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暗殺者八人、監視者四人


(しかし……こんな慎重な暗殺者は今までいなかったな……近衛の雇われ暗殺業者とは、何か違うな)


 「まあ、いいか。それは後でじっくりと聞くとしようか」


 魔界行前のジロに対する布陣であれば、それら十二人の包囲は充分すぎるほどの分厚い陣容だった。


 暗殺者だけではなく、実行役よりも格上の魔法に長けているような暗殺者を複数人を後方に配置するほどの力の入れようである事を思えば、近衛隊との確執によって生まれた今までの殺し合いとは違うことを感じされられる。


 今も昔も殺す事には代わりが無いのだが、今尾行者たちを殺そうとするジロの心は前とは違っているように感じた。


 魔界で死に、生き返った事によって、心が壊れているという事実を、ジロは再発見する。


(壊れているってだけならいいんだけどなぁ)


 そんな緊迫感のない事を思いながら、目を閉じたまま、暗殺者達の初動を待つ。


 頭上から仕掛けてきた落ちてきた人影を、斬り払うと、学院以来使っていたいた愛剣が根本付近で折れてしまった。


 ジロの剣を叩き斬った襲撃者は、重さを感じさせない動きでジロの肩を蹴って地面に降りる。蹴りざまに剣をふるってきたが、ジロは体を動かすだけで、避け、襲撃者ごと、払い落とした。


「馬鹿みたいに切れ味が良い剣だな。……お前は惜しいって思っただろう? でも全然だ。今、俺が剣を折られた後の攻撃を避けたのは、運良くって事じゃないんだ」


 ジロは喋りだしたタイミングで同時に四方から飛んできた数本のナイフを最小限の動きで避け、その内の一本をつかみ取り、ナイフと連動して、共に闇に紛れようとしていた切れ味鋭い黒剣を持っていた頭上からの暗殺者に投げる。


 暗殺者は常識外れのジロの投擲に辛うじて反応を示すが回避によって態勢を崩した。


 岩を蹴って、迫るという常識はずれの挙動に反応できなかった黒剣持ちは、ジロの折れた剣を暗殺者に、拳で殴りつけるような攻撃を避けられなかった。


 黒剣持ちは、厚手のローブの下にも薄手のチェインメイルを着ていたようで、折れた剣は暗殺者の行動力を奪うまでにはいたらなかった。


 苦鳴もあげず、暗殺者が距離をあける。

 ジロの左右の闇から二人ずつ、計四人の暗殺者も姿を見せる。


 それぞれがジロが数を正確に認知できた魔石をどこかに宿す様々な形状の黒い武器を持っている。


 今のジロからすれば、魔石をあしらった武器を持っているだけで、その動きを追うことは容易い。


 ()()()()()()、魔石が発する魔力を()()()()()


 そして魔法も使っていないようにしか見えていない襲撃者達は、ジロの行動を捕捉できていない。


 手練であればあるほどに、戦闘は魔法反応の初動を見るが、ジロは現在人界で存在がまだ観測されていない、時の精霊を使用した魔法を使っているために、その初動を見破られる可能性は皆無と言ってよかった。、


 ジロにとっては、相手が闇に紛れようが、たとえ目つぶしや視界を奪う魔法を使ってこようと目にする以上に動きが見え、相手にとっては闇の中で戦っているようなものであった。



 あえて確認の為周りを見渡すと、ジロの認識から寸分の狂いもない位置にそれぞれの襲撃者が立っていた。


(今はまだいいが、この感覚は相手に利用されかねないな)


 ジロはそう思って魔界で新たに得てしまった、この感覚に頼りすぎないように気を引き締めた。


 暗殺者は、初動を凌いだジロの動きに驚いているようだが、ジロも一族亡命事件釈放後から、断続的に相手にしてきた暗殺者とは明らかにレベルが違うという思いを新たにした。


(専業騎士も含めてこれほど動きが鋭い人間はそうそういない。ジロは改めて首を傾げる。このレベルの暗殺者を近衛の何者かが雇った?)


「ガルニエ……剣は、『魔法剣』はどうした?」

 しわがれた、男のようにも女のようにも聞こえる声だった。


 それでジロの疑問は氷解した。


 勇者として大陸中にその名を轟かせる、ジロの師匠所有の『魔法剣』 そして噂話の域を出ない戦闘構成員全員がAF(アーティファクト)クラスとはいわないが、大なり小なり魔石の武具を持つという魔法帝国を本拠地としている伝説の暗殺集団を聞いた事がある。



 そう言う事で狙われる事もあるのかと、ジロは呪われたAF(アーティファクト)を多数所有する未熟な経営者として目の覚める思いをした。


(この連中は近衛からの依頼もあったので調べるうちに俺が魔法剣を持ち出したという情報に行き当たったのかも知れないな……師匠から奪い取るよりは俺から取った方が圧倒的に楽だからな)


 そう思うと俄然、自分を襲ってきた暗殺者達に興味がわいた。殺すのは惜しいっと。


(師匠やカルラさんが情報を流したとは……いや、カルラさんが情報を流したのかも知れないとジロは思い直す)


「学院以来からの愛剣も叩き折られたし、答える義理もないな」


「小屋にもなかったのだが……」

 あの結界を破ったのかと、ジロは呆れた。




「という事は、お前の幼なじみのどちらかが――」




 ――即座にジロは結界を張りつつ、知覚できる範囲内に魔石の反応を探る。

 見逃すと決めた下っ端の見張りも捕捉する。


 その下っ端よりも遠く、10㎞四方に魔石の気配はない。


 次に結界を張るための高速詠唱に入る。

 人界で知られる火・水・風・木・土・五大精霊ではない。

 魔界でサラから習い、ジロが命名した裏の五大精霊を使用した。


その裏の五大精霊内、時の精霊の使用を止め、暗殺者達が無自覚・無意識のまま好んで纏う、より活性化している邪の精霊を用いた結界にした。


 一秒とたたず、狙い違わず事後処理係の後方を含めた1kmの広範囲に《空間遮断(ジャンクション)》を張り終える。


 これで邪の精霊以外は、表・裏合わせて九つの精霊はすべて結界を抜けられないし、確認もできない。


 結界を確認できたとしても、せいぜいが100mが限界の人間の常識範囲内の規模ではなかったので、ジロの張った結界を結界と認識するのには時間がかかるだろうと、ジロは計算した。


 物理的にもこの空間に何者も出入りすることができない。

 邪の精霊のみであるため、結界内の空気の移動すらも排除するため、この閉鎖空間内の酸素がなくなる前にカタをつける必要が生じる。


 だが、今のジロが余程大規模な火の魔法でも用いない限り、酸欠することはなかったのだが、怒りに我を忘れているジロはそんな事にも気づかない。



正面以外の暗殺者達が一斉に不安そうに素早く周囲を見渡す。

 一流の暗殺者である事を証明したようなものだった。


 邪の精霊を用いた念話でない限り一切の情報は外へ漏れない。


「風や、周囲の音が無くなったとでも感じているのだろう? 観測はできないが、何かが起こったと気づいたんだろう? お前達は本当に優秀だ」


(俺も魔界で遊び半分の秘者が俺を遊び相手に選んだ時、そう感じた。俺も優秀だったんだな)


「気が変わった。お前達を殺し、まずは、無駄骨だろうがお前達の持ち物を探った後に衛兵を連れてここへ戻って『あれ? 死体がない……確かにここで暗殺者風の男達を斬り殺したんだが……』ってな感じで、お前達の後方に控えている事後処理係に気づかなかったフリをして、取り調べを受けるつもりだったんだが……」


 ジロはのんびりと予定にしていた計画を暴露した。


「お前らは挑発の仕方を間違えた。情報はその後方四人に求めるから――」


「――お前達五人と今だに木の後ろで隙をうかがってナイフを投げようとしている三人は、さっさと死んでくれ」



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