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怠惰な俺とクズな彼女

 

三ケ嶋先輩は学習机といすを教室の隅にどけて、どこからか持ってきた長机とパイプ椅子3脚を教室の真ん中に置き、一番奥の椅子に腰かける。それに続いて滝沢も手前の席に腰かけた。 

これは座らないとダメなやつだ。早く帰りたいのにな~ めんどくさいな~ と思いながらも三ケ嶋先輩は怖いので素直に椅子に座る俺なのであった。 


俺が座ったところで三ケ嶋先輩は口を開く。


「ねえ、赤崎くん。女の子の胸はぺったんこのほうが好き?それとも大きい方が好き?」


い、いきなり なんてことを聞いてくるんだこの先輩は! しかも目の前に女子がいるんだぞ?  全く! 信じられないわ!


「先輩それはどういう?」 


「普通の意味で女子の胸は大きい方が好きか、滝沢さんみたいにぺったんこが好きかって話。」


それのどこが普通なんだ! と、つっこみたくなる俺だった。


三ケ嶋先輩のいきなりの変態発言を聞いて滝沢が顔を赤くしながら反論する。


「わ、わたしの胸のどこがぺったんこなんですかーー!」


たしかに滝沢の胸は、巨乳とまではいかないがこの年代の女の子のサイズとしては普通だと思う。


それを聞いて三ケ嶋先輩は真面目な声で 


「だって滝沢さんパットじゃん。」と容赦なく言ったのであった。


マジか… 滝沢ってパットだったんだ。 俺は滝沢の胸をちらっと見る。滝沢に、にらまれた。


「赤崎くん。もし誰かに言ったら殺しますよ。」 滝沢が低い声でボソッとつぶやいた。 


「はいはい、言いませんよ。」 俺ぐらいの年代の男子はとても好みそうな話だが、ハッキリ言って俺はそういうことあんまり興味ないんだよな~ かわいい女の子にドキッとしたりはするが、ドキッとするのは一瞬だけでその後は別にどうでもよくなるというか。 えろいこととか、どうでもいいというか。 なんか俺、さめてるっていうか…


「僕はもちろんおっきい方が好きだな~」 三ケ嶋先輩は滝沢のほうを見ながら言う。 滝沢が先輩を睨む。 先輩はそれを無視して君はどうなの?と、俺にしつこくと聞いてくる。 ホント、しつこいなこの先輩、そんなに大事なことかよ… いい加減疲れてくる。


「俺は大きすぎでもなく、小さすぎでもない。平均ぐらいが好きですよ。」


「そうか、そうか」 三ケ嶋先輩はまた滝沢のほうを見ながら言う。 


「では次の質問…… 」 


俺はその後1時間ほど三ケ嶋先輩のエロ話につき合わされクタクタだった。


今日の会話で俺の中では 三ケ嶋先輩=変態 と決まったのであった。 


三ケ嶋先輩から解放されたのが午後3時で、昼飯もまだだった俺は、駅とは反対方向にあるショッピングモールまで行きラーメンを食べた。 


そんなことをしていたら電車は一本逃すし、電車に乗ったら切符はどこかに消えちゃうしで、結局家に着いたのは6時過ぎだった。


靴下と制服を洗濯機に投げ捨てソファーに飛び込む。

テレビをつけ、てきとうなチャンネルでとめる。テレビからは芸人の笑い声が聞こえてきた。


今日は疲れたな。 中学の時にあんなことがあって、高校に入学式してからこの二か月間学校に行かず、家に引きこもり誰とも関わらなくて済むようにしていたのに… 


ここから俺の青春が始まるのだろうか? 勉強、部活、友人、恋愛、それらのすべてに全く興味なかった俺は滝沢と出会ってこれから変わっていけるのだろうか? 怠惰な生活に戻りたいなんて言っていても、ホントは期待しているのだ。自分を変えてくれることを。


人と関わることは怖い。誰かに期待するのが怖い。俺は臆病なのだ。昔は自分が傷つきたくなくて、だから人を避け続けてきた。


でも、それは過去の話で今は違う。 





傷つくことさえ面倒で、何も感じなくなった俺はもう変わることなど不可能だろう。





なら、もう終わりにしよう。誰かに期待することは… これが俺が変われる最後のチャンスだ。滝沢と関わって俺が変わることができなかったら… その時は… 俺はどうすればいいのだろうか?


明日のこともわからないのに未来のことを考えて不安になるやつは愚者だ。愚者になりたくない俺はテレビの電源を切った。頭の中では芸人の笑い声がまだ聞こえている。 


やがてそれも聞こえなくなり、そして静寂に包まれゆく部屋で一人、目をつぶった。



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