表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
89/462

  第80話 『 ギルドVS〝葵〟~オーバーロック~ 』



 「 タツタさん! お怪我はありませんか! 」


 ……わたしは氷壁越しに叫んだ。


 「ギルドか? 俺は無事だけど、そっちは一人か?」


 ……良かった。怪我は無いようだ。


 「わたしとフゥちゃんだけです」


 しばらくして、カノンくんやフレイちゃんやドロシーさんからも返事が返ってくる。


 「……では、全員無事のようですね」


 仲間の安否を確認でき、わたしはほっと胸を撫で下ろす。


 ――コツッ


 ……足音が聴こえた。


 「……」


 咄嗟に息を殺してしまう。


 ――来る!


 そう、近づいていた。

 足音が、気配が、そして――張り裂けそうなほどに鋭い威圧感が……。


 「 初めまして、お嬢さん 」


 ……遂に姿を見せたのは白いスーツを着こなす長身の美男子であった。


 「僕の名前は〝葵〟。〝四泉〟の一人だよ」

 「……〝四泉〟?」

 「そう」


 ――〝葵〟の姿が消えた。


 「ノスタル大陸最強の水魔法使いの一人だ」


 ――と、思ったら目の前にいた。


 ……来る!?


 わたしは咄嗟に〝太陽の杖〟を構えた。


 ……ぽんっ、目の前に一輪の白薔薇が差し出された。


 「……ば……ら?」

 「プレゼントするよ、可憐なる魔導師さん」


 〝葵〟が気障な笑みを浮かべた。その笑みから殺意や敵意は感じなかった。


 「僕は女性を傷つけるような真似はしたくはない。だから、どうかここは引き下がってくれないかな」


 ……この人は何を言っているのだろうか。


 「帰り道なら案内するし、僕の仲間にも手は出させないよ」


 ……もしかして情けを掛けられている?


 「だが、もし君が主に歯向かうと言うのであれば、僕は君を止めなければならない」


 ――そう、と〝葵〟が一言挟んで冷たい笑みを浮かべた。


 「 殺してでも、ね 」


 ――その瞬間、プレッシャーが跳ね上がった。


 「……」


 ……なるほど、確かに言うだけはあるようだ。

 そして、彼の言葉に嘘偽りが無いことも確信は無くとも信頼はできた。


 「……」

 「どうする?」


 沈黙するわたしに〝葵〟が静かに催促する。


 「 ごめんなさい 」


 ――ボンッ、白薔薇が爆発した。


 「その薔薇を受け取ることはできない」


 燃えた花弁が散り、氷の地面に落ちる。


 「わたしはギルド=ペトロギヌス。空上龍太の最初の仲間であり一番の仲間だよ」


 ……だから、裏切れない。


 「 あなたを殺してでも先へ進む……! 」


 ……それが結論であった。


 「……」

 「……」


 わたしと〝葵〟は無言で睨み合った。


 「 それは残念 」


 ――〝葵〟の姿が消える。


 「 だよ 」


 ――声は後ろから聴こえた。


 「 これで二度目 」


 ――しかし、わたしは振り向かずして光の剣で背後に立つ〝葵〟を切り裂いた。


 「あなたの技を見切るには充分な時間だったよ」


 ――決まった……などとは思わない。何故ならわたしが切り裂いた〝葵〟は水分身ですぐに崩れ落ちたからだ。


 「お見事、と言わせてもらうよ」


 ……本物の〝葵〟はわたしの目の前に立っていた。


 「正直、僕は君を侮っていたね」


 当然のことながら〝葵〟は無傷であった。


 「これからは失礼の無いように全力で狩らせてもらうよ」


 〝葵〟の周りに水が逆巻く。


 「狩る? ご冗談を 」


    キャ    ノン    ボール


 ――わたしは巨大な炎弾を幾つも召喚する。


 「 狩人はわたし、獲物はあなた 」


 ――炎弾が一挙に〝葵〟に撃ち出された。


 「いいね、殺る気満々だ」


    ウォーター    ウォール


 ――しかし、水の壁によって炎弾は相殺されてしまう。

 蒸発した水蒸気が吹き荒れる。

 ……やはり、相性の差はでかい。

 彼の魔術は水魔法、わたしの魔術は火炎魔法――相性では向こうに歩があった。


 「水は火を打ち消す――常識だよ」


 な ら 。


 「 光だったら? 」



 切 り 裂 く 閃 光



 ――わたしは〝葵〟目掛けて、光の斬撃を撃ち出した。


 「 残念 」


     水     壁


 「 だったら屈折させるだけだよ 」


 「 !? 」


 ――〝水壁〟と衝突した〝切り裂く閃光〟が軌道を変えた。


 「最後のチャンスだ」


 〝葵〟の周囲に巨大な水の蛇が渦巻く。


 「君の攻撃は僕に通用しない、大人しく投降するんだね」

 「……」


 ……火は水に打ち消され、光は水に曲げられる。相性、最悪だった。


 「聞こえなかったかい?」


 〝真白〟相手ならば辛うじて属性差を覆せたが今回はそうはいかない。〝四泉〟の〝葵〟、属性差を覆すにはあまりにも強すぎた。


 「諦めろと言ったんだけど」

 「……………………よ」


 だからって逃げ出す訳にはいかない。


 「 イ・ヤ 」


 「 死刑執行だ 」



    シー    ドラ    ゴン



 ――水の大蛇がわたしに襲い掛かった。


 「……属性差は確かにでかいね」


 ……それは認めよう。


 「でも、それはわたしにだけ言える話じゃないよね」



 〝特異能力スキル〟――解放オーバーロック



 「 出番だよ、フゥちゃん 」


 〝大海蛇〟が襲い掛かる。


 わたしは逃げも隠れもしない。


 フゥちゃんがわたしに飛びつく。




     ジ・     シャーマン









 ――そして、水飛沫が弾け飛んだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ