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六年前の回想 帰路での休憩の意味


 塔を飛び出して五時間後、一行は最初の休憩を入れた。


 ジロは皮鎧の覆っていない箇所の皮膚は破けて赤くただれ、腫れ上がっている。


 走りながらも自分で応急処置の《治癒》をかけたが《疾風光》の方に割くリソースの方が重要であったのと、元々ジロは信仰魔法が得意でなかったので、いかにもとりあえずといった《治癒》となっていた。

 

 リーベルトは食事や水分の補給を済ませると魔力回復の助けになる薬草を食べた後、すぐに横になり眠りについた。


 後続との壁に対し、三時間以上のマージンを稼ぐ事ができている。


 休憩中、後方以外から寄ってくる群れの退治は、ジロの役目だ。


「エリカ、お前も休め」

「まだ大丈夫」


 そう言って《治癒》を続けた。ジロは止めさせようと思ったが、エリカの魔力は思った以上に温存できているので、そのままにさせる事にした。


「俺も、リーベルトも、エリカも限界までの魔力酷使が必要になる」

「――うん。分かってるもん、前みたいにエリカの魔力を無駄にしないよ」

 エリカが言った。


 ジロが表情をエリカのうかがうと、そこに真剣さだけが有り、今まであったような幼い甘さは見られないように思えた。

 エナジードレインによるジロの体の芯に残るような疲れは《治癒》ではあまり効果が出なかった。

 《治癒》の技量が上がれば生命力回復の効果も現れるのだが、エリカはまだその領域には達する事ができないでいた。だが、普通傷口をみるみるうちに塞ぐというレベルですら、信仰系魔法のエキスパートである高位神官の領域であり、エリカの今の技量はすでにジロたちにとっては、希望溢れる想定外であると言えた。


 エナジードレインからの回復、こればかりは食事と休息以外に回復の手立てはなかった。


「じゃぁ、ジロ、休むね。ジロも休んでね?」

「おう、お前らと違って俺は魔力の総量は少ない。だから逆に無理が利く。心配しすぎるな」

 ジロにうなずくと、エリカも横になった。


 ジロは座りながら、ジッと揺らぎを待った。


 前方で揺らぎがあり、ジロはカートボルグをエリカの体を覆い隠すように置いて、レイピアを持って駆けだす。


 先にはファントム三体とリビングデッドが四体いた。


 帰路で変わったのは、死霊達の攻撃法であった。

 共倒れを狙うような攻撃をどの個体も仕掛けてくる。


 ファントムよりも弱い存在ではあるが、肉体を持つリビングデッドを優先して行動不能にする。


 《強度強化》を施したレイピアは細剣とは思えないほどの切れ味でリビングデッドを無力化する。


 その後のファントムとの戦いに手こずった。


 斬っても斬ってもファントムはカートボルグやブートガングといったアーティファクトと違って消滅しなかった。

 一体に対し三十回ほども斬ると、ようやく除霊できた。


 精霊魔法を避け、時には身に受けながら、残りの二体も片づける。


 エナジードレインは受けなかったが、多少のファイアボールを皮鎧に受けた事による火傷を受けた。


 キャンプ地に戻り、二人に問題が無い事を確認して、ジロはホッとしながら揺らぎの感知能力に感謝しながら、傷の治療をした。


 必死の《疾風光》によって稼ぎ出した休憩の三時間。


 その休憩中に、さらに四度の襲撃があった。



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