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余所事の話 騙す決意


「テンチョーの事は最初はどうでもよかったんだ。今は実験が気になるけどな! あの時はあいつが持ってた剣がど~~しても気になったんだけど、死にかけてたから一時的に眷属にしておいて、それを聞いたら、解放すればいいかって思ってた」


「どんな剣?」


「アタシの部屋に置いてある奴なんだけど……今は玉座の間の天井が落ちちゃってて、部屋に入れないから実物はない」


「サラだけじゃないわよ。私やセラの部屋だって、玉座の間が瓦礫で埋まってるから、もう長い間入れてないんだからね!」


「うっさいなぁ、その事はいっぱい謝ったでしょ!? ……テンチョーに聞いたら、その剣は借り物らしい。……一人いたろ? 人間のくせにアタシの喉元に完璧なタイミングで攻撃を当てた奴」

 それを聞き、セラとゼラは同時に掃除をやめる。


「剣さえ良質の物だったら、サラさんが殺されてたかもしれないって言ってらした……。生け捕りしようと試みたけれど、逃げられた人間でしたね……へぇ、その剣ですか」


「そう。テンチョーが使ってた、おもちゃみたいな剣からは、あいつの色が見えた」


「そいつには私も興味あったのよね。サラがずっとベタ褒めしてた奴でしょ?」


 戦う者が変わるだけの変化の乏しい魔王城の日常であるので、サラの褒める人間の話にはセラもゼラも興味をひかれる。



「ああ、あいつも弱っちい人間だったけど、戦いのセンスは飛び抜けていたな。魔王城の秘者達でもあれ程戦闘センスがあるのはいない。それをテンチョーは知っていた。あいつを捜しにつまらない人間界に行く気は全然ないけど、テンチョーがあいつを連れて来れるのなら、そこには興味はある」


「そういう理由で、テンチョーに興味を持ったんですねぇ。それでそのテンチョーとやらは、その剣の持ち主を呼んで来たら殺してしまうのですか?」


「いやぁ、それが、テンチョーはテンチョーで面白い奴なんだ? 魔界にいるくせに格上の強さの判定ができないんだぜ? よく生き残れてきたよなぁ……。

「全員同じように見えるらしいんだ。テンチョーよりも弱いのには弱いってわかるらしいんだけどな。だからアタシの事も、魔王だって名乗ってやったのに、


「はいはい、っで? 本当のところは?」 


「みたいな感じで、半信半疑って感じだ。おもしろかったから、よくよく聞いてみたら、アタシの事を、秘者で魔法は凄いけど、人間並みに弱い奴って捉えてて……昔はよく身の程知らずの秘者の中にもそんな奴はいたけど、人間並みに扱われた事なんてない。そんな事を思ってたらアタシの事なんて、無視するだろうしな!」


「昔って……最近も一人いたじゃないの、さっき言った火鬼の……あんたって本当に弱すぎて忘れたのね……」


 ゼラの言葉にサラは首をかしげる。


「最初は、思い知らせてやろうって思ってたんだけど、途中からおもしろくなってさぁ。アタシが秘者になってから秘者ならともかくそれ以下の存在に、一度もそんな目で見られた事がないから新鮮だった! だから、剣の持ち主の情報を持って帰ってきたら、無礼を許してやって、しかも『秘者化に耐えられない弱い奴でも徐々に秘者化』っていう大、大、大魔法の実験台にしてやろうって思ってるんだ!」


「それは……感受性が大変に鈍いですね。普通は魔力がない人間でもサラの湧き出る魔力を感じ取れば、恐怖を持つのに……。生存本能の欠落? いずれにしろ、生物として欠陥がありそうですね。私もちょっと調べてみたいですわ」

 セラが口の端に笑みを浮かべる。


「その内そいつをここに連れてくるけど、その時はシラをきってくれよな? アタシはめっぽう弱い秘者って事にしておこう」


「そうなると私達は、弱いあなたにどうして仕えてる事にするのです? 私達は弱い振りなんてする気はありませんよ?」


「そうだなぁ……、見た目的には上だし、アタシの保護者ってのはどうだ?」


「まぁ、いいんじゃないの? 演技はおもしろそうだし、それに実質、サラの保護者だし?」

 ゼラがそう言うと、セラもうなずいた。


「あ! それならあれはどう? 確かハーゼンが昔作った指輪で、魔力を隠すっていう利用価値のまったくない指輪を作ってたのを何個か作ってるのを思い出した! そんな無意味な指輪を誰かが持っていったとは思えない。今もあいつの所に置いてあるんじゃない?」


「お! なら丁度いいや! テンチョーがあの剣の持ち主を連れてこれるかもっていう条件の中に、折れたあいつの武器の修復法を見つけてやるってのがある。ハーゼンの所に相談に行こうって思ってた所だったんだ!」


「まぁ……たかが人間が魔王に条件を出すだなんて……ますます会ってみたいですわね」

「確かに、おもしろい奴ね。私もそこまで馬鹿だと逆に興味あるわ」

セラとゼラの二人は、日常とは違う予定が、サラによって運び込まれた事を喜んだ。


「そのテンチョーの奴が、剣の持ち主を呼んでくるって約束した時に、テンチョーが出した条件が、いっぱいあってなぁ。一つはテンチョーを、アタシと同程度に強くする事」


 セラはクスクスと笑った。

「それは、サラさん。ずいぶんな難題ですわ」


「うん! 絶対無理だろう。でも騙す! あとは、えっと、テンチョーの作った小屋を守る事を破壊から守ること。それと折っちゃった剣を直すか、代わりの魔石を捜す事」


「ハイハイ! それは私が担当する!」

 ピョンピョンと跳ねながら、ゼラが挙手する。


「最後に秘者の知り合いを紹介する事……うん、確かこれだけだ」

 サラが指を使って数えながら、うんうんとうなずく。


「サラさん。もしかして……テンチョーは店長で、ニゴーテンというのは二号店じゃないのかしら?」

「ニゴウテン?」

「二番目のお店って事」

セラが教える。


「お~~~、そうだったのか! 知らなかった。二番目のお店って事だったのか!……二番目のお店ってどういう事?」


「サラさんは子供の頃に秘者になったのですから、知らなくても当然でしたね……。魔界に物を売るお店なんてハーゼンのしかありませんし……。魔界のお店は、みんなその人そのものがお店っていう形態だけですし、どう説明すれば……。それについては後日サラさんが分かり易そうな例を探しておきます」


「そんなどうでもいい事よりも、サラ。とりあえずそいつ……テンチョーでいいか。そのテンチョーの黒動結晶は破壊されていないって事?」


「うん。多分。でも、テンチョーって、なんて名前だったかなぁ……。どこに置いたのかも覚えてないし、部屋かなぁ? 外で落としたかなぁ?」


「いいじゃないですか、サラさん。テンチョーさんが来たら結晶は破壊されていないでどこかにある事がわかりますし、来なかったら、破壊されて、秘者もどきなら完全に滅んでいる事でしょうっていうだけの事」


「まぁ、そうだな。うん! 剣の持ち主の事も知れないのは残念だけど、強者はまだまだいる! それがいなくなったら、そいつを捜そう!」


「その頃には人間の寿命が尽きちゃってそう~」


「テンチョー! 生きてるのをアタシは信じてるぞ!! 絶対に連れてくるんだぞ!!」


 サラは柱の上に立ち上がり、二号店のある南へ向かって、叫んだ。



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