強かったことも、この戦いに関係しているのだろうか。
「いろいろあるんだな。……考えないと駄目だよな」
「そうだね」
「……」
そこで会話が途切れる。
話すことはまだある。否、話すべきことがある。
数秒の無音の間が空き、織音が本題に入る。
「鷹中の事だが……」
「決まったのか?」
織音は頷き、どうするのかをハッキリと言う。
「催眠術を使って鷹中の本音を聞き出す」
「そっか、分かった。――じゃあ今から呼び出せ」
「まさか今皮する気か」
最初は冗談だと思った。
「もちろんだ、早いに越したことはないだろう。ここには携帯というものがるだろう?それで呼び出せばいい」
雪音は本気だった。
心構えが出来ているわけでは無いが、致し方なく鷹中を呼び出すことにした。
スマホを取り出し鷹中に電話を掛けると「今すぐ向かう」との事だった。
「まだ来ないのか」
一分が経った時、雪音が口うるさくなる。
「仕方ないよ、今人ごみにいるって言っていたからもう少し掛かるんじゃないかな」
テレポートだと五秒も掛からないうちに来るのだから、一分さえ遅く感じてしまう。
「まだ来ないのか」
「うるさい」
「……すまない」
実際には雪音も不安はあった。
もともとしつこく行ってくる性格ではないはずなのに、十秒間隔で聞いてくるのだから織音もなんとなく察していた。
「そんなに不安か?」
「どうしてそう思った」
「いつもと何か違うから」
「まだ一日ほどしか経ってないのに何がいつも通りだ」
雪音の言った通り、顔を合わせてから一日ほどしか経っていない。
「それだけ濃い時間だったって事だよ」
織音は、思い付きで言葉にするが、急に恥ずかしくなり黙り込む。
「何が濃い時間だ?」
織音の後ろから急に声がして驚く。
声の方を向くとそこには鷹中がドアにもだれかかっていた。
「独り言を勝手に聞くなよ」
「理不尽だな……まぁごめん、それで何の用?」
謝るのは鷹中を呼び出した織音自身だと彼は感じる。
「少し話したいことがあるだけだよ。そこに座っていいよ」
ベッドの用を指差す。
「じゃあお構いなく」
鷹中は警戒することなく織音のベッドに腰を掛けた。




